DtoCを検討する前に知っておくべきDtoCの【成功事例と失敗事例】

DtoC(D2Cともいいます)はDirect to Consumerの略で、メーカーが、商品を仲介業者や店頭に商品を出すことなく、ECサイトを構築し、直接ユーザーに販売するビジネスモデルのことを指します。

特にアメリカのスタートアップ企業が、SNSやブログでアピールすることで大成功したモデルで、日本企業にも注目されているビジネスモデルです。

DtoCのモデルが成功しはじめた理由はSNSによって、企業が広告を使わずに数十万人以上のフォロワーと直接コミュニケーションをとれる時代になったため、店舗販売だけに頼る必要がなくなり、企業がユーザーに直接コミュニケーションをとる方法が確立したことによります。

では、このDtoCのモデルを日本企業が上手く行うことはできるでしょうか?予算のある大企業においては成功確率は高いのですが、ブランド力が強くない中小規模の企業では、DtoCはカンタンではないと推察します。なぜなら企業のEC担当者は、WEBでの成功体験やノウハウが豊富ではなく、ECサイトを構築しても、マーケティングに大きな課題があるからです。

本日はebisumart(インターファクトリー)でWEBマーケティングを担当している筆者が、DtoCの成功事例と失敗事例を紹介し、DtoCの成功のためのポイントを詳しく解説いたします。

DtoCのアメリカの成功事例「Glossier(グロッシアー)」!月間140万人が訪れるコスメブログが熱狂的なファンを囲い込む!

日本ではなじみのないメーカーですが、ニューヨーク発のコスメブランドの「Glossier(グロッシアー)」はDtoCの成功事例としては有名です。

Glossierの創業者兼CEOのエミリーワイズ氏はもともとはファッション誌のVOGUE社にスタイリングアシスタントとして勤務した経験があり、その経験をもとに2010年から下記のファッションブログを運営し、月間140万人が訪れる大人気ブログになりました。

エミリーワイズ氏のファッションブログ:INTO THE GLOSS

このブログでユーザーと意見を交わすうちに「ユーザーの意見を取り入れた、コスメブランドを立ち上げたい!」と思い、エミリーワイズ氏はGlossierを2014年に起業し、米国のコスメ市場で急成長を遂げるにいたりました。

ブランドを短期間で作ることができたのは、ブログの熱狂的ファンのコミュニティがいたことです。下記のグラフをご覧ください。

◆Glossierのブログからサービスサイトへのトラフィックの流れ

グラフデータ元:https://www.cbinsights.com/research/

創業からたった4年でアメリカのコスメ市場に影響をあたえるほどの成長ができた最大の理由は、コスメ好きの熱狂的ファンをブログで囲っていたためです。2014年の創業とともに、ブログユーザーがサービスサイトにも訪れ、爆発的な集客を可能にしていたのです。

さらに、ブログ経由のユーザーの方が、ブログを経由していないユーザーより購入率が40%も高いことがわかりました。これは単にブログで100万人以上のユーザーを集めているのではなく、”コスメ好き”の見込客の囲い込みに成功していることがわかります。

「インスタ映え」しやすい仕掛けとInstagramの徹底活用

Glossierはブログだけではなく、Instagramを徹底活用したマーケティングを仕掛けて成功しています。GlossierのInstagramのフォロワーは1200万人を超えます。ではどのようにInstagramを活用して、フォロワーを増やしているのでしょうか?その一例を下記で紹介します。

◆GlossierのInstagramの仕掛け
①Glossierの製品にインスタ映えしたくなるステッカーを同梱
②ユーザーがそのステッカーを使って、Glossierのタグ(もしくは製品のタグ)をつけてInstagramに投稿
③GlossierのInstagramアカウントがユーザーのInstagramをリポストしてユーザーが大満足
④他のフォロワーもそれを見て、Glossier製品での投稿をする

◆Glossierの製品「BODY HERO」のステッカーでInstagramしたユーザーの投稿をGlossierアカウントでリポストしたもの

 

このような「インスタ映え」しやすい仕掛けをつくり、Glossierはフォロワーを1200万人まで増やしております。ブログを合わせてInstagramとこれだけの影響力を持っていれば、テレビCMなどにかける広告費用は必要ありません。

しかし、忘れてはいけないのが、Glossierの商品自体が優れている点です。ユーザーの意見を徹底的に取り入れ研究開発してきた商品であることです。単にブログとSNSのマーケーティングを追及したものではありませんし、商品が支持されないと、ブログもInstagramも拡散することはありません。

このように、DtoCにおいては、店舗や小売りに頼らずにブランドを確立していくことが重要であり、そのためにはユーザーから支持されるブランド力と、自分達が主体的に行う集客が欠かすことはできません。

DtoCが必要になる背景はAmazon!ユーザーの52%はAmazon検索から商品検索をスタート

このようなDtoCモデルが必要になる背景の一つは、SNSによってメーカー自身が消費者にコミュニケーションをとることが可能になったことですが、もう一つ大きな要因はAmazonの存在です。アメリカのデータとなりますが、2016年時点でネット通販にて商品を購入する人の52%がAmazonで検索をはじめるデータがあります。

◆「ネットでの商品購入時、どこから検索を始めるか?」の調査結果でAmazonが1位

金融会社Raymond Jamesの調査

今後も消費者がAmazonで商品購入をする流れは続くでしょう。メーカーにとってみればこれは大問題です。今後インターネットで商品を売るにもAmazonを頼らなければなりませんし、Amazonに出店すると、Amazon内の競合他社が多く、価格競争にならざるを得ません。メーカーの利益に多大な影響を与えてしまうからです。

そうならないためにも、自社でファンを囲い、自社のECサイトで購入させる販売チャネルを作らなければ、企業の存続も危うくなる可能性もあるからなのです。

DtoCの失敗事例「商品力がなく、誰も売れないと思いながらも会社の方針なので、仕方なくECサイトをリリースした体験談」

筆者自身も、今から5年以上前ですが過去に所属した会社でDtoCを任されて失敗した経験があります。経営幹部が、海外で買収してきた企業の商品を日本でECサイトを作り販売する方針を決意し、その担当に私がアサインされました。

しかし、商品を見て愕然としました、海外ユーザーには受け入れられるものの、商品の機能やコンセプトが全く日本人に合わないものでした。しかし、経営幹部の方針に変更はないため、私は「こんなもの誰が買うんだ?」と思いながらも、ECサイトを作り、プロモーション用のランディングページをメンバーやWEBコンサルティングの会社とともにプロジェクトを進めました。

結果、半年以上の期間、数千万円をかけてECサイトをリリースしましたが、月間に10件も販売することができず大失敗で終わりました。この時の敗因は二つあると筆者は振り返ります。

◆DtoCが失敗した2つの要因
①商品力の欠如
②他力本願だったEC担当者

第一の要因は商品力です。経営トップがある日突然買収した海外の企業の商品を売らなくてならない!という前提がありきでした。日本人に受け入れられるかどうか?という判断もなく、そのまま日本市場に持ってきました。

アメ車が日本で成功していないように、国が異なれば、商品もその国で受け入れられるようにコンセプトや機能の修正が必要です。しかし、商品ありきでの日本でのローンチが決定しておりました。

商品力がないにも関わらず、ECサイトを展開することの最大のデメリットは、EC担当者やプロジェクトメンバーのモチベーションが下がることです。経営トップから言われたことなので動かないといけませんが、担当者達は「誰がこんな商品を買うのか?」という疑問を持ちながら仕事せざるを得ません。当時の私はプロジェクトに対して後ろ向きな気持ちになっていたことを思い出します。

そうなるとEC担当者だった私も他力本願(第2の失敗要因)な仕事になってしまい、WEBコンサルティングの会社にプロモーションを任せましたが、WEBコンサルティングの会社もプロモーションは他の会社に丸投げするなど、プロジェクトの誰もが本気ではありませんでした。

その結果、ほとんど売れないECサイトがリリースされ、経営幹部の誰もがこの部門を議題に上げないようになり、その後、EC部門はお荷物部門に成り下がりました。このようなことは私にだけ起こった特殊なケースだと思いません。日本企業がよく陥るケーススタディだと思います。

これからDtoCで成功するための日本企業の3つのポイント

それでは先ほどの事例も踏まえて、日本の企業がこれからECサイトでDtoCを成功させるためのポイントを3つ取り上げてまいります。

ポイント①自社の商品力

まずDtoCを検討する前に、自社の商品について客観的に見てみる必要があるでしょう。なぜなら先のGlossierの例でもわかるとおり、単にマーケティングで成功したわけではなく、Glossierのコスメ商品自体がユーザーの意見を徹底的に取り入れた、ユーザーに支持された商品であったという点です。

DtoCとは「Direct to Consumer」であり、企業がユーザーに直接販売チャンネルを持つことであり、そこには販売代理店のリコメンドや、優れた販売スタッフのセールストークは介在することがないため、問われるのは商品力です。逆説的に考えると、圧倒的な商品やユニークな商品であれば、SNS時代の昨今、何もしなくても勝手にユーザーがSNSでリコメンドしてくれます。

例えば、工事現場用ブランドのマキタのBlueToothスピーカーですが、本来ターゲットとしていた法人顧客ではなく一般ユーザーのSNS上でよく話題に上がっています。この話題はマキタ自身が狙ったものではなく、商品のレビュー記事がキッカケで、TwitterやWEBメディアで取り上げられた結果です。優れた商品はそれだけでマーケティングになり、プロモーションを必要としないケースがあるのです。

そう考えると、企業のWEBマーケティングは、商品企画の段階から始まっており、商品企画とWEBマーケティングを分けて考えるのではなく、ユーザー視点から商品企画を練り込みことが必要になってきます。

ポイント②自社のブランド力

おそらくこれからDtoCを目指す企業はブランド力が強い企業ばかりではないでしょう。DtoCで成功するためには、なぜブランド力が必要なのでしょうか?それはインターネット上でのユーザーの接触点に関係します。

例えば筆者が大好きなNIKEの「エア・ジョーダン」という靴のブランドを例にとります。筆者はエア・ジョーダンが大好きですから、スマホのGoogle検索やAmazonでの検索窓に「エア・ジョーダン」と入力して、NIKEが運営するECサイトにたどり着きます。当たり前のユーザー行動ですが、これを前提にしているのが「エア・ジョーダン」のブランド力です。

しかし、ブランド力がない企業が数千万円をかけて、オシャレで使いやすい最新のECサイトを作ったとします。ECサイトを作っただけではブランド力がないため、誰も検索して訪れませんから、広告が必要になります。そしてブランドを認知させるための広告費は安くはなく、テレビCMやYahooへの出稿など同様に数千万円が必要になります。

しかし、これらの広告は費用の割に一過性になりがちで、継続してファンを囲い込むための施策にはなりません。またリスティング広告なども、昨今、どのジャンルにおいても単価が高騰しており費用対効果が悪くなっておりますし、リスティング広告はCVを生む広告ではありますが、そもそもファンを作る広告ではありません。

ブランド力がない企業が、DtoCで成功させるためには「熱狂的なファン」を作っていく仕掛けが必要になります。それには、一過性ではないブログやSNSを駆使したWEBマーケティングが必要になってくるのです。

ポイント③自社のWEBマーケティングノウハウ

予算が限られた中小規模の企業がDtoCを成功させるためには、ブログやSNSを駆使したWEBマーケティングで集客を成功させなくてはなりませんが、ほとんどの企業には経験のあるWEBマーケティングの担当者が不足しているのが現状です。

もちろんWEBマーケティング担当者を企業もアサインしますが、その多くが社内の他部署で経験を積んだ社員であることが多く、WEBマーケティングの知識が豊富ではありません。またWEBマーケティングスキルを持った人材は大手企業を目指したり、独立・起業することが多く、転職市場での採用は困難です。

そうなると、広告代理店にDtoCのWEBマーケティングを依頼することになりますが、メーカー側でもWEBマーケティングの経験がないと、広告代理店の選別がうまくいきませんし、広告代理店の多くは仕事を受注するフェーズにはエースの人材を当てますが、受注後は新卒に近い社員が担当していることは珍しいことではなく、経験がないと、これを見破ることができないのです。

まして、SNSで見込客を増やしていくマーケティングや、ブログ集客はWEBマーケティングの中でも難易度が高く、それをほぼ確実に成功させる優れた代理店など聞いたことがありません

まとめ「DtoCの成功の鍵はEC担当者の本気度にかかっている!」

以上、アメリカのDtoCの成功事例から、筆者の失敗事例をおりまぜて、DtoCを日本で成功させるためのポイントを解説しました。アメリカではDtoCを成功させている企業の多くはスタートアップです。その理由は、創業が浅い企業には、まだ社内の制約が少ないため、SNSやブログを使って、ユーザーの体験を軸にWEBマーケティングを行いやすい体制があることです。

ある程度歴史がある日本企業がこれから、DtoCを成功させるのは容易ではありません。なぜならWEBマーケティングでの成功事例やノウハウがないので、その集客に誰もが手こずりますし、日本企業では商品企画とマーケティングの部門が分けられていることが多く、別々に動いてもヒットが生まれにくい体制だからです。

ですから、DtoCを成功させるには、EC担当者の本気度が試されます。広告代理店やコンサルまかせではなく、担当者自身が商品を熟知し、そして商品を使う顧客のフィードバックを受け取り、「自社の商品をどう改善すればいいのか?」といったDtoCの商品開発を自らリードしていかなくてはなりません。

そして、SNSやブログで集客を行うと決めたら、担当者自身でWEBマーケティングに関する情報を集め、自ら施策を実行していくことです。SNSやブログのマーケティングの基本は、ライティングや投稿テクニックよりも「お役立ち情報」です。つまりその分野においてユーザーが喜ぶ情報を発信し続けると、自然とユーザーは集まりますが、キャンペーンやセールス情報だけ発信しても、ユーザーに支持されません。

そのためには、商品においては誰よりも知識がないといけませんし、日々ユーザーの動向を注意深く見なくてはなりません。ですからEC担当者がどこまで本気なのか?にDroCの成功の可否がかかっているのです。

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