事業者が「分割払い」を店舗やECサイトで導入する理由と方法


ユーザーに自社で高額商品も購入してもらいたいと考えている小売事業者の方は、決済メニューに「分割払い」を加えることをおすすめします。

2022年にSBペイメントサービス株式会社が実施したECサイトでの決済手段に関する調査では、消費者の一部は、「分割払いができること」が理由でクレジットカードを利用していることが分かりました

高額商品を取り扱っている小売事業者の方で、まだ「分割払い決済」を導入していない場合には、支払いメニューに「分割払い」や「ショッピングローン」などの決済サービスを導入することで、新たなユーザー層を開拓できる可能性があります

この記事では、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、店舗(リアル/EC)決済で「分割払い」を提供するメリットと導入方法について紹介します。

「分割払い」がしたいからクレジットカード決済を選ぶユーザー層

SBペイメントサービス株式会社が2022年2月に実施した、「ECサイトで物品・デジタルコンテンツを購入する際の決済手段に関する調査」では、ECサイトで最も利用される決済手段とその理由が報告されています(下図)。

◆ECでユーザーが最も利用する決済手段とその理由

最も利用する決済手段の理由

引用:SBペイメントサービス株式会社【第3弾】最新のECサイトにおける決済手段の利用実態調査結果を公開」(2022年7月6日)

赤枠で示した「分割払いができること」という回答から、「分割払いをしたい」と考えている消費者が一定数いると考えることができます。

例えば、ECサイトの支払いメニューに「分割払い」を導入する場合には、「ショッピングローン」サービスを採用するケースが多かったのですが、近年は、ユーザーが一旦クレジットカード決済で一括購入した後でも、クレジットカード会社のアプリで手軽に「分割払い」に変更できる「あとリボ」「あと分割」といったサービスも人気です。

このような背景からも、分割払いの利用が進んでいるのではないかと予測できます。

「あとリボ」「あと分割」がスマートフォンでさらに手軽に

一昔前までは、「あとリボ」「あと分割」サービスを利用するためには、クレジットカード会社への電話、または会員向けのパソコンサイトで変更手続きを行わなければなりませんでした。しかしスマートフォンが普及するとともに、クレジットカード各社が会員専用アプリを配布するようになり、ユーザーは、どこでも、手軽に、「あとリボ」「あと分割」に変更できるようになりました。

スマートフォンアプリの利便性が、消費者の分割払いに対するネガティブなイメージを払拭したことも、需要を後押ししているのではないか、と筆者は考えています。

高額商品の購入では「分割払い」のニーズが高くなる

「分割払い」の消費者ニーズが高まるのは、高額商品を購入する時ではないでしょうか。そのため、以下のような小売事業者では、分割払い決済を導入しているケースがほとんどです。

◆分割払い決済を導入している小売事業者の例(一例)

・家電
・パソコン等電子機器
・家具
・美容器具
・時計や宝飾品

「分割払い」が求められるシーンでは、「リボ払い」や「ボーナス払い」のニーズも高いと考えられるため、分割払い決済を導入する際には、「リボ払い」と「ボーナス払い」も一緒に検討すべきでしょう

店舗(リアル/EC)で分割払い決済を提供する方法

店舗(リアル/EC)で分割払い決済を提供する方法としては、主に3つの方法があります。それぞれのメリット/デメリットを以下にまとめました。

◆分割払い決済を提供する3つの方法の比較

メリット デメリット
①クレジットカード

(例:各種クレジットカード)

使用金額に応じたポイント還元プログラムがある ・分割払いの可否は利用する店舗(加盟店)とクレジットカード会社の契約によって異なる
・分割払い決済の手数料が比較的高め
・ユーザーごとに分割払いで利用できる上限金額が異なる
・店頭の場合、決済専用端末が必要
②ショッピングローン ・申込金額の上限がなく、支払い回数も長期間選択可能
・設定できる金利帯の幅が広い
・店頭の場合、決済専用端末が不要
未成年は申し込むことができない
③後払い

(例:NP後払い、後払いドットコム等)

・未成年も使用できる ・分割払いで利用できる上限金額がある
・サービスを導入できる事業者の業種に制約がある

②のショッピングローンは専用端末も必要なく、「金利0%」施策など金利設定や分割支払い回数も柔軟に設定できる為、多くのユーザー層をとりこめる可能性があります。

分割払い決済を導入するなら信販会社が提供する「ショッピングローン」を検討しよう

ネット通販(ECサイト)でも高額商品を取り扱っている店舗は多いです。筆者も最近10万円前後のプロジェクターをネット通販で購入したのですが、財布に余裕がない月は分割払いも選べたら助かるな、と感じました。同じように考える消費者は少なくないのではないでしょうか

ECサイトで分割払い決済を導入する場合に筆者が真っ先におすすめするのは、信販会社の「ショッピングローン」です。ショッピングローンを利用するメリットとして次の3つが挙げられます。

メリット①一定の利用回数まで金利手数料が無料(無金利)

「金利手数料は弊社が負担します!」という宣伝文句を、CMや通販番組などで見かけたことはないでしょうか。ショッピングローンを使用すると、ECサイトでも同様の訴求が可能になります。

ショッピングローンでは、決められた利用回数までの金利手数料は加盟店(事業者)負担となります。その分、ユーザーはお得に分割払いサービスを利用することができるので、高額商品を購入する際の心理的な負担を軽減できます。

例えば、一眼レフやミラーレスカメラなどの高額商品を販売しているキヤノンオンラインショップでは戦略的に「分割払いの金利手数料無料」を訴求しています。

◆分割払いの金利手数料無料を訴求している例(キヤノンオンラインショップ)

無金利訴求キャノン

引用(画像):キヤノンマーケティングジャパン株式会社公式通販サイト「キヤノンオンラインショップ」のバナー

メリット②長期分割払い

一般にクレジットカード決済における最長分割払(期間)回数は24回までですが、信販会社が提供するショッピングローンサービスでは長期間の支払いにも対応しているケースがほとんどです。例えば、株式会社ジャックスが提供しているショッピングローンサービスでは最大60回まで支払い回数を選択できます

分割払いになじみのない消費者は長期分割返済には抵抗があるかもしれないのですが、日頃から分割払いを活用している消費者にとっては自由に選べる選択回数の幅が広い点は魅力となり、「ローンの期間は問題がないので、月々に支払う金額を抑えたい」という消費者ニーズに応えることができます

毎月の家計に合わせて支払い負担額を選べることで、他に必要なモノを買い足したり、少し高めのグレードの商品を選択したりと、消費者が本当に希望している行動を選択しやすくなり、購買意欲の向上効果も期待できます

メリット③新しいユーザー層の獲得

特に高額商品を取り扱っているECサイトで、分割払い決済をまだ導入していない場合には、従来の一括支払いで利用しているユーザーに加え、分割払い決済があるのであれば購入したいと考えている新たなユーザー層を獲得できる可能性があります。

下図はダイソンの公式通販サイトの例です。一般に高額ブランドは購買力の高いユーザー層が多いですが、ダイソンのように認知度が高い有名ブランドでは、幅広いユーザーが購入しやすくなるように、ショッピングローンによる分割払い決済を選択できるようにしています。

◆「分割払い」の訴求でユーザーの購入決定を後押ししている例(ダイソン)

ダイソンの分割払い訴求

引用(画像):「ダイソン公式サイト」の製品(直販)ページ

このように、信販会社のショッピングローンを使用することで、ECサイトでも分割払い決済のメリットを訴求することができるようになります。

分割払い決済サービスを導入する際のクレジットカード会社/信販会社の選び方

分割払い決済サービスを提供しているクレジットカード会社や信販会社はたくさんありますが、導入する際には、加盟店手数料率(決済手数料率)に注目して十分に検討しましょう。加盟店手数料率は、事業内容(業種)、売上、規模、信用力などにより設定されます。

非公開の加盟店手数料率

加盟店手数料率は公表されておらず、事業者は加盟店に申し込み時に、カード会社や信販会社から、導入及びランニングコストの見積を取得する必要があります。サービスを導入するにあたり発生するコストは次の2つです。

◆分割払い決済サービス導入に必要なコスト

・加盟店手数料
・店頭に設置する決済専用端末の費用(クレジットカードの場合)

見積もりが提示されたら、双方にとって納得のできる条件で契約するために、検討や交渉をすることが大切です。複数社から見積を取得して、最も条件が良いクレジットカード会社や信販会社を選ぶようにしましょう。

スマホ決済サービスの決済手数料率は3.24%

スマホ決済サービスの場合には、クレジットカード決済手数料率が一律で決まっており、各サービスの公式サイトで公開されています。以下の2つのサービスでは、「分割払い」「リボ払い」「ボーナス払い」(決済手数料率は3.24%~)のすべての決済方法に対応しています。

◆「分割払い」「リボ払い」「ボーナス払い」に対応しているスマホ決済サービス

分割払い決済サービスの導入までの流れ

分割払い決済サービスの導入までの流れは、クレジットカード決済と同様です。利用するサービスごとに多少の違いはありますが、大まかな流れは以下となります。

◆分割払い決済サービスの利用開始までの流れ(①~⑥)

①事業者が分割払い決済サービスの利用申し込みをする
②事業者は、クレジットカード会社/信販会社から送付された加盟店申込書に必要事項を記入して提出する
③クレジットカード会社/信販会社は申込書を受領し審査を行う
④クレジットカード会社/信販会社は、事業者に審査結果を通知する
⑤審査が通ると、クレジットカードの場合にはクレジットカード会社から決済専用端末が届く
⑥事業者は分割払い決済の提供を開始する

⑤の手順で、すでにクレジットカード決済を契約していて決済専用端末を設置している場合には、現行のクレジットカード決済のみの契約の解約(または変更)手続きを行った上で、分割払い決済に対応した決済専用端末と置き換える必要があるので注意しましょう。

クレジットカード会社/信販会社の加盟店審査項目

加盟店審査では以下のような項目が審査されます。

◆クレジットカード会社/信販会社による加盟店審査の項目

・店舗(リアル/EC)が存在するか
・取引実態があるか
・帝国データバンクまたは商工リサーチの評点
・ホームページやインターネットの情報

上場企業でなければ収支情報は公開されていないため、事業者が申込書に記入した情報が信頼できる内容か総合的に判断されることになります。

また、特定継続的役務提供に分類される事業者にとっては導入のハードルが高くなり、審査では過去の決算書や料金表などの提出が求められます。

◆特定継続的役務提供の7つの役務(事業)

①いわゆるエステティック
②いわゆる美容医療
③いわゆる語学教室
④いわゆる家庭教師
⑤いわゆる学習塾
⑥いわゆるパソコン教室
⑦いわゆる結婚相手紹介サービス

引用:消費者庁特定商取引法ガイド|特定継続的役務提供

これらの事業では料金が5万円を超えるサービスを長期間提供するビジネスモデルが多く、契約期間中の事業者の倒産など、クレジットカード会社や信販会社側の補償リスクが高いことから、審査はより厳格になります。

※クレジットカード会社や信販会社によっては加盟店契約締結自体ができない場合もあります。

分割払い決済を導入したらPOPや口頭で積極的に告知しよう

分割払い決済を導入しただけで売上が向上するわけではありませんが、ユーザーに「分割払い決済」を選べることを知ってもらうことで購買機会を増やすことができます。例えば、店頭では支払い時に「分割払い」もできる旨を伝えるトークスプリトを徹底し、レジまわりにPOPを掲示する、ECサイトでは目立つ場所にバナーを設置するなどし、ユーザーに「分割払いも選択できる店舗」であることが伝わるように工夫することが大切です。

また、ユーザーが利用するクレジットカードによっては、「分割払い」に対応していない場合もあるため、「分割払いに対応しているクレジットカード」であれば「分割払いも選べる」ということも、分かりやすく伝えるようにしましょう。

クレジットカードによる分割払い決済の導入時に起こりやすい事例

クレジットカードの分割払い決済でよくある問い合わせ内容と応対例を3つ紹介します。大きなクレームに発展させずにユーザーの悩みを解決できるよう、自社の顧客層や企業イメージに適したトークスクリプトとオペレーションを準備し、日頃からシミュレーションしておくように心掛けましょう。

◆クレジットカードの分割払い決済でよくある問い合わせと応対例

ケース1: クレジットカードが、分割払いに対応していない場合

応対例「お客様のクレジットカードは分割払い決済に対応していないようです。詳細についてはクレジットカード会社にお問い合わせいただけますか」

ケース2:指定された回数で分割決済ができない場合

応対例「お客様のクレジットカードは〇〇回払いの指定ができないようです。別の支払い回数をお試しいただけますか」

ケース3:クレジットカードの一括払いで決済を完了した後に、「あと分割」ができないというご相談を受け付けた場合

応対例「弊社とお客様とのお取引は、ご購入時にご指定いただいた一括払いで完了しているため、『あと分割』サービスを提供しているクレジットカード会社にお問い合わせください」

まとめ

「分割払い決済」は10年以上も昔から存在するニーズであり、分割払い決済を提供することで、より多くの消費者の利用機会を増やし、新たなユーザー層を獲得できる可能性があります。

参考:日本銀行『生活意識に関するアンケート調査』(第45回)の結果 ―平成23年3月調査―」(2011年4月1日)

分割払い決済サービスの利用開始時には、ユーザーにきちんと告知し、ユーザーが実店舗とEC店舗で同じ決済手段を選択できるようにするなど、自社の事業に合った分割払い決済サービスを導入して、顧客満足度の高い店舗づくりをしましょう。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。