インバウンド需要が回復軌道に!今打つべき5つのEC施策


新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で大幅に落ち込んだインバウンド需要でしたが、世界的な感染の脅威と経済の混乱が収束しつつある2023年は回復軌道に乗り始めています。

2023年1月の訪日外国人の数は約150万人となりました。今後も増加が予想されているインバウンド需要をとらえて小売事業を拡大していくためには、ECを強化するための施策が重要になります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、回復するインバウンド需要を見据えて、帰国後の海外ユーザーを増やしてECの売上を高めるための5つの施策を紹介します。

インバウンド需要に回復の兆し、2023年1月は約150万人が来日

パンデミックの収束と円安による影響により、2022年末頃から日本を訪れる外国人観光客が増えており2023年1月の訪日外国人の数は約150万人となりました。

参考:日本経済新聞「訪日客消費が回復軌道に、1月150万人 年2兆円上積みも」(2023年2月15日掲載)

欧米やアジア諸国だけでなく、入国規制が緩和された中国人観光客の増加も予想されており、日本でもインバウンド需要への期待が高まっています

インバウンド需要を最大限に生かす5つのEC施策

今後急増するインバウンド需要にフォーカスし、実店舗だけでなくECの利用も増やしていくために有効な5つの施策を紹介します。

施策① 来店した外国人客をECサイトに誘導する

来店した外国人客にECサイトもあることを伝えて、帰国後も気に入った商品をいつでも購入できることを知ってもらいましょう

以下は、実店舗に外国語を話せるスタッフがいない場合や、十分なコミュニケーションを取る時間がないという場合にも有効な方法です。

◆来店時にECサイトやSNSアカウントの存在を伝える方法

・POPで店舗内に掲載する
・リーフレットを作成し、配布する
・包装紙や袋に印刷する

ECサイトやSNSアカウントを記載したツールを用意することで、店舗で商品購入を決めきれなかったり、ブランドに好感を持ってくれたりした外国人客が、宿泊先や帰国後に、SNSやECサイトを訪問してくれる可能性を高めることができます。

以下のようなメッセージを添えてURLやQRコード、SNSアカウントを明記します。

◆Web誘導用メッセージの例文(英語版)

・Please follow us on SNS.
・Please check out our e-commerce site where you can order from overseas.
・Please sign up for our newsletter by scan the QR code!

外国語のメッセージ文は、翻訳ツールやChatGPTなどのAIサービスを利用して作成することもできます。簡潔で分かりやすい文章を作成するようにしましょう。

施策② 海外向けSNSを運用する

日本向けだけでなく、海外向けのSNSを開設し、商品やブランドの魅力を発信しましょう。

◆販促でよく利用されているSNS(日本・海外向け)

① Instagram
② Twitter
③ Facebook
④ WeChat(ウィーチャット)
⑤ Weibo(ウェイボー)

④、⑤は日本ではなじみが薄いかもしれませんが、海外ではよく利用されているSNSサービスです。

「① Instagram」だけを運用しているという企業も多いですが、中国では「⑤ Weibo」の利用が一般的です。対中国ビジネスを拡大したいという場合には、アカウントを開設しておくべきでしょう。Weiboで法人アカウントを開設する場合には申請手続きが必要になりますので注意しましょう(個人アカウントの場合は申請不要です)。

海外向けのSNSアカウントでは、自社商品の紹介と一緒に日本ならではの文化や風景などの写真や動画を投稿することで、外国人の目にとまりやすく、興味を持ったフォロワーが拡散してくれる可能性が高まります。そのため、日本への旅行を検討しているSNSユーザー(すなわち、潜在顧客)にもリーチしやすくなります

海外向けのSNSアカウントでは、筆者の経験上、宣伝投稿は2割程度にとどめ、外国人が思わずフォローしたくなるような情報を投稿することをおすすめします

ECサイトの事例ではないのですが、以下の横浜市のInstagram公式アカウントでは、訪日外国人向けに、観光地をアイコニックな画像で紹介しています。

◆横浜市のInstagram公式アカウント

横浜市インスタ

参考:横浜市Instagram公式アカウント(@findyouryokohama_japan)

施策③ ECサイトの多言語対応

訪日外国人が帰国後、ECサイトに初めてアクセスした際に表示されるのが日本語サイトだった場合、閲覧や購入のハードルが高くなるため、すぐに離脱してしまうでしょう

強い興味を持ってくれた一部のユーザーは、翻訳ツールを駆使して利用してくれるかもしれませんが、支払い手続きが必要なECでは不安も大きくなります。帰国後も、いつでも安心してコミュニケーションとショッピングを楽しんでもらうためには、多言語対応サイトを用意しておくべきです。

海外専用のECサイトを新たに作るのもよいですが、運用コストが倍になることを考えると、まずは既存の日本語サイトの多言語対応から始めることをおすすめします。

◆多言語対応のWebサイトの例(シチズン時計のブランドサイト画面)

多言語対応サイト

引用(画像):シチズン時計株式会社PROMASTER(プロマスター)ブランドサイト」より筆者が一部加工

施策④ 利用者が多い決済サービスの導入

サイトの表示を多言語対応しただけでは、購入につなげることはできません。安心して購入まで進んでもらえる支払い方法を提供する必要があります。

日本では、クレジットカード決済やコンビニ払いなどが多いですが、海外では以下の電子決済がよく利用されています。

◆海外でよく利用される電子決済サービス

・PayPal(主に欧米)
・Alipay(中国)
・WeChat Pay(中国)

新たに導入する決済サービスを検討する際には、自社のECシステムで対応が可能かどうかを調査するようにしましょう。

施策⑤ EMS(国際スピード郵便)を利用した海外配送

海外配送には、船便や各社が提供する海外配送サービスを利用することができますが、比較的手軽かつ低料金で利用できるサービスが日本郵便の「国際スピード郵便(EMS)」です。越境ECでの海外発送でよく利用されています。

◆EMS(国際スピード郵便)の主な特徴

・120か国以上への配送が可能
・30kgまでの書類・荷物に対応
・配達状況を追跡できる

参考:日本郵便株式会社「EMS(国際スピード郵便)

EMSは、世界中の郵便局が加盟している郵便ネットワークのようなもので、日本での発送窓口および輸送を日本郵便が担当し、現地での配達は各国の郵便局が担当します。そのため、国や地域ごとに配送品質が異なる点には留意する必要があります。

もし、海外ユーザーから配送に関する問い合わせを受け付けた場合には、EMSの追跡サービスなどを利用して配送状況を確認しながら対応しなければなりませんので、あらかじめ越境ECの運用フローには対応手順を組み込んでおくようにしましょう。

海外向けEC事業(越境EC)を始めよう!

パンデミックの収束にともない、2023年以降の訪日外国人の数は一気に増えることが予想されます。インバウンド需要の回復にあわせて越境ECを始める場合には、以下の対応が不可欠です。

◆越境ECに必要な機能

・ECサイトの多言語対応
・海外で多く利用されている決済サービスの導入
・海外配送

近年は、越境ECに必要な機能や運用代行サービスを兼ね備えた専用サービス、越境ECに特化したECサービス、商品発送時の海外転送サービスなども提供されており、それらのサービスを活用することで、手軽に越境ECを始めることができます。

例えば、既存のECサイトに越境EC専用サービスを導入すると、海外からアクセスしてきたユーザーだけに外国語で代理購入に関する情報をポップアップ表示できるようになり、越境ECにおける代理購入(支払いや配送までの全て)の運用代行サービスを利用できます

また、商品の配送には海外転送サービスを利用するのもよいでしょう。

海外転送サービスを利用して越境ECを始めたいとお考えの場合は、インターファクトリーが提供するECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」も他社とあわせてご検討ください。ebisumartでは、標準機能として実装されている海外転送サービス「WorldShopping BIZ for ebisumart」や、その他の提携サービスを利用して越境ECサイトを運営できます。

参考: 「ebisumart(エビスマート) │ 提携サービス │ 越境EC・多言語対応」、株式会社ジグザグ「WorldShopping BIZ

ebisumartの海外転送サービス、国内・海外向けECサイトの開設に関するご相談は、公式ホームページからお気軽にお問い合わせください。

「ebisumart(エビスマート)」お問い合わせページ


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。