個人や企業が最適の「ECサイトを構築」するための必要な5つの視点


ECサイトを新規に立ち上げたり、ECシステムの乗り換えをする際に、システムの選択肢が複数にあるため、どの手法でECサイトを構築して良いのか、詳しい方でなければよくわからない方も多く、そうなるとECシステム会社の営業担当者の雰囲気や費用感だけでECの業者を選ぶことになってしまいます。

そうならないためにも、自社でECサイトを構築する場合は、まずは下記の5つの手法で構築できることを覚えておくことをおすすめします。

手法①ASP-EC
手法②オープンソース
手法③パッケージ
手法④クラウドEC※
手法⑤フルスクラッチ

※ASP-ECもクラウド環境ですが、この記事ではカスタマイズ可能なクラウドECを「クラウドEC」と呼びます。

そしてこの5つの手法から、自社に最適なECシステムを選ぶためには、下記の5つの視点からECシステムの検討するのが良いでしょう。

視点①予算で決める
視点②セキュリティで決める
視点③目的で決める
視点④将来の事業戦略を踏まえて決める
視点⑤PDCAの早さで決める

なぜなら、この5つの視点は個人が運営する小規模ECサイトから企業の大規模ECサイトまで、ほぼ全てのEC事業者に当てはまる視点となるため、どんな方にとっても自社に相応しいECシステムを選ぶ助けとなるからです。

それぞれの視点にあった最適なECシステム(ASP-ECからフルスクラッチまで)を、本日はebisumartでマーケティングを担当している筆者が具体的に解説いたします。

目次

視点①予算で決める
視点②セキュリティで決める
視点③目的で決める
視点③-1新規事業(サービス)向けのECサイトは「ASP-EC」が最適
視点③-2BtoBの場合、特化したECシステムを利用できれば費用が安く済む
視点③-3楽天市場などのショッピングモール運営から「自社ECサイト」を構築
視点④将来の事業戦略を踏まえて決める
視点⑤PDCAの早さで決める

視点①予算で決める

とにかく手軽にECを始めたいは中小企業や個人事業主は「ASP-EC」

企業には決められた予算があり、予算の範囲内で目的の最大化を行う必要があります。ECシステムの選定についてもそれは同様です。

まず、予算に限りのある中小企業や小規模ECサイトの構築であれば、ASP-ECの一択といえます。なぜなら、現在のASP-ECは、ECのフロント機能(ECサイトの画面や見た目)で、大規模サイトに比べても見劣りしないケースが多いながらも、費用は下記のように比較的安価から始めることができます。

初期費用で10~30万円
月次費用は数千~数万円

また、オプションなどを使わず、シンプルなシステム構成にすれば追加費用を抑えることも可能ですので、デザインさえ決めてしまえば安価でスピーディーにサイトをオープンできます。

◆ASP-ECの構築の流れ

(1)ASPと契約(ドメインの取得も兼ねる)
(2)ASPの管理画面から画面のデザイン変更や商品登録を行う
(3)ECサイトをリリース

大手のASP-EC企業は既に、10年以上の歴史があるため、ECに必要な機能の多くを実装しており、注文件数が1日あたり100件未満であればECサイト運営に困ることはないでしょう。

==>予算が限られている中小事業者や個人事業主は「ASP-EC」を使おう!

なお、個人がはじめてECサイトを作る場合は、完全に無料※で使用できるECシステムがあります。代表的なものは「BASE」と「STORE’S.jp」の2つです。ECサイトで相当な売上が出るまでは、これらのプラットフォームを使って、費用を抑えてECサイトを運営した方がしっかり収益をあげることができるはずです。※決済手数料のみかかります。

費用をとにかく抑えて、ECサイトを構築したい方は下記の記事で詳しく解説しているのでご一読ください。

過去記事:【完全解説】無料でECサイトを開設するための4つの方法

自社に技術力がある場合は「オープンソース」を使えばライセンス費用が無料

オープンソースを利用して自社ECを構築する手法もあります。オープンソースとは、ライセンス費用がかからないもので、オープンソースなら誰でもソフトウェアをダウンロードしカスタマイズすることができ、またカスタマイズしたオープンソースを再販売することもできます。

ですから、自社にプログラマーが在籍し、技術力がある場合はオープンソースを利用して、自社でECサイトを構築することも選択できます。

◆オープンソースの構築の流れ

(1)オープンソースをダウンロード
(2)自社のサーバーに「オープンソース」のECシステムを設置
(3)ドメインを取得し、自社オープンソースに割り当てる
(4)オープンソースをカスタマイズして、自社ECサイトを構築する
(5)管理画面で商品登録やデザイン変更等行う
(6)ECサイトをリリース

このようにオープンソースを使えば、ライセンス費用がかからないので、ASPのようにシステム利用費が発生しません。そのため月々のサーバー費用だけで運営できるのです。

また、オープンソースは、カスタマイズしなくてもデフォルト機能だけで利用することもできますから、カスタマイズをしなければ特別な開発知識は不要です。

デメリットは、オープンソースは他の構築手法に比べてセキュリティに弱いことです。

オープンソースは一度脆弱性が突破されると、他のサイトでも同じ手法を使われるため、ハッカーからの攻撃対象になることが多く、さらにソースコード等が公開されており、セキュリティホールが見つかりやすいのです。

参考記事:OSSと脆弱性の“現実”–認識を変えた2014年の事件

もちろん、オープンソース側もセキュリティホールに対応したセキュリティパッチを常に提供していますが、オープンソースをカスタマイズした場合、このセキュリティパッチを利用すると別の障害が発生する可能性があるため、あえて未更新にしている場合や、EC構築時の担当者が退職してしまい、そもそもこのような保守作業を行っていない場合も散見され、正しく運用されているとは言い難い状況です。

こういったことからオープンソースを利用してECサイトを構築する場合は、カスタマイズをせずにセキュリティパッチを適用できるようにするのが、ECサイト運営のコツです。

==>デメリットを把握してから「オープンソース」のECシステムを利用しよう

中規模以上のECサイトの予算感

では、ECサイトの年商が1億円以上の中規模以上の場合であれば、一日の注文数が100件を超えることになり、EC担当者の手作業では受発注処理を行うのは大変ですし、ミスも多くなります。

そのため、中規模以上のECサイトでは、自社の基幹システムや受発注システムとのシステム連携が必須となるでしょう。この領域になるとECサイトのカスタマイズが必要となり初期費用は300万円から数千万円となり、システム利用料も月間10万円以上が基準となってきます。

カスタマイズを行うECサイト構築手法としては3つあります。

◆カスタマイズを行うECサイト構築手法

(1)パッケージ
(2)クラウドEC
(3)フルスクラッチ

特別な理由がなければ(3)フルスクラッチでECサイトを構築する理由はありません。なぜならフルスクラッチはゼロからECを開発する手法のため、費用も工数もかかります。

しかし、(1)パッケージや(2)クラウドECであれば、最初からECに必要な機能が備わっており、必要最低限のカスタマイズで必要な要件を満たすことができ、必然的に費用も工数も短くなるため、これに比べるとフルスクラッチはメリットがありません。

となると事業者はパッケージとクラウドECのどちらかでECシステムを作ることになりますが、数年先のことを考えると「クラウドEC」にすることを強くおすすめします。

なぜならシステムというものはリリースした瞬間から陳腐化がはじまりますが、クラウドECはASP-ECと同様に常にシステムが更新されるので陳腐化しないといえます。

システムの「最新制」と「個別のカスタマイズ」は相反するもので、それを両立させるプラットフォームには大変な技術力が必要ですが、それを実現することにより、リニューアルが必要ないECシステムを構築できるのです。

なお、費用感においては「パッケージ」も「クラウドEC」もほぼ同じと言えるので、コンペを行う際は、両手法のベンダーを含めた数社を呼んでECシステムの導入を検討しましょう。

==>中規模以上のECシステムは「クラウドEC」や「パッケージ」の導入を検討

視点②セキュリティで決める

EC事業者にとって気をつけるべきセキュリティ問題とは、以下の3つです。

◆EC事業者が気をつけるべき3つのセキュリティの問題

(1)サイト改ざん
(2)サイトからの個人情報漏えい
(3)クレジットカードの不正利用

それぞれ独立したセキュリティの問題ではなく、これら3つの問題は実は全て連動している問題といえます。下記をご覧ください。

◆クレジットカード番号が不正利用されるまでの流れ

(1)セキュリティの弱いECサイトの決済画面等を改ざん
↓↓↓
(2)ユーザーのクレジットカード番号が漏えいする
↓↓↓
(3)盗んだクレジットカード番号を不正利用する

つまり、クレジットカードを不正利用するには、まずカード番号を盗む必要があり、カード番号を盗むには、ECサイトの画面を改ざんして、カード番号を入力させる手法がよくハッカーに使われているのです。

悪意のあるユーザーに最も狙われやすいのは「オープンソース」

セキュリティ対策において、もっとも脆弱なECサイト構築手法はオープンソースです。なぜならプログラムコードが公開されているため、当然ハッキングする側に手の打ちを明かすようなものです。

前項で記載したとおり、オープンソース側もセキュリティホールに対応したセキュリティパッチを常に提供していますが、オープンソースをカスタマイズした場合、このセキュリティパッチを利用すると、別の障害が発生する可能性があります。

ですからセキュリティに対する更新作業を怠っている場合や、構築時の担当者が退職し、このような保守作業を行っていない場合があり、正しく運用されているとは言い難い状況なのです。

ECサイトに限らず、多くのオープンソースソフトウェアで脆弱性が含まれる場合があり、オープンソースを利用してECサイトを作る場合は、この点に留意しておかなければなりません。

参考記事:多くの企業が抱える致命的なオープンソースリスク

自社に技術力も体制もあるならフルスクラッチが最もセキュリティに強いが、そういった企業はごく一部

自社で、ECサイトを含めた全てのシステムを管理し、セキュリティの意識が相当に高い企業であれば、フルスクラッチのECサイトが最もセキュリティの強いECサイトと言えるでしょう。

しかし、それには自社にセキュリティ部門があり、万全のセキュリティ対策を施すことができる技術力のある一部の企業に限られます。

実際にはフルスクラッチのECサイトを採用している企業の多くはシステムの陳腐化により、セキュリティに対して懸念をもっているのが実情で、最新のセキュリティ対策を施せないECシステムが多く、またセキュリティは売上に直結しない要素であるため後手に回る企業が多いのが現状です。

セキュリティに関しては「ASP-EC」や「クラウドEC」の利用が比較的安全

セキュリティに関しては、ECのプラットフォームをクラウド環境で提供している「ASP-EC」や「クラウドEC」が比較的、安全度が高いと言えます。なぜなら、プラットフォーム運営側にとっては、最新のセキュリティ基準に対応することは、サービスの品質に直結しますので、常に最新の対応を行っているからです。

また、クラウド環境のメリットは、それを利用するユーザーがセキュリティを意識しなくても、システムが常に更新・進化していくという点です。もし、この話がピンとこなければ、普段あなたがパソコンのブラウザーで使っている「Facebook」や「Gmail」を連想してみてください。

時代とともに、画面のデザインが変更したり、機能が追加・変更されていることに気づいたことがあると思います。つまり、クラウド環境のECサイトである「ASP」や「クラウドEC」であれば、最新のセキュリティ基準でさえも、意識していなくとも自動で更新・進化できるのです。

例えば、弊社のebisumartもクラウドECですが、年間に190回以上のアップデートが行われており、クラウド環境であればこういった恩恵がうけられるためセキュリティが高くなります。

==>セキュリティ基準の高さでECサイト決めるならクラウド環境のECシステムの安全度が高い

ただし、企業のセキュリティポリシーにより、クラウド環境を好まない企業もあり、そういった企業にはクラウド環境のECシステムの利用は、相性が良くありません。

視点③目的で決める

ECサイトを作る以上、売上を上げる!というのが共通の目的になるわけですが、それだけではなく企業によって、様々な目的があると思います。その目的に特化する形で、一番相応しいECサイト構築手法を決めてしまうのも一つの方法です。

③-1新規事業(サービス)向けのECサイトは「ASP-EC」が最適

新規事業のためのECサイトを作る場合は、低予算ですぐに始めることができるASP-ECを利用するのがおすすめです。なぜなら新規事業である以上、成功するか失敗するかわかりません。また、新規事業というものは、スピードが非常に大切です。そのような条件からECシステムに求められるものとは

◆新規事業のECサイトに特に必要な要素

(1)システムの費用が安いこと
(2)すぐに始められること
(3)そこそこのデザインであること

の3点です。スピードが求められる新規事業で、ECサイト構築のために半年から1年もかけては、マーケットの状況が変わり、参入しづらくなることもあります。ですから、1~3ヵ月程度で作ることが可能なASP-ECは新規事業に向いています。

筆者も、かつて英会話スクールで、新規事業として「オンライン教材」の新規事業を担当したことがありますが、やはり手軽なASP-ECを採用しました。採用理由はスピードでした。自社のバックエンドの業務フローをASP-ECに合わせる形で運用ができたので、すぐにECシステムを導入することができたのです。

また、ASP-ECのメリットですが、ECのフロントつまり”見た目”ですが、大企業のサイトと比べても遜色のないサービスもあり、デザインを重視する場合は、デザインの自由性が高いASP-ECを選ぶと良いでしょう。

==>新規事業であれば、すぐに構築可能な「ASP-EC」を利用しよう!

パッケージやクラウドECを標準機能だけで導入すれば初期費用を抑えて、すぐにリリースできる

ASP-ECがいかに新規事業のECサイトに向いているかを解説しましたが、デメリットもあります。新規事業のECサイトが軌道にのって、日の注文件数が100件を超えると、バックエンド作業を人手で対応するのが大変になってきますし、受発注の際にミスも生じやすくなります。

そうなると、ASP-ECではバックエンドの効率化がビジネスのボトルネックとなり、ECサイトの売上を拡大しづらくなるため、システム連携やカスタマイズが可能なECシステムに乗り換える必要が出てきます。

しかし、ASP-ECではなく、最初からパッケージやクラウドECをカスタマイズせずに標準機能だけで導入すれば、カスタマイズが発生しないので、費用を抑えて導入し、かつ事業の規模拡大に合わせて、あとからECシステムの乗り換えをせずに、そのシステムを利用しながらシステム連携やカスタマイズを行うことができます。これは大きなメリットです。

なぜならECシステムの乗り換えは、大きなプロジェクトになるため、予算だけではなく、人手も大きく割かなくてはなりません。その手間が「システム改修」だけに抑えられるのは大きなメリットです。

パッケージ、クラウドECの両方の選択肢がありますが、筆者はクラウドECを強く勧めます。

なぜならパッケージは導入してからシステム改修を行う時点までの期間でシステムが陳腐化しており、場合によってはパッケージのバージョンアップを行う必要があるため「ASP-ECからECシステムを乗り換える」ことと同様の工数が発生する可能性があるのです。

しかし、クラウドECであれば、常にシステム更新がされており、陳腐化しないため、この様な問題は発生しません。

クラウドEC、パッケージを、カスタマイズ無しで導入する費用目安は300万円から500万円くらいです。

ASP-ECの導入目安が数十万円と比較すると高いですが、事業が拡大したときに、ECの乗り換えが発生しないことを考えると、中長期的にはコストと労力の削減になり、それはビジネスのスピードに直結します。

==>新規事業でも将来のカスタマイズを事前に考えるなら「パッケージ」か「クラウドEC」

③-2BtoBの場合、特化したECシステムを利用できれば費用が安く済む

BtoBといっても、BtoCに近い新規顧客を獲得するためのECサイトもありますが、その場合のECサイト構築手法はBtoCとあまり変わりがないため、ここでは「既存顧客」を中心としたクローズドBtoB-ECの導入について解説いたします。

BtoBのECサイトの特徴は、個社毎に業務フローが独特であるために、システム化した場合に費用が莫大にかかってしまうデメリットがあります。なぜなら、BtoBの場合は得意先毎に、業務フローや費用の請求方式、割引率が異なることが頻繁にあるので、ECシステムの導入が難しいジャンルでもあります。

また、せっかく取引先との間にECシステムを導入しても、使いにくいシステムでは利用が促進されず、システム導入前の紙ベースの業務フローに戻ってしまうこともあります。

従ってBtoBのECシステムを導入する際は「多様な業務フローに対応できるECシステム」を導入するしかありません。

このような背景を考えると、BtoBのECサイトはカスタマイズが前提の「パッケージ」か「クラウドEC」のどちらかに限られます。※フルスクラッチはすでに前述したように費用と工数がかかりすぎます。

パッケージやクラウドECは、中規模以上のECシステムによく用いられる手法ですから、BtoBの実績が多く、すでに他社で開発済みの機能を流用することができれば工数を抑えることができるので、まずは「パッケージ」「クラウドEC」のEC業者数社を呼んで、自社の業務フローとECシステムがどれだけ業務にマッチするか?検討しましょう。

クラウドEC:ebisumart(エビスマート)のBtoB向けECサイト

==>BtoB-ECはカスタマイズが前提!「パッケージ」か「クラウドEC」を検討

また、最近では「Bカート」のように、BtoBに特化したASP-ECもあるので、自社の業務フローに適用することができれば、費用が大変安いため検討すべきでしょう。

ASP-EC:BtoB EC・Web受発注システム「Bカート」

③-3楽天市場などのショッピングモール運営から「自社ECサイト」を構築

楽天市場やAmazonなどのショッピングモール運営で、売上の規模が大きくなると、手数料などの費用をとられない「自社ECサイト」を展開し、利益率を高め、自社のブランディングの強化を考えるのは経営者なら自然の成り行きと言えるでしょう。

しかし、ショッピングモールから自社ECサイト構築において忘れてはいけない点が3つあります。

◆ショッピングモールから自社ECサイトを展開するときに覚えておくべきこと

(1)自社ECサイトでは集客を自分達で行う必要あり
(2)ECサイトの利用料やサーバー費用、決済手数料はかかる
(3)ショッピングモールと並行すると在庫管理など大変

まず、楽天市場やAmazonなどのショッピングモールは手数料などの費用がかかりますが、最大のメリットは集客力が強力である点です。逆に自社ECサイトは、そのカテゴリーにおいて「Nike」のような有名ブランドではない限り、アクセス数はほとんどない状態からスタートします。

そのため、リスティング広告やGoogleショッピング広告などが必要となりますが、単価の安い商品を扱うECサイトでは、コストがかかり過ぎるため広告を行っても利益を出しづらい構造になっております。

そうなるとSEOが最も効率の良い手段となります。そして、多くの企業では「コンテンツ・マーケティング」と呼ばれる手法で、費用をかけずに集客を行う手法が注目されています。

そのコンテンツ・マーケティングを行うには、自社ブログのCMSが必要になります。そしてこのCMSは「WordPress(ワードプレス)」を使うのが主流です。なぜならWordPressはGoogleが認めているブログプラットフォームですし、コンテンツ・マーケティングで成功している企業のほとんどはWordPressでコンテンツ・マーケティングを行っているからです。

そのため、自社ECサイトで集客を成功させるためには「WordPress」と連携可能なECプラットフォームを使うことを事前に検討しておく必要があります。

この点は大手ASP-ECであれば、ほぼ全て対応しておりますし、中規模以上のECシステムの「パッケージ」や「クラウドEC」も対応しております。

自社ECサイトで集客するために、WordPressの連携だけは事前に確認しておきましょう。多くのECシステムでは「オプション料」か「導入費用」「アクセス数による従量課金」という形で対応しております。

注意点は、WordPressは「オープンソースのCMS」のためにセキュリティ脆弱性があるので、この点をECプラットフォームベンダーにどのような対策をとっているのかを、事前に聞いてみましょう。

多くのECプラットフォームベンダーは「ECシステム」と「WordPress」を設置するサーバーが別で、ドメインを同じに見せる「リバースプロキシ」という設定を使っており、仮にWordPressがサイト改ざんされても、ECサイト本体には影響がない構成であるケースがほとんどです。

このためWordPressを使用する場合は、すぐに復元できるようにバックアップ作業が絶対に必要となります。WordPressのサイト改ざんは企業ブログであっても頻繁に起こることですから、この点は本当に注意を怠らないようにしてください。

次は自社ECサイトの「システム利用料」ですが、自社ECサイトであっても費用がかかることを念頭にいれておき、3年程度のコストシミュレーションを作っておきましょう。

◆自社ECサイトでかかる運営コスト一覧

(1)システム利用料(ASP-ECの場合数千円~数万円)
(2)サーバー費用(ASPやクラウドECの場合は0円)
(3)決済手数料(3%~7%、業界や商品によって変動)
(4)オプション費用

そして最後に「ショッピングモール」と「自社ECサイト」の在庫管理ですが、自社ECサイトがスタートしたばかりの時は、注文数も少なく対応に苦慮しませんが、一日に100件も注文件数を超えると、

「しまった!在庫切れなのに注文を取ってしまった!」

というミスが増えてきます。そのようなことを防ぐためには「在庫連携」する必要があり、方法は3つあります

◆在庫連携を行う3つの方法

(1)自社ECサイトをカスタマイズして、楽天市場やAmazonと在庫連携する
(2)ツールを導入し、在庫連携・管理を行う
(3)最初から在庫連携可能なECシステムを採用する

ショッピングモールから自社ECサイトを運営する場合は、このような点を事前に念頭に入れておきましょう。

==>「集客」「システム利用料」「在庫連携」の3点を踏まえて、小規模なら「ASP-EC」、中規模以上なら「パッケージ」及び「クラウドEC」を検討する

④将来の事業戦略を踏まえて決める

インターネット業界やEC業界は環境変化が早いため、企業も意思決定のスピードを高めなくてはなりません。

しかし、一方で、最初からフルカスタマイズしたECサイトを開発する場合は、開発期間に1~2年かかることも珍しくありません。

そうなるとECシステムがリリースされるころには、時代遅れの仕様やセキュリティ脆弱性をかかえてしまうこともありますし、全く売れず、採算の取れないECサイトが出来上がってしまう可能性もあります。

そうならないためにも、ECサイト戦略の基本は「とりあえずリリースして試してみる!」ということが非常に大事なのです。

最初から全ての機能実装、システム連携などを行わずに、最低限のECシステムを運営し、ECのノウハウを蓄積しながらフェーズを分けて機能拡張、システム連携を取り入れて行く方法がベストです。

その中で優先順位が変わったり、当初は必要だと思っていた機能が、実際は必要なかったりというケースが出てくるからです。

◆標準機能のECサイトで、フェーズを分けてオムニチャネルを展開する例

(1)ECサイトで「パッケージ」を採用し標準機能ですぐにリリース
(2)自社の基幹システムと連携し、顧客データの統合を2年後までに行う
(3)顧客データの統合により店舗とECのオムニチャネルを展開

そういった方法をとることができるのは「パッケージ」か「クラウドEC」の2つ手法に限られてしまいますが、パッケージに関しては、カスタマイズが発生するとシステムを更新できませんので、セキュリティに懸念がありますが、「クラウドEC」であれば、常にシステムが更新され、セキュリティも最新の状態を保てます。

==>将来の事業展開を考えると、システムの拡張性のある「パッケージ」か「クラウドEC」を検討しよう

視点⑤PDCAの速さで決める

もし、自社に予算も開発・マーケティング要員も十分に整っている大企業であれば、ECサイトの選択肢は「フルスクラッチ」が有力です。なぜならフルスクラッチのECサイトこそ、最も売上を高めるための改善・PDCAを早く回すことのできるECシステムなのです。

フルスクラッチならマーケティング部が意思決定をすると、それに沿うようにすぐに自社のIT部門がECをカスタマイズし、動くことができる手法だからです。一見簡単そうですが、下記の前提がない企業には難しいでしょう。

◆フルスクラッチでPDCAを回すことのできる企業の条件

(1)マーケティング部門とIT部門のコミュニケーションがとれている
(2)マーケティング力を持つ社員と技術力がある社員の両方がいる
(3)稟議が通りやすく、新規施策を次々行いやすい企業風土

以上の3つを満たすことができれば、自社の施策を次々と試せるため、フルスクラッチのECサイトは最高のシステムであり「ZOZOTOWN」や「オイシックス」などの有名なECサイトは、これらの条件を満たすゆえにフルスクラッチでECシステムが作られています。

ただし、フルスクラッチにはそれ相応のデメリットもありますので、下記の点を踏まえて、導入を判断する必要があります。

◆フルスクラッチ導入に気をつけるべきこと

・費用・工数が大きい
・システムの陳腐化を防ぐために、増築を繰り返し、システム全体の統制がとれなくなる
・各部署の業務フローを反映しすぎて、システムの複雑化を招く
・社内エンジニア退職等によるノウハウの喪失とブラックボックス化

==>自社に体制があれば「フルスクラッチ」のECシステムが、最もPDCAを高速で回すことができる

ECサイト構築の前に、自社の業務フローを業者に説明できないと、失敗する可能性もあり!

筆者の経験ですと、大規模ECサイトの構築・乗り換えが、いつまで経っても進まないという案件をよく耳にします。その原因は、業務フローを自社で把握しておらず、それを上手く開発業者に説明することができないことが要因であることが多いです。

どんな優秀なECベンダーでも、業務フローが明確ではない案件は事前に全体工数を把握できないため、受注することに大きなリスクが伴います。

もし、現行システムと業務に関するノウハウやフローが溜まっておらず、外部に説明することができないのであれば、まずは自社業務と現行システムのフローを把握し、さらに「その業務は本当に必要なのか?」という視点で業務のスリム化を図る必要があります。

ECシステムの導入は大規模なものになると、人任せで上手くいくものではありません。業務フローが現行システムの動きが明確ではない場合は、まず現在の状況を明確にし、要件を自社でしっかりまとめておきましょう。


セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。