飲食店がデリバリーやECを始めるための4つの方法をプロが解説


新型コロナウイルスの影響は、世界的にも日本国内にも深刻な被害を与えました。2020年4月7日に日本政府より発出された「緊急事態宣言」により、首都圏を含む7都府県の住民に外出自粛要請を行い、さらには外出自粛要請は全国へと拡大。飲食店も休業や営業時間の短縮を迫られました。

そのため飲食店においては、デリバリーやECを使った通販などを検討する経営者も多いと思います。飲食店においてデリバリーや通販を行う方法は以下の4つの方法が考えられます。

①Uber Eats等のサービスに登録
②飲食専用ECの利用
③無料ECサイトの利用
④スマホ決済端末のオンライン決済機能を利用

①のUber Eatsなどのサービスを利用すると1注文あたり、約35%の手数料がかかると言われていますが集客力があります。一方、自分で通販のためのECサイトや自店専用の決済用ページ(URL)を作る②③④のやり方は、費用は安く済むものの、ネット集客を自分で行わなくてはいけないデメリットがあります。

本日は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、飲食店経営者のためにECサイトを利用するための4つの方法を詳しく解説します。

2020年4月の飲食店への新型コロナウイルスの影響は売上昨年対比約64%減

まずは、新型コロナウイルスの影響がどのくらいあったのか?POSを提供するポスタス株式会社のPOSデータから昨年対比のデータが発表されているので、下記に引用した表をご覧ください。

◆売上昨年同月対比(客単価別)

出典:【2020年5月】POSデータ分析レポート~新型コロナ感染拡大が飲食店に与えた影響~ポスタス株式会社ホームページ

このデータを見ると、2020年2月までは新型コロナウイルスの影響は小さく、全体でも昨対97.9%の売上となっており「影響はない」と言い切っても差し支えないレベルであることが分かります。しかし、

2020年3月には昨対67.7%
2020年4月には昨対36.5%

つまり、4月においては飲食店全体で63.5%の売上減少となりました。特に客単価が3,000円台のケースにおいては最も売上が減り、67.4%減となっております。

筆者が価格帯から推測すると安価な価格帯の「居酒屋」が最も大きい影響を受けたのだと思われます。なぜならそれらの店構えは3密になっているケースが多々あり、敬遠されたのではないでしょうか?

また、ポスタス株式会社はエリア別にもデータを紹介しているので、下記に紹介いたします。

◆売上昨年同月対比(エリア別)

出典:【2020年5月】POSデータ分析レポート~新型コロナ感染拡大が飲食店に与えた影響~ポスタス株式会社ホームページ

このデータによると、関東地方が最も大きい影響を受けていることが分かり、4月においては70.6%の売上減になっております。

関東地方をはじめ、近畿地方など飲食店の売上が他よりも多く下がった理由としては、以下のものが考えられます。

・関東・近畿においては初期から緊急事態宣言が発出されたこと
・テレワーク推進によりサラリーマンがオフィスに行かなくなったこと
・飲食店の多くは商業地区にあり、商業地区への人の流れがなくなったこと

東北地方も関東地方に次ぎ売上を顕著に下げているエリアです。このデータだけですと筆者の見識では、何が原因で他の地方よりも売上減が大きいのかを推測することはできませんが、東北地方は人口密度が低い県が多いため、その点が影響しているのかもしれません。

下記リンク先によると、東北地方は、47都道府県で人口密度ワースト10の中に6県のうち5県もランクインしています。

ランキングデータ都道府県市区町村

例えば、もともと他地区に比べ徒歩圏内に飲食店が少なく遠方の店に通っていた背景があり、人々が長距離移動を自粛した結果、より影響が大きくなったなどの理由があるのかもしれません。

いずれにせよ、関東・近畿などの人口が多い地区を中心に、新型コロナウイルス流行によって飲食店に多大な影響があったことが分かります。そして飲食店は、他の業種に比べて、人件費や家賃などの固定費の比率が高い業種であるために、7割近くの売上減は事業継続が困難な状況となります。

そんな中で、テイクアウトや通販を始めるために、ECの利用を考える経営者が多くいると思いますので、その方法について解説してまいります。

飲食店がEC(デリバリーを含む)を始めるための4つの方法

それでは、飲食店がECサイトを始めるための4つの方法を紹介します。Uber Eatsなどは、厳密にECサイトと言えないかもしれませんが、ネットを介した代表的なサービスなので併せて紹介いたします。

方法①デリバリーを増やすためには「Uber Eats」や「出前館」などのサービスに登録する

自社でECサイトを始めるには時間もかかりますし、ノウハウが必要となります。今すぐデリバリーを増やしたいと考えるのであれば、有名サービスを利用する方法にすべきです。

集客力もありますし、サービス側で事前決済してくれるので、経営者の労力を減らすことができるからです。ただし、費用は決して安くはなく、1注文ごとに35%程度の手数料がかかります。筆者が調べた限りだと、Uber Eatsと出前館の費用は下記のようになります。

◆Uber Eatsと出前館の費用比較

※Uber Eatsの初期費用はレストランへの支援措置として当面の間免除
※出前館は2020年10月末までの飲食店支援特別価格で表示
※最新の費用については公式ホームページ等で確認してください(2020年6月22日の情報)

参考:「新型コロナウィルス感染症 (COVID-19)の拡大に伴うレストランへの支援について」(Uber Eatsホームページ、「出前館、新型コロナウイルスの影響を受ける飲食店への支援を拡大~配達代行手数料を7%助成し23%に~」(出前館ホームページ

ですから、原価率の高いメニューでは採算をとることが難しいのです。また、両サービスともにエリアが限られているので、上記の公式サイトで、自店が対象エリアかどうか?を確認する必要があります。

また、上記以外にも「menu」というサービスなど、様々なデリバリーサービスがあるので、ユーザー数や費用を計算してみましょう。

これらのサービスの多くは月額費用はかからない成果報酬タイプが多いため、余裕があれば、複数のサービスに登録する方法もあります。その場合は、受付体制が混乱しないようにしなければなりません。

方法②飲食の注文サービスに特化したECサービス(ASP※)を利用してみる

緊急を要する場合にはおススメしませんが、もし中・長期的に自社専用デリバリーシステムの導入を検討する場合には、飲食に特化したECサービス(ASP)を提供している会社が複数ありますので、業者と連絡を取って検討する余地があります。なぜならUber Eatsなどのサービスを利用するより、コストがずいぶん安くなるからです。

筆者が調べたところ、飲食専門のECサービス(ASP)の費用感は以下のような価格帯が多く、数店舗を運営する飲食店経営者にとってもリーズナブルな価格帯と言えるでしょう。

◆飲食専門のECシステム(ASP)の費用感

初期費用は3~5万円
月額費用は6千~2万円

※ASPとは、アプリケーション・サービス・プロバイダーの略で、カンタンに説明するとブラウザーの管理画面があり、その管理画面で、システムを運用するサービスの総称です

飲食店がこれらのECシステムを導入するメリットはUber Eatsなどに比べて費用が安いことがありますが、デメリットとしては以下のようなものがあります。

◆デメリット

・ネットでの集客は自社努力が必要
・EC管理者が必要となる
・配送は自社でする必要あり

特にネットでの集客はノウハウや経験がないとカンタンではなく、例えば、Googleで「餃子 飯田橋 デリバリー」と検索したときに、検索結果の上位に表示されるようにするなど、リアル店舗の集客とは全く異なるノウハウが必要となります。

EC担当者を置き、WEB集客に関する情報を集めトライ&エラーを重ねながらノウハウを重ねる余裕がある場合には、費用対効果が高くなりますが、緊急事態の場合は、成功確率が低くなるためにおススメできる方法ではありません。

方法③無料ECシステムの「STORES.jp」や「BASE」を利用して通販を行う

もし、お酒やお菓子などの通販をECサイトで行う場合は、無料のECシステムを利用する方法があります。完全に無料というわけではなく、初期費用も月額費用もかかりませんが、決済手数料が3.6~5%程度かかります。

代表的なサービスは「STORES.jp」や「BASE」というECサービスです。操作方法もカンタンで、SNSで自分のプロフィールを作るくらいのITリテラシーがあれば、誰でも利用することができます。この方法について、詳しくは下記の過去記事をご覧ください。

過去記事:【完全解説】無料でECサイトを開設するための4つの方法

ただし、この方法もECサイトを作るのはカンタンですが、ネットでの集客にはWEBマーケティングのノウハウが必要となります。ECサイトを作ったからといって新規顧客がすぐにサイトに来るわけではありませんが、常連客のリストがあれば、その既存顧客を中心にECサイトで取引を始めるには最適な方法と言えます。

まずは既存顧客を中心にECサイトの利用を進めて、新規顧客も獲得していくべきでしょう。もし、全国にお客さんがいるような人気の飲食店の方なら、すぐに売上を上げることができます。

方法④「STORESターミナル(旧名:Coiney)」や「スクエア」などのスマホ決済端末のオンライン決済機能を使って、デリバリーを行う

スマホ決済とは、下記のような端末を使った決済のことであり、実店舗を持つ飲食店の中にはクレジットカード決済や電子マネー決済のために、導入した経営者も多いことだと思います。

◆スマホ決済の端末

画像引用先:STORESターミナル公式ホームページ
参考記事:【2020年版】スマホ決済大手7社比較!今から導入する決済方法は?

もし、導入した端末が「STORESターミナル(旧名:Coiney)」か「スクエア」の端末であれば、オンライン決済を行うことができます。下記をご覧ください。

画像引用先:STORESターミナル公式ホームページ

たった3ステップで、自店専用の決済用ページ(URL)を作ることができます。

お客様へのメールやLINEなどにURLを送付することで、お客様のスマホやPCでクレジットカード決済を行うことが可能です。この仕組みを利用すれば、事前に決済してから、食品を配送することができるので、決済手数料の3.24~3.95%だけの負担で始めることができます。

そして、ECサイトはもちろん、ホームページがない場合でも利用できるので、最も手軽に自店で始められる方法と言えます。しかし、この方法は常連客などの顧客リストがあることを前提としたやり方となります。

もし、人気店で「既存顧客リストがない」という場合は、ホームページに通販を開始したことと、電話受付をすることで、ホームページを見たお客様から連絡が来る可能性もあるので、通販開始時は、ホームページやSNSで告知をしましょう。

Uber Eatsでも、自社ECサイトでも料理は「写真」が全て!

どんな仕組みを導入しても、ネットを介する注文である場合には、料理の写真が非常に大切となります。一眼レフで撮影したり、プロに頼むことができればベストですが、それが難しい場合は、せめて画質の良い最新のスマートフォンで撮るなど一工夫が必要です。

写真をご自身で撮影されるという経営者の方は、せめて下記のような食品の写真のコツを教えているサイトの情報を一読しておくべきです。

参考:「料理(フード)の撮影のコツとは。料理写真の撮り方をプロが解説」(株式会社オージーフーズホームページ

デリバリーや通販の宣伝は「ホームページ」「SNS」「看板」「口コミ」をフル活用する!

デリバリーや通販を始める場合は、まずは持っている媒体をフル活用することです。デリバリーをやっていることがお客様に知られなくては、購入されることはありません。そのために考えられる媒体は全てフル活用しましょう。

◆飲食店が持つ宣伝媒体

・ホームページ
・SNS
・お店の看板
・口コミ

もし、普段からスマートフォンを使わないご高齢の経営者や、SNSが苦手であったりする場合であっても、従業員や家族の力を借りて、宣伝すべきです。現在Twitter上には飲食店を応援するための様々なハッシュタグがあり、ハッシュタグをつけてつぶやくことで、デリバリー利用者を増やすことができる可能性があります。

デリバリーやECサイトを利用するなら、固定費をなるべくかけずに行う

新たなサービスやシステムを利用する時は、少なからず費用がかかりますが、まずは固定費が低いものを利用すべきでしょう。ただし、固定費が下がると必然的に集客力の低いサービスが多いために、まずは既存顧客リストを利用したり、ホームページや看板を利用するなど、集客のための工夫が必要となります。

採算が見込めるならUber Eatsを利用する手もありますが、その場合は原価率を下げるか、商品力を高めて値段も高めに設定するなど、利益を計算しながらメニューを組まないといけません。

ECサイトを作る前に保健所に相談しよう

もし、ECサイトで食品を販売する場合には、事前に保健所に相談してみるべきです。それもECシステムの検討に入る前に行うべきでしょう。食品や提供方法によって違法となる場合があるからです。

東京都内(東京23区、八王子市及び町田市を除く。東京23区、八王子市、町田市及び東京都外の方は下記サイトではなく、所管の保健所等に相談してください)の場合は、東京都福祉保健局が下記のようなサイトを運営しているので、事前に目を通しておきましょう。

参考:「食品を作って販売したい | 食品営業はじめてナビ」(東京都福祉保健局ホームページ

また、お酒をテイクアウトで販売する場合も、本来は「酒類小売業免許」が必要となりますが、2020年6月30日までは、飲食店でもテイクアウト販売ができるように「期限付酒類小売業免許」が認められました。お酒のテイクアウト販売を考えている場合は、必ず免許の申請を行う必要があります。

参考:国税庁ホームページ

ただし、インターネット等を利用した広域販売は、この期限付き免許では認められておりません。

デリバリーでEC導入のための補助金を利用する

すでに締め切りを過ぎてしまいましたが、東京都では期間限定でデリバリーや移動販売の初期費用の負担を軽減するための補助金申請の受付を行っていました。

参考:「テイクアウト・宅配等を始める方への支援(第234報)」(東京都公式ホームページ

今後、各自治体でも、このような補助金や助成金が広まる可能性があります。また東京都においても、再開されるかもしれませんので、デリバリーや通販を行う際は、自店舗のある自治体のホームページを事前に確認して、補助金の申請を行いましょう。

コロナ流行後の新時代に備える

このような時代になるとは、筆者も全く想像しておりませんでした。筆者はウイルスの専門家ではありませんが、メディアのニュースなどの情報を見た限りですと、数年後も新型コロナウイルスが消滅することはなく、共に生存する世の中になりそうです。

その時代に備えて、飲食店ができることは

✔常連客とはSNSやメールでつながっておく
✔デリバリーや通販も念頭に入れる
✔お店の3密対策をしっかり行う

という対策が必須となってくるでしょう。つまり、飲食店は新型コロナウイルスの流行が収束した後でも、新しい時代に合ったビジネスモデルを再構築する必要があるのです。


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ABOUTこの記事をかいた人

井幡 貴司

forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。