店舗受取サービス「BOPIS(ボピス)」導入の5つのメリット


「BOPIS(ボピス)」は「Buy Online Pick-up In Store」の頭文字から付けられた略称で、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取ることができる購入方法です。BOPISはユーザーと企業の双方にメリットがあるため、コロナ禍を機に多くの企業が関心を寄せています。

◆BOPIS導入による5つのメリット

① ユーザーは送料を負担しなくてよい
② ユーザーは指定した時間に商品を受け取りに行くことができる
③ ユーザーは店頭での在庫切れを心配しなくて済む
④ 企業はECから実店舗に送客できるようになる
⑤ 企業は顧客接点とコミュニケーションの機会を増やせる

BOPISの導入には、ECサイトで受取店舗を選択・指定するための機能を追加し、ECと在庫管理のシステム連携を実装する必要があります

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、「BOPIS(ボピス)」を導入しているEC大手3社の事例と5つの導入メリットを紹介します。

BOPISの導入で売上拡大が期待できる

ECと実店舗の両方を運営している企業であれば、BOPISを導入することで顧客満足度の向上と売上拡大が期待できます

次に示す表は、BOPISを導入済みの国内ユニクロの2019年度の売上実績です。

◆国内ユニクロのチャネル別年間購入金額・回数(2019年8月期)

ユニクロのユニファイドコマース事例

出典:株式会社ファーストリテイリング|2019年8月期 期末決算説明会資料ECを本業に。」(2019年10月10日発表)に掲載されている表に基づき筆者作成

上表では、ECサイトと実店舗を「併用」しているユーザーの平均年間購入金額と回数が突出しています。どうして、マルチチャネルユーザーの数字がここまで大きくなっているのでしょう。大まかに考えただけでも、次のような行動の理由が思い付きます。

マルチチャネルユーザーの平均年間購入金額と回数が高い理由(推察)

・ECサイトで商品を購入して実店舗に受け取りに来た際、店頭で見かけた別の商品を「ついでに購入」するユーザーが多いのではないか。
・商品を自宅で受け取ることが難しいユーザーは、受取方法を選択できる、つまりBOPISを導入しているECサイトでの購入を優先するのではないか。

いずれにしても、ユーザーのライフスタイルに応じた利便性を提供でき、集客力と売上の向上も期待できるBOPISは、オムニチャネル戦略の有効な施策の一つであることが分かります。

EC大手3社のBOPIS導入事例

まずは、すでにBOPISを導入しているEC大手3社の事例を見ていきましょう。

BOPISを導入するためにはECと実店舗の両方を運営している必要があります。今回紹介する3社は、いずれも全国規模で多店舗展開している企業です。

BOPISの受取カウンターとなる実店舗の数とエリアが多ければ多いほど、ユーザーは宅配サービス(自宅受け取り)を利用した時よりも早くECで購入した商品を手にできる可能性が高まるなど、BOPISのメリットも拡大します。

事例① ユニクロ

ファストファッションブランド最大手のユニクロのECサイトでは、購入商品1点から店舗受取を利用できます。一部の店舗では朝10時までに注文すれば、最短で当日の17時以降に商品を受け取ることができます。

店頭で購入商品を受け取る際に、試着や裾上げのオーダー、在庫があればサイズ交換などにも対応してもらえるため、ECサイトでの購入で、商品の着心地やサイズ感に不安のあるユーザーも、安心して購入手続きに進むことができます

参考:ユニクロ公式オンラインストア|ユニクロ当日店舗受取りについて(関東・関西一部地域限定)

ユニクロで店舗受取サービスを利用する場合には、ECサイトの購入手続き画面で「1.お届け方法」→「ユニクロ店舗受取り」を選択(下図の赤枠部分)し、任意の店舗を指定します。

◆ユニクロの店舗受取機能(受取店舗の選択)

ユニクロ店舗受取購入画面

引用(画像):ユニクロ公式オンラインストアの「購入手続き」画面

事例② ワークマン

ワークウエア専門店のワークマンのECサイトでも、ユニクロと同様に購入商品1点から店舗受取サービスを利用できる上、店舗受取サービスには、購入商品の裾上げ無料サービス(商品点数の制限無し)の特典が付きます

また、一部の店舗では朝7時から商品を受け取ることができるようにするなど、出勤時間が早い運送業界や土木・建築業界のユーザーニーズをとらえた、ワークマンならではのサービスを提供しています。

ワークマンでは、店舗受取サービスはオンライン会員限定のサービスとして提供しており、ユーザーは会員登録後に、希望する受取店舗をあらかじめ登録しておくことができます。

参考:ワークマン公式オンラインストア|店舗受け取りサービス

◆ワークマンの店舗受取機能(受取店舗の選択)

ワークマン受取店舗選択画面

引用(画像):ワークマン公式オンラインストア|購入手続きの「お受け取り店舗を選択」画面

事例③ おうちでイオン イオンネットスーパー

「おうちでイオン イオンネットスーパー」では、ネットスーパーで購入した商品を、場所(受取方法)と日時を指定して受け取ることができ、受取方法は次の3種類から選択できます。

◆「おうちでイオン イオンネットスーパー」で購入した商品の店舗受取方法

① 指定カウンターで受け取る「カウンターピックアップ」
② 自分の車に乗ったままで受け取る「ドライブピックアップ」
③ 指定した店内のロッカーで受け取る「ロッカーピックアップ」

任意の時間に購入商品を取りに行くだけなので、混雑している夕方などの時間帯でも素早く商品を受け取ることができます

参考:おうちでイオン イオンネットスーパー|店舗受取りサービス

このサービスを利用することで、食品ECでの「買い物をしてから届くまでにタイムラグがある」という問題と、混雑している店頭での「商品を買うまでに時間がかかる」という問題が解消されるため、ユーザーは効率的に買い物をすることができます。

おうちでイオン イオンネットスーパーの店舗受取機能(受取方法・店舗・日時の指定)

イオン受取店舗選択画面

引用(画像):おうちでイオン イオンネットスーパー|購入手続きの「[通常配送便]店舗・受取り先:受取り日時設定画面」

BOPISを導入する5つのメリット

BOPISを導入することで、ユーザーと企業の双方にさまざまなメリットが生まれます。今回は5つのメリットを紹介します。

メリット① ユーザーは送料を負担しなくてよい

店舗受取サービスは、ユーザーが店頭に足を運んで商品を受け取るため、自宅までの配送料がかかりません。企業側では在庫状況によっては、指定された店舗に商品を輸送する必要がありますが、既存の物流網で対応できるためコストを抑えて運用することができます。

また、一般にECで送料無料キャンペーンなどを実施する場合には、企業のコスト負担は大きくなりますが、BOPISであればいつでも「送料無料」で提供できるため、ユーザーの購入意欲の促進効果も期待できます。

メリット② ユーザーは指定した時間に商品を受け取りに行くことができる

店頭で買い物をする場合ユーザーは、営業時間内に店に行き、店内を回って商品を選び、レジで支払いをするまでの時間を確保しなければなりません。しかし、店舗受取サービスを利用することで、「ECサイトで24時間いつでも好きな時間に商品を選び支払いを済ませておき、仕事帰りやすき間時間などで素早く受け取る」ことができます。

BOPISを導入することで、「店内を回ってゆっくり買い物をする時間が取れない」という人や「宅配で荷物を受け取ることが難しい」という人にも、ユーザーのライフスタイルに合わせて効率の良い買い物体験を提供できるようになるのです。

メリット③ ユーザーは店頭での在庫切れを心配しなくて済む

BOPISではECシステムと在庫管理システムの連携が不可欠となるため、ECで商品を購入する時点で在庫の有無を確認できるようになります。そのため、「わざわざ店頭まで来たのに商品が売り切れていた!」という事態が起こる心配はありません。

店頭での商品の取り置き・取り寄せサービスと同じような感覚で、実店舗に行く前に商品の在庫を確認して購入できるので、店舗に行けば必ず購入した商品を受け取ることができます。

また企業側では、全チャネルの在庫をリアルタイムで管理できるようになることで、在庫管理、発注管理を最適化することが可能になります。

メリット④ 企業はECから実店舗に送客できるようになる

商品を受け取るためにECユーザーが実店舗に来店することで、店頭の商品を「ついで買い」してもらえる可能性が生まれます

日頃からECサイトで写真を目にしている商品であっても、店頭で実物を見たり手に取ったりすることで商品の魅力に気づき、購買意欲がかきたてられるということは少なくありません。特に店舗受取を利用しているユーザーの場合には、次回の来店がいつになるか分からないため、来店時の限られた時間で購入の意思決定が行われます。

Webチラシ配信サービスの「Shufoo!」が主婦を対象に実施した「ついで買い」に関するアンケート調査では、回答者の96.6%が「ついで買い」をしたことがあり、37.9%が来店時に毎回「ついで買い」をしていると回答しています(下図を参照)。

◆Shufoo!のインターネットアンケートの「ついで買い」の実態(「Shufoo!」利用者調査、調査期間:2019年7月12日~7月15日)

ついで買いグラフ

引用(図表):Shufoo!「スーパーでの『ついで買い』の実態!購入を誘発する条件とは」(2019年9月18日掲載)

このことからも、BOPISは小売業界のECと実店舗の共存共栄を実現するための鍵となると言えるでしょう。

メリット⑤ 企業は顧客接点とコミュニケーションの機会を増やせる

BOPISはユーザーがECで購入した商品を店頭で受け取るサービスなので、1回の買い物における顧客接点は、ECと実店舗の2つになります。

ユーザーがサービスやスタッフに対して抱く好感度は、企業やブランドに対する愛着に大きく影響します。そのため、ECでは便利で使いやすいサービスを、実店舗では対面ならではのサービスを提供し、ユーザーに快適な買い物体験を重ねてもらうことで、ファン化を推進していくことも大切です。

BOPISを導入することで、企業はユーザーにECと実店舗を行き来するきっかけとメリットを提示できるようになります

BOPISの導入には、店舗受取機能と外部システム連携機能が不可欠

BOPISシステムを導入するためには、以下のいずれかの方法が考えられます。

方法① 店舗受取機能と外部システム連携機能を備えたASP-ECを利用する

ASP(Application Service Provider:アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスを利用することで、比較的手頃な月額料金でECサイトを運用できます。標準機能あるいはオプションメニューで、店舗受取と外部システム連携の機能が提供されているサービスもあるため、ASP-ECを検討する際には、以下の機能の有無も確認するようにしましょう。

◆ASPサービスでBOPISを導入するために必要な機能(例)

・店舗選択機能(選択画面)
・外部サービスとの連携機能(Googleマップ等)
・外部システム連携機能(在庫管理システム等)
・出荷管理機能(出荷状況通知)

ASPサービスの機能を利用する場合には、ASPサービスの仕様に合わせて、自社の業務フローを構築または見直す必要があります。

また、現在ASP-ECを利用している場合は、BOPIS機能の提供有無やカスタマイズの可否、現行システムでBOPISを実現する方法などについて、ベンダーに相談・確認してみるとよいでしょう。

方法② カスタマイズが可能なECシステムを利用する

年商1億円以上の大規模なECサイトの場合には、以下のいずれかの方法で構築します。

大規模なECサイトの構築方法

・パッケージ
・カスタマイズ可能なクラウドEC
・フルスクラッチ

「パッケージ」「カスタイズ可能なクラウドEC」の場合は、ASPサービスと同様に標準機能またはオプション機能でBOPIS機能が提供されているかどうかを確認しましょう。BOPIS機能を持たない「パッケージ」「カスタイズ可能なクラウドEC」または「フルスクラッチ」の場合は、新たに店舗受取機能と外部システム連携機能をカスタマイズで開発する必要があります

まとめ

ECと実店舗を運営している企業であれば、オムニチャネル戦略の施策の一つとして、BOPISの導入を検討すべきです。ユーザーの利便性の向上と企業の売上拡大が期待できます。

インターファクトリークラウド型ECプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」は、BOPISにも対応しています。クラウドの最新のセキュリティ環境でECに特化した多彩な機能を利用・実装できます。

詳しくは、公式サイトをご確認ください。サービスの詳細や事例紹介も掲載しています。

「ebisumart(エビスマート)」公式サイト


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。