EC事業者のための店舗受取サービスの5つの成功事例を紹介


ECサイトと実店舗を運営している事業者の中には、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れる「店舗受取サービス」の導入を検討している方もいるのではないでしょうか?

店舗受取サービスを提供することで、送料を抑えたいユーザーの購入判断を後押しすることができるだけでなく、ECユーザーに実店舗へ足を運んでもらうきっかけにもなり、新たな顧客接点を生み出すことができます。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、店舗受取サービスのEC大手5社の成功事例やメリットについて解説します。

EC大手5社の店舗受取サービス事例

まずは、店舗受取サービスのEC大手5社の成功事例から紹介します。

事例① ヨドバシカメラ

家電量販店大手のヨドバシカメラは、 13年連続で顧客満足度1位を獲得(※)していることが示す通り、常に顧客にとっての利便性を追求しております。それは家電製品だけに留まらない豊富な商品の品揃えから、他社サービスを圧倒する配送スピードまで、顧客ファーストの様々なサービスに現れております。

ヨドバシカメラの店舗受取サービスは、在庫を保有する全国の店舗一覧が表示され、各店舗ごとに受取可能な日時まで表示されるため、近くに複数の店舗がある場合など、最速で受け取れる店舗を選択することができます

◆ヨドバシカメラの受取店舗選択画面

ヨドバシカメラ受取店舗選択画面

ここまでの情報が瞬時に一覧化できるのは、時間をかけてオムニチャネルのシステムを構築し、在庫の一元管理などECと実店舗の融合に注力してきた賜物と言えるでしょう。

ヨドバシカメラ 13年連続で満足度1位 旅行、衣料品店など10業種91企業・ブランド調査(財経新聞)

事例② ユニクロ

下表はユニクロの、2019年8月期のチャネル別の平均年間購入金額です。

数値を見ると、ECと実店舗を併用しているユーザーの購入金額と購入回数は、他のユーザーと比べて圧倒的に高いことが分かります。

◆ユニクロの国内における購入チャネル別の平均年間購入単価と平均年間購入回数(2019年8月期)

出典:株式会社ファーストリテイリング│2019年8月期 期末決算説明会資料「ECを本業に。」(2019年10月10日発表)より筆者作成

ECサイトや公式アプリで購入手続きを完了した商品を受け取りに来店したユーザーが、ついでに店内を見てまわることで、他の商品を店舗で購入したり、実物をチェックして後からECで購入したり、といった購入機会が増えていると考えることができます。

ユニクロでは、店頭で公式アプリやLINEの登録をおすすめするなど、ECと実店舗との相乗効果を生み出すことで、さらなる売上を実現しています。

事例③ ワークマン

衣料品大手のワークマンは、新規出店を増やすとともに、今後5年間でECサイトの宅配サービスを廃止し、商品の店舗受取サービスに一本化する方針を打ち出しています。

ワークマンのビジネスモデルは「高品質・低価格」を強みとしており、商品の送料を負担することが大きなコストとなります。そのような背景もあり、同社では、将来的には宅配サービスを廃止し、店舗受取に一本化したいと考えており、2022年4月時点で944ある店舗数を、2030年までに1,500店舗まで増やす方針を掲げています

参考:ITmedia Newsワークマン、ECの宅配やめ店頭受け取りのみへ 今後5年で移行」(2022年4月26日掲載)

事例④ ココカラファイン

ドラッグストア大手のココカラファインでは、ECサイトでも薬を購入する際に薬剤師に相談することができます。そのため、店頭で薬を受け取る際にも、ECサイトで発行された注文番号を伝えるだけで商品を受け取ることができます。

薬剤師の説明が必要な第一類医薬品も、ECサイトで購入することができる仕組みを構築し、店舗受取だけでなく、1,980円以上で送料無料のサービスを提供するなどして、ユーザーの利便性向上に努めています。

◆ココカラファインの店舗受取サービスの動画

 

また、一部の店舗では「Amazon Hub」の設置をはじめており、Amazonで購入した商品を、ココカラファインの店頭で24時間いつでも受け取ることができます

このような取り組みを通じて、再配達で生じる経済や環境への負荷の緩和に貢献できるとともに、他サービスのユーザーを自社ユーザーにつなげる可能性が生まれます。

事例⑤ イオン

イオンネットスーパーの店舗受取サービスは、サービス取扱店舗が限られておりますが、商品の受取場所を「サービスカウンター」「駐車場」「店内専用ロッカー」から選択できることが特徴です。

スーパーの店舗受取サービスは、下記の観点からユーザーメリットの大きいサービスと言えるでしょう。

・複数の商品を探して広い店内を時間をかけて移動する必要がない
・レジが混む時間帯でもレジに並ぶ必要がない
・売り切れの商品を求めて他店に行く必要がない

特にネットスーパーにおいては、配送の時間がかかるといった点がネックと言えます。なぜなら、日本の食文化では、鮮度へのこだわりや「買い置き」の習慣があまりないためです。大抵の場合、ネットスーパーで購入した食材は、当日にでも消費し始めたいはずです。

スーパー業界で店舗受取サービスが普及することで、ネットスーパーにおける上記のような弱点も解消され、より食品ECサイトの利用が進むのではないかと考えられます。

店舗受取サービスを導入するメリット(ユーザー/事業者)

店舗受取サービスの導入には、ユーザー側にも事業者側にもそれぞれメリットがあります。

ユーザー側のメリット

メリット① 選択肢が増える

一人暮らしや、日中に外出していることが多いユーザーにとって、宅配での商品受取がストレスとなる状況もあります。

近年は置き配や宅配ボックスなども増えてきていますが、不在時の置き配には不安があったり、宅配ボックスがなかったりするユーザーもいます。そのようなユーザーにとって、店舗受取を選択できることはとても魅力的です。

メリット② 実際の商品を確認してから受け渡しできる

買い物をする時には、肌触りやサイズ感、色みなどを実物で確認したいというニーズは高いです。店舗受取であれば、購入後の商品を店頭で実際に確認し、イメージと違った場合には、その場でサイズ変更や返品の相談・手続きを行うことができるので、ユーザーは安心して購入しやすくなります

このことは事業者側にとっても、オンライン経由での商品の交換・返品におけるリスクを低減することができます。

メリット③ 送料を節約できる

大手ECでは送料無料のサービスも多いため、それらのサービスを体験している現代のECユーザーにとって「送料」は負担と感じられてしまいます。送料がかからないのであれば、ショッピングや散歩がてら近くの店舗に足を運ぶことは気にしないという人もいるでしょう。

事業者側のメリット

メリット① 実店舗への集客効果が期待できる

店舗受取を可能にすることで、店舗への集客施策となります。

ユニクロの事例のように、ECユーザーが実店舗に足を運ぶきっかけとなるため、「ついで購入」や「後から購入」による売上向上にも期待できます。

メリット② 顧客接点を増やしてファン化を促進する

ECと実店舗で同じサービスを利用できたり、チャネルをまたいで一連の手続きを完了できたりすることで、ユーザーの利便性が向上し、リピート購入やファン化の促進につながります

事業者側でも、ECと実店舗それぞれの強みを共有してサービスに落とし込むことができるようになるため、部門の枠にとらわれることなく、積極的な施策を推進できるようになります。

メリット③ 配送コストの削減

送料は配送会社に支払うコストでしかありませんから、送料がかからないことは、ユーザーだけでなく事業者にとっても大きなメリットになります。

もちろん配送会社に支払う送料だけでなく、梱包作業などにかかる人件費や諸費用の削減にもつながります。

店舗受取サービスの導入に必要なこと

店舗受取サービスを導入するためには次の3つの取り組みが必要になります。

① ECサイトの注文画面のカスタマイズ

ECサイトの注文画面のカスタマイズが必要になります。注文画面の受取方法で、「店舗受取」を選び、ユーザーが受け取りを希望する店舗を指定できるようにします

複数の店舗を運営している場合は、ユーザーの住所情報やスマートフォンの位置情報などを利用して、最寄りの店舗を初期表示するといった工夫をすると良いでしょう。

特に意識すべき点は、店舗受取サービスがあることをユーザーに気付いてもらえるようUIを工夫するという点です。店舗受取サービスはユーザーの選択肢が増えるとともに事業者側にもメリットがあるため、店舗受取サービスの案内は目立つ形で掲載することをおすすめします。

注文画面だけでなく、トップページやカテゴリページ、商品ページでも、店舗受取サービスが可能であることを伝えて、ユーザーの購入機会を広げましょう。

② ECと実店舗の在庫を一元管理

もし、先ほどの事例で紹介したワークマンのように、店舗受取を選択したユーザーの商品を店舗在庫から引き当てる場合を前提とするなら、ECサイトと各店舗の在庫を一元管理しなくてはなりません。

また、規模や運用方法によっては、システム連携などによる自動化を検討する必要もあります。効率的な運用を実現するための仕組みと環境を構築しましょう。

③ 店頭でのオペレーションの準備

店頭で商品をスムーズに受け取ることができない場合、企業に対するユーザーの信頼度が下がり、店舗受取サービスだけでなく、すべてのサービスを利用してもらえなくなる可能性もあります

店舗受取サービスを導入する際には、事前にオペレーションマニュアルなどを作成し、すべてのスタッフが対応できるようにすることが重要です。店舗受取時の基本的なオペレーションは、注文番号をもとにECシステムで注文内容を確認し、商品を受け渡すという流れとなるので、ECシステムの操作講習などの実施も検討しましょう。

まとめ

店舗受取サービスは、ECと実店舗の双方にとって売上を伸ばすチャンスをもたらします。出店エリアと出店数が多いほど優れた効果が期待できるため、店舗受取サービスを開始する際は、出店計画もあわせて検討すべきです。

弊社のクラウド型のECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」では、店舗受取サービスに対応したECサイトも構築することができます。

サービス事例や詳しい情報は公式サイトで紹介していますので、興味のある方は、ぜひご覧ください。

ebisumart(エビスマート)公式ホームページ


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。