ECサイトにポイント管理システムを導入する3つの方法


「新規EC会員登録数の向上や効果的なリピーター施策を検討しており、新たにポイントサービスを始めてみたい」と考えている方のために、ECサイトのポイントサービス運用に必要なポイント管理システムの3つの導入方法を紹介します。

◆ポイント管理システム導入の3つの方法

導入方法①既存ECシステムのポイント管理機能を使う
導入方法②ポイント管理機能を持つASPサービスを導入する
導入方法③Amazon Payや楽天ペイのオンライン決済サービスを導入する

導入方法①②は、EC事業者が独自のポイントサービスを活用して顧客分析や販促アプローチを行う方法です。導入方法③は、多くのユーザーを持つAmazonや楽天が提供するオンライン決済サービスをECサイトに導入して、ユーザーが会員登録や購入手続きを行う際のハードルを下げ、売上につなげる方法です。

本日は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、Webマーケティングの視点から、ECサイトでポイントサービスを始める方法を解説します。

ポイント管理システムの3つの導入方法の特徴

以下は、ポイントサービスを導入するための3つの方法について、メリットとデメリットをまとめた表です。

導入方法 メリット デメリット
①既存ECシステムのポイント管理機能 追加費用が不要
すぐに利用できる
・実店舗とのポイントサービス連携ができない
・使用したい分析機能が実装されていない場合がある
②ポイント管理機能を持つASPサービス ・さまざまな専門機能が提供されているため、利用したい機能を持つサービスを選べる
・実店舗をはじめとするマルチチャネル連携に対応している
初期費用月額費用が必要
・ある程度の導入期間が必要
③Amazon Payや楽天ペイのオンライン決済サービス 新規会員登録数が増える可能性があり、売上アップにつながりやすい 手数料が必要
・優良顧客の育成や囲い込みがしづらい

参考:Amazon Pay楽天ペイ

それぞれを詳しく解説していきます。

導入方法①既存ECシステムのポイント管理機能を使う

ポイント管理機能は多くのECシステムに実装されており、次のような基本機能を利用することができます。

◆ポイント管理の主な基本機能

・会員管理機能
・ポイント発行管理機能
・分析機能
・販売促進機能

ポイント管理システムを初めて導入する場合には、既存ECシステムのポイント管理機能にどのような機能があるのか確認してみましょう。

残念ながら、以下の機能は標準では実装されていない場合が多いです。

◆標準実装されていないことが多い機能

・高度な分析機能
・実店舗をはじめとするマルチチャネルでのポイント連携機能

とはいえ、高度な分析を行いたい場合には分析ツールと外部連携することで十分補完できるため、ECサイト内だけでポイントサービスを展開するという場合には、手始めにECシステムに標準実装されている機能を利用してみるとよいでしょう。

導入方法②ポイント管理機能を持つASPサービスを導入する

ECサイトのポイント管理に特化した「CROSS POINT(クロスポイント)」などのASPサービスを導入することで、次の機能を利用できます。

・会員管理機能
・ポイント発行管理機能
・分析機能
・販売促進機能
・実店舗をはじめとするマルチチャネルのポイント連携

特にPOSシステムとポイントサービスを連携させたい場合には、EC向けのポイント管理に特化したASPサービスの導入を検討しましょうO2Oやオムニチャネル施策を実施するために必要な機能が提供されています。

参考:「CROSS POINT(クロスポイント)」(株式会社アイル)

導入方法③Amazon Payや楽天ペイのオンライン決済サービスを導入する

Amazon Payや楽天ペイのオンライン決済(ID決済)サービスについては関連記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:2つのID決済「AmazonPay・楽天ペイ」導入前に押さえるべきポイントとは?

オンライン決済サービスを導入することで次のようなメリットがあります。

◆Amazon Payや楽天ペイ導入のメリット

・ユーザーがAmazonや楽天のIDを使用して自社ECサイトを利用できる
・ユーザーが自社ECサイトの買い物でも、Amazonや楽天市場のポイントを獲得、使用できる
・EC事業者は購入ユーザー情報を取得できる
・EC事業者はユーザーに対して自社ECサイトの会員登録を訴求できる

ユーザーが日頃よく利用しているIDで決済できるため新規購入手続きの手間や心理的な負荷を低減でき、気軽に購入してもらうことができます。購入手続きでの離脱(カゴ落ち)が減ることで、売上アップが期待できます。

もちろんデメリットもあります。

◆Amazon Payや楽天ペイ導入のデメリット

・手数料が必要
・自社ECサイトにおける優良顧客の育成や囲い込みがしづらい

Amazon Payや楽天ペイの使用は集客力が高くなる反面、一回限りの購入で終わるユーザーも多く、自社ECサイトの優良顧客の育成や囲い込みが難しくなります

しかし、ECサイトにとって、「集客」は最重要課題のひとつです。とりわけ、オープンしたばかりのECサイトや認知度があまり高くないブランドにとって、オンライン決済サービスの導入は非常に有力なソリューションと言えるでしょう。

どのポイント管理システムを導入すべきか?

会員数が数千人以上のECサイトの場合

まずは既存のECシステムに標準実装されているポイント管理機能を積極的に利用してみるのがよいでしょう。具体的な方法は、当記事の最後の方に書きますので、下記のリンクをクリックして、記事の下部をご覧ください。

→具体的なポイントサービスの施策を見る

会員数が少ないECサイトの場合

Amazon Payや楽天ペイのオンライン決済サービスを利用して集客し、売上増加と同時に新規会員登録につなげる施策を実施する必要があります。100人程度のユーザー規模の場合、ポイント施策の効果は限定的になります。売上とともに会員数も増やしていきましょう

例えば、オンライン決済サービス導入時に、新規会員登録者に対してクーポンやポイントプレゼントなどの特典キャンペーンを同時展開するなど、具体的な施策を企画することをおすすめします。

ECサイトと実店舗のポイントサービスを統合運用したい場合

ECシステムに標準実装されている機能では実現できないため、EC向けのポイント管理に特化したASPサービスの利用を検討しましょう。比較的低料金(月額)で利用できるサービスもあるため積極的に活用するとよいでしょう。

ECサイトにおける「パレートの法則」とは?

ポイント管理システムを導入することで、ユーザーにポイント還元や特典などのメリットを提供することができ、また顧客情報を収集して分析することで、売上を高める施策を実施できるようになります。

顧客分析をせずにシステムを導入するだけでは効果は望めません。自社の顧客を十分に分析して頻繁に購入してくれる優良顧客を育成し、顧客離れを防ぐためのポイントサービス運用とポイント施策が重要になります。

Wikipediaでは「現代でよくパレートの法則が用いられる事象」のひとつに以下が挙げられています。

・ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行うほうが効率的である。

引用:「パレートの法則―影響―現代でよくパレートの法則が用いられる事象」(Wikipedia

売上の80%が全顧客の20%によるものであり、この20%の顧客(優良顧客)に対する施策に注力すべきとする「パレートの法則」は、ポイント施策の基本とも言えます。

優良顧客に対する3つの施策

一般に優良顧客に対する施策として、次の3つがあります。

施策①優良顧客を増やす
施策②優良顧客の満足度を高める
施策③優良顧客の離脱を防ぐ(休眠顧客の活性化)

施策①~③を達成するための取り組みについて、それぞれ見ていきましょう。

施策①優良顧客を増やす

優良顧客を増やすために実施している2つの事例を紹介します。

事例①新規会員登録してくれたユーザーに対してポイントを付与

「ニトリネット」では、サイトを訪れたユーザーに対してモバイルアプリ(「ニトリアプリ」)の新規会員登録を促し、特典としてポイントを付与する施策を展開しています(下図の赤色の枠で囲んだコンテンツを参照)。

◆ニトリのECサイトのTOPページ

画像引用:ニトリネット、参考:ニトリアプリ

頻繁にECサイトを訪れて買い物をしてくれるユーザーに、より機能性と利便性に優れたアプリを利用してもらうことで、さまざまな顧客アプローチが可能になり、顧客エンゲージメントを高めることができます。

自社アプリがない場合にも、ポイントやクーポンなどの特典を用いる施策は新規会員登録を増やすために効果的です。新規会員数を増やして優良顧客を育成する機会と対象を広げることで、優良顧客の増加を目指しましょう

「ポイント」と「クーポン」の特徴
ポイントは利用可能期間内であれば、支払い料金の端数として使用したり、支払い時に端数を残して貯めておいたりすることができるため「お金」と同じ感覚で利用されます。一方のクーポンは、複数の購入機会に分けて使ったり、余りをおつりとして受け取ったりすることができないため、利用期限のある「割引券」と言えます。

事例②決済前の非会員に対して会員特典を訴求

ECサイトの売上機会を高めるために、会員登録が不要な「ゲスト購入」を用意することも一般的な手法の一つです。しかし、優良顧客を増やすためにはゲスト購入を希望するユーザーにも会員登録をしてもらえるような工夫を施す必要があります

「楽天市場」では、決済手続きの直前に会員特典を訴求して登録を促進しています。

◆楽天市場の決済方法選択画面

楽天市場のカート画面

画像引用:楽天市場

施策②優良顧客の満足度を高める

優良顧客の満足度を高める施策ではターゲティング戦略が重要になります。

まずは、分析ツールを用いて顧客をセグメンテーションし、優良顧客セグメントを特定しましょう。抽出する際に軸とする項目は事業者ごとにさまざまですが、一般に広く用いられているのがRFM分析に基づく3つの項目です。

「RFM分析」の用語の意味はWebで公開されている用語集などを参考にしてみてください。

参考:「CRMを学ぶーマーケティング用語集―RFM分析」(シナジーマーケティング株式会社)

◆優良顧客セグメントの抽出基準(RFM分析)

・累計購入回数が多い
・累計購入金額が多い
・最終購入日が直近である

このような基準で優良顧客セグメントを抽出して優良顧客向けにポイントやクーポンなどの特典キャンペーンなどを企画し、メールやアプリのプッシュ通知で周知します。

◆優良顧客向けのキャンペーン告知見出し(イメージ)

・「日頃の感謝を込めて、○○円クーポンをプレゼント!」
・「リピーター様限定!期間中のご購入で○○ポイントプレゼント」

ターゲティング戦略により優良顧客の満足度を高めることで、購入回数や購入金額の増加を目指しましょう。

施策③優良顧客の離脱を防ぐ(休眠顧客の活性化)

直近の購入がなくても過去に優良顧客セグメントに属していたユーザー(つまり「休眠顧客」)は、そのままにしておくと退会(離脱)してしまう可能性があります。離脱を防ぎ、再び優良顧客となってもらうために、ポイントやクーポンを配布するなどして購入機会を提供する必要があります。

そこで、まずは対象となる休眠顧客(過去の優良顧客)を特定します。

◆休眠顧客セグメントの抽出基準(RFM分析)

・累計購入回数が多い
・累計購入金額が多い
・最終注文日が直近ではない

抽出した休眠顧客向けにポイントやクーポンなどの特典キャンペーンを企画し、メールやアプリのプッシュ通知で周知して、ECサイトに来てもらうための機会を提供しましょう。

ユーザーが休眠してしまう理由はさまざまです。そのため特典キャンペーンだけでは効果が出ない場合もあります。休眠顧客に対するアプローチは、クロスセルや商品の魅力の訴求など、さまざまな切り口で取り組むことが重要です。

ポイント管理システムの導入効果を高めるために

EC事業者にとって、ポイント付与は収支的には負債となるため、ポイント付与を乱発すると利益を圧迫してしまうことになります。そのため、全会員に対する通常のポイント還元とは別に、ポイント特典施策はターゲットを絞って戦略的に展開する必要があります

効果的なポイント施策を実施するためにも、ECサイトのポイント管理システムは十分に検討して導入するようにしましょう。

弊社のクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」は、今回紹介したポイント管理システムの3ついずれの方法も選択することができます。ASPサービスとの連携、Amazon Payや楽天ペイにも対応しているため、ECサイトの立ち上げや移行を検討されている方は、ぜひ公式ホームページをご覧ください

ebisumart(エビスマート)公式ホームページ


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。