ECで電話注文機能を実装する前に押さえたい7つのポイント


ECサイトを運営している事業者様の中には、ECサイトを閲覧しながら電話で問い合わせをし、そのまま電話注文するユーザーに対して手間を感じている方も多いと思います。本来は、ECサイト上で購入してほしいところですが、電話で問い合わせをしてくるユーザーはさまざまな不安や疑問を抱えています。不安や疑問を抱えている方の中には「電話の問い合わせからそのまま買いたい心理を持つユーザー」が一定数いるのは仕方がありません。

しかし、電話注文は売上を伸ばす以外にも「顧客満足度を高められる」というメリットもあるので、無視することもできません。そして、電話注文が多い場合は、電話注文を効率良く入力できるECシステムを導入してオペレーターの負担を減らす必要があります。

本日は、インターファクトリーでマーケーティングを担当している筆者が、EC事業者による電話注文で必要なポイントを解説いたします。

EC事業者が電話注文を受けるメリットとデメリット

ユーザーから考えると、電話で問い合わせ、疑問や不安を解消し、そのまま商品を購入できる電話注文は、ありがたい購入方法と言えます。また、PCやスマートフォンのリテラシーが高くないユーザーにも、注文しやすい購入方法と言えます。

それでは、EC事業者側のメリット・デメリットはどうなのか?いったん整理してみます。

メリット①注文数を増やせる

購入方法を広げることで注文数を増やすことができます。例えば数万円もする高額商品を購入する場合、ユーザーは疑問や不安が解消されないと、購入に踏み切ることができません。そのときに電話ですぐに問い合わせることができれば、ユーザーは疑問や不安が解消され、安心して購入することができ、事業者は注文数を増やすことができます。

メリット②顧客満足度を高められる

ユーザーをECサイト上で接客するための、レコメンド機能やチャットボット機能のあるWEB接客ツールなどがサービス展開されてはいますが、やはり電話による人対人の接客が最も良い顧客接点であることは間違いありません。

ユーザーの悩みや不安を聞き、商品の専門家としてアドバイスや商品知識を回答することで、顧客満足度を高められることが、電話注文を受ける大きなメリットとなります。

なぜならECサイトの売上の多くはリピーターによるものであり、顧客満足度を高めることは、リピーターを増やすことにつながり、売上を伸ばすことにも大きく影響を与えるからです。

メリット③商品改善につながるユーザーの声が直接聞ける

ユーザーの声は、提供側の視点では分からないような改善点にまで気付かせてくれるので、良い商品やサービスを作るためには欠かせないものです。アンケートフォームやメールで「ユーザーの声」を収集しようとしてもなかなか集まりませんが、電話であれば、ユーザーから直接聞くことができ、改善のヒントを容易に集めることができます。

また、商品の改善に至らなくとも、ECサイトの表記の改善につながることも多くあります。例えば「スマートフォン対応と書いてあるが、Androidは大丈夫なのか?」というユーザーからの問い合わせがあれば、不安を解消するために「AndroidもiOSも対応」とするだけで、注文数が変わってくることもあるからです。

デメリット①オペレーターの負担

電話注文での最も大きな負担は、1注文当たりのオペレーターの拘束時間が長いことです。購入希望商品の在庫確認に、配送先住所などのヒアリングを含めれば、1回の受注処理で15分以上の時間を要することもあります。

デメリット②在庫の引き当てリスク

電話注文に対しても、ECサイトで管理している在庫の引き当てを行わないと「在庫がないのに注文を受けてしまった!」という売り越しになりかねません。そうならないように、電話注文を受けた時に在庫の確認と引き当てをしっかり行わなくてはなりません。

また、電話注文を紙などで受け付けてから、後で基幹システムに取り込む運用は「入力作業の二度手間」になり、ヒューマンエラーが発生する可能性も高まり、効率はますます悪くなっていきます。

デメリット③電話口でユーザーからクレジットカード情報を聞くための対応が必要

ECサイトが悪意のあるハッカーなどから攻撃を受けて、顧客情報やクレジットカード情報を抜き取られてしまう問題が後を絶ちません。それにより2018年6月に「改正割賦販売法」が施行され、クレジットカード情報の適正な管理が定められました。

ECサイトがこの法律にすでに準拠し、適切にクレジットカード情報を取り扱っていたとしても、電話注文を新たに受け付ける場合は、電話口で対応するオペレーターを含めて、この法律に準拠した対応を整える必要があります。

電話注文をECシステムで対応するための3つのシステム構築方法

電話注文にはメリットも多数ありますが、オペレーターの負担が増えたり、ヒューマンエラーが増えるなどのデメリットもあります。ですから、その負担を減らすためにも、ECシステムで「電話注文」からの受注処理をできるようにすべきです。電話注文をECシステムで受注処理するためには

・顧客情報
・配送先情報
・在庫情報
・商品マスタ

これらの情報をオペレーターが電話対応しながら管理画面で利用できる「電話注文機能(代理注文機能)」があることが理想です。この機能があれば、電話をかけてきたユーザーを過去の履歴からすぐに特定し、電話しながら「在庫確認」や「代理注文」を行うことができるために、オペレーターの負担を大きく減らすことができます。

電話注文ができるECサイトを構築する方法は3つあります。

◆ECシステムに電話注文機能を実装する3つの方法

①電話注文機能があるASPのECシステムを選ぶ
②カスタマイズ可能なECシステムを利用して、電話注文機能を実装する
③フルスクラッチで電話注文機能付きのECシステムを作る

もし、年商が1億円未満のEC事業者であれば、①の電話注文機能があるASPのECシステムで問題はないでしょう。なぜなら年商が1億円未満であれば、電話注文の件数もさほど多くなく、ASPが用意している電話注文機能で十分対応できる可能性が高いからです。

年商が1億円を超える中・大規模のEC事業者であれば、電話注文の件数も多くなるために自社専用の電話注文機能が必要になります。ECシステムが②のカスタマイズ可能なECシステムであるパッケージや追加開発のできるebisumart(エビスマート)のようなクラウド型であれば、電話注文機能を開発しデータ連携を行うことができます。

③のフルスクラッチは、自社運用に完全にマッチしたECシステムを構築できるメリットがあります。しかし、費用と時間がかかり過ぎるためデメリットが大きく、最近のECシステム構築の中でも、中・大規模のECシステムでは、フルスクラッチよりも費用と開発期間を抑えられる②の方法が主流になってきています。

電話注文もECシステムで受注処理を行う7つのポイント

それでは、電話注文ができるECシステムで押さえておきたい7つのポイントを解説していきます。これから自社のECシステムに電話注文機能の実装を検討している場合には、上司にプレゼンする際、システム開発費用に見合う効果があることを伝えるためにも、事前に把握しておくべき7つのポイントとなります。

ポイント①得意先様へのおもてなし対応

電話注文が入った際に、オペレーターがユーザーの過去の購入履歴を参照することで、より丁寧な対応が可能となります。過去の履歴から

オペレーター「前回注文いただいた商品の○○はいかがでしょうか?」

といった、親しみのある顧客対応が可能になります。また、今回購入希望商品の他に過去の履歴から「消耗品」があれば、「そちらもご一緒にいかがですか?」といった提案をすることで、買い忘れも防止することができます。まさに実店舗で、顔なじみの顧客に接客しているのと同等の対応が可能となります。

ポイント②顧客情報の照会・入力の削減

電話注文を受け付ける時に、オペレーターが顧客情報を聞き取り、名前や電話番号などを一から入力するのは負担になります。ECサイト化することで、一度でも注文したことのある顧客であれば、過去の情報を活用することでオペレーターが顧客情報を入力する手間を削減することができます。また、

「3月24日 受電 ○○の商品について質問をいただく」

といったユーザーとの通話内容を残しておくことができれば、別の日に違うオペレーターが再度電話を受けた際に「前回問い合わせた商品を買いたい」と言われた場合でもすぐに対応することができるなど、サービスの質が向上します。

つまり、顧客情報をどれだけ記録できるかが、電話注文機能において重要なポイントとなります。

そして、電話注文の時に、ユーザーの電話番号をECシステムで照会し、該当する電話番号や住所などで本人確認を行い合致していれば、その情報を今回も活用することで入力する手間も削減できます。

ポイント③商品マスタの照会・商品合計金額の自動計算

電話注文では、ユーザーが希望する商品の「商品コード」や「商品名」を調べる作業や、金額計算など、手作業で行うことが多くあります。しかし、顧客情報と同様にECシステムで管理している商品マスタを参照することで、商品名や単価・合計金額を入力する手間が削減され、数量を入力すれば小計も自動計算することが可能です。

またECサイト側にボリュームディスカウントキャンペーンなどの施策があれば、そのキャンペーンロジックも電話注文側で自動で適用されるために、オペレーターの負担や、キャンペーンの適用忘れなどのオペレーションミスも減らすことができます。

ポイント④在庫情報のリアルタイム照会

電話注文とECサイトの在庫を一元管理していない場合、「売り越し」のリスクが高まります。「売り越し」を回避するために、リアルタイム照会で電話注文とECサイトのタイムラグをなくし、在庫情報を共有することが重要です。ECサイトの注文でも、電話注文でも、ECシステムで管理している在庫数に対し加算・減算を行うことで在庫の管理を一元化します。

電話注文終了時に、注文を受けた数量分、ECサイトの在庫をリアルタイムに減らすことができるので、ECサイト経由での注文での「売り越し」を回避することが可能です。

ポイント⑤配送先情報の照会・入力の削減

ECサイトでも、「ギフト注文」であったり「BtoBでの拠点配送」などのシチュエーションでは配送先が複数あることが多く、配送先情報を複数管理する機能が必要となります。電話注文でもオペレーターの負担を大きく減らすことができるため、複数配送先を登録できるようにしておく必要性があります。

ポイント⑥顧客ごとの特殊契約条件に対応

「顧客ランクに応じて販売価格を変えている」
「得意先ごとに販売価格を変えている」
「顧客によって販売商品を変える」

など特殊な要件がある場合に、ECサイト側にその条件を登録しておくことで、電話注文時にも、ランクに応じた顧客対応ができます。誰が電話対応を行っても、顧客ごとのランクに合わせた取引条件で注文を受けるために重要となります。

ポイント⑦ユーザーにより決済方法を変える場合

ユーザーによって利用できる決済方法を変えている場合は、オペレーターが選択できる決済方法をコントロールすることが重要です。例えば、リピーターだけにコンビニ決済を認めている場合、初めての購入者に対してはオペレーターがコンビニ決済を選択できないようにします。また、得意先に対して掛け払いを認めている場合には、オペレーターが掛け払いを選択できるようにすることで、オペレーションミスを減らします。

つまり、ECサイトでの決済方法をユーザーの注文実績によって変えている場合は、電話注文時においても、同様の条件で決済させることが必要となります。

電話注文でのクレジットカード決済をどのように受け付けるべきか?取るべき3つの方法

ECサイトへの不正アクセスによるクレジットカード情報の漏えいが後を絶ちません。そのため2018年6月に「改正割賦販売法」が施行され、クレジットカード情報の適正な管理が定められました。

EC事業者がクレジットカード情報を保持・処理することについて厳しい制限が敷かれたため、電話口でクレジットカード情報を安易に聞き、それをECなどのシステムに登録することができませんので、電話口でクレジットカード番号をヒアリングし処理を行うには十分な注意が必要です。EC事業者が電話注文の際に、クレジットカード番号をヒアリングして決済処理を行うには以下の3つの方法が考えられます。

方法①IVR(音声自動応答)による対応

商品の注文受け付けはオペレーターが電話で行い、クレジットカード番号をユーザーからヒアリングするタイミングで自動音声に切り替えて、ユーザーは電話機のボタンでクレジットカード番号を入力する仕組みです。クレジットカード番号のヒアリングをオペレーターが行わないことで、クレジットカード情報の非保持化を実現することができます。

この手法は、テレビや雑誌通販などの電話注文が多い事業者のコールセンターなどで利用される仕組みです。IVR導入の初期・月額コストもそれなりにかかる手法ですから、ECサイトでの注文が多く、電話注文が少ない場合の導入は現実的ではありません。

参考:IVR(音声自動応答)決済ソリューションDGフィナンシャルテクノロジー(旧:ベリトランス)

方法②オペレーターの対応場所をPCI DSSに準拠させる

PCI DSSとは国際カードブランド5社が策定したクレジットカード業界における国際セキュリティ基準であり、安全なネットワークの構築やカード会員データの保護など非常に高いセキュリティ基準を満たすための、クレジットカードのセキュリティに特化した規格となります。

電話注文を受けるコールセンターなど、オペレーターの対応場所をPCI DSSに準拠することにより、適切にクレジットカード情報を扱っているということになるので、オペレーターが電話口でクレジットカード番号を聞き取ることが可能になります。

しかし、この規格に準拠するための準備に、EC事業者は数千万円の費用が必要となります。この手法も注文の多くをコールセンターで対応する事業者には必要な方法ですが、電話注文が少ない事業者向けの方式とは言えません。

関連記事:ECサイト事業者行うべきセキュリティ対策を徹底解説!PCIDSSへの準拠が必要な理由とは?

方法③「ルミーズ」や「Pay TG」のクレジットカード情報非保持化サービスの端末を利用する

電話注文を受ける際に、自社のECシステムでクレジットカード情報を保持しないように「ルミーズ」や「Pay TG」が提供する「カード情報非保持化サービス」に対応した端末を使用することで、クレジットカード決済を電話口で受け付けることができます。これらのクレジットカード情報非保持化サービス端末を導入すれば、社でクレジットカード情報を持たず、しかも低コストで、電話注文でのクレジットカード決済を受け付けることが可能となります。

参考:カード情報非保持化ソリューションルミーズ株式会社)、カード情報非保持化サービス Pay TG株式会社リンク

この仕組みがあれば、電話注文の際も顧客のクレジットカード情報を保持することなくクレジットカード決済を受け付けることができるため、「改正割賦販売法」に遵守することができます。

繰り返しになりますがEC事業者は、クレジットカード情報を自社のECシステムに入力するようなオペレーションは、法令違反であり、かつクレジットカード情報が漏えいする大きなリスクとなるので、クレジットカード情報は必ず適切な扱いを行うようにしてください。

ECの電話注文のまとめ

電話注文で押さえておきたいポイントを紹介いたしましたが、これらの機能をそろえたECシステムで運用を行うことで、電話注文のデメリットを払拭するだけでなく、リアル店舗やECサイトに近い購入体験が可能となります。

そこで、さらに着目したいのは、いかに「オペレーターの入力しやすい管理画面になっているか」になります。ECシステムでの照会・登録作業が煩雑で時間のかかるものでは意味がありません。いかに入力項目が少なく、画面を遷移させる回数が最小限になっているかがポイントです。

以上の点を踏まえて、ECシステムの導入や、あるいは既存のECシステムにカスタマイズを行い、電話注文機能を実装してみてください。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。