ECサイトに与信管理機能を実装する2つの方法を解説


BtoB(対企業)向けECシステムを導入または再構築する場合には、与信管理機能をどのように実装するかについても検討しているのではないでしょうか?

一般に、ECサイトでは以下①②のいずれかのタイミングで与信管理(主に与信審査)処理が実行されています。

①新規会員(取引先)登録が行われた時
②購入ボタンがクリックされた時

現在のECサイトでは、②「購入ボタンがクリックされた時」に与信審査を実行する仕様が主流です。

また、ECシステムに与信管理機能を組み込む方法には、自社で運用中あるいは新規構築した与信管理システムと連携する方法と、決済代行会社が提供している「企業間後払い決済サービス」を使用する方法があります。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、BtoB向けECサイトで与信審査を実行するタイミングと機能を実装する方法について解説します。

BtoB向けECサイトで与信審査を実行するタイミングは「新規会員(取引先)登録時」か「購入ボタンクリック時」の2つ

ECサイトで与信審査処理が実行されるタイミングは以下の2つです。

◆ECサイトで与信審査処理が行われているタイミング

①新規会員(取引先)登録が行われた時
②購入ボタンがクリックされた時

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①新規会員(取引先)登録が行われた時

新規の取引が少なく、取り扱っている商品の価格帯が高額なECサイトや、与信管理システムを自社運用している企業などでは、新たに取引先登録が行われるタイミングで与信審査を行うケースが多いです。

①では、以下のステップで与信審査を行います。

◆新規会員(取引先)登録時の与信審査処理のステップ

【ステップ1】取引を希望する企業が、ECサイトで新規会員(取引先)登録を行う。
【ステップ2】EC事業者は、登録された会員情報に基づき与信審査を行い、審査結果をユーザー企業に通知する。
【ステップ3】 EC事業者が、与信審査が通った企業のアカウントを発行する。

【ステップ2】の審査結果通知では、与信審査が通った場合に与信枠を取引先に伝えるか否かをEC事業者側で決定できます。与信枠の通知に関する標準ルールはないため、EC事業者の方針や業界の商習慣などによって任意で決めることができます。

【ステップ3】までが完了した段階で、企業は取引先としてECサイトを利用できるようになります。

すでにお気付きの通り、①のタイミングでは与信管理機能の中の与信審査処理だけを実行しているという点にも留意しておきましょう。

例えば、取引で与信枠を超える金額の購入希望を受け付けた場合には、取引先に次のようなメッセージを通知(または表示)する必要があります。

◆与信枠超過時の案内文(例)

・「一度のご購入で○○万円を超える購入はできません」
・「与信枠を超えているため請求書払いをご利用いただけません。クレジットカード支払いのみご利用いただけます」

そのため、与信審査処理を会員登録時に実行する場合でも、②「購入ボタンがクリックされた時」に、与信枠との照合処理を実装する必要があります。

②購入ボタンがクリックされた時

新規の取引が多く、商品価格もそれほど高額ではないECサイトでは、このタイミングで与信審査処理を実行している場合が多いです。新規会員(取引先)登録時には与信管理は行わないため、企業は登録するだけでECサイトのアカウントを取得できます。与信審査処理は、取引先企業が購入ボタンをクリックしたタイミングで都度実行されることになります。

与信管理機能を実装する方法としては、「企業間後払い決済サービス」を使用するケースが多いため、ここでは「企業間後払い決済サービス」の使用を前提として説明します。

②では、以下のステップで与信管理を行います。

◆購入ボタンクリック時の与信審査処理のステップ(企業間後払い決済サービスの場合)

【ステップ1】取引先企業が、ECサイトで商品を選び購入ボタンをクリックする。
【ステップ2】ECシステム(EC事業者)が、契約している企業間後払い決済サービスに決済情報を送信する。
【ステップ3】企業間後払い決済サービス(決済代行会社)は、リアルタイムで受け取った情報に基づき与信審査を行い、ECシステムに審査結果を返信する。
【ステップ4】ECシステム(EC事業者)は、与信が通った場合には購入依頼を受け付けて購入手続きを完了する。与信が通らなかった場合には決済エラー画面などを表示し、購入手続きを中断する。

企業間後払い決済サービスを運営する決済代行会社は、ECシステムから渡された取引先企業データと自社の膨大な顧客・取引データを使用して、与信審査を瞬時に行い、審査結果をリアルタイムでECシステムに返信します。

企業間後払い決済サービスでは、請求書発送から代金回収、未入金対応までのすべてを代行・保証してくれるサービスもあり、不払いが発生した場合は決済代行会社が支払いを代行してくれるため、EC事業者は督促対応の負担と未払いのリスクを回避できます。

企業間後払い決済サービスは、次のようなEC事業者の方には特におすすめできる与信管理手法と言えます。

✓新規取引の発生率が高い
✓少額取引が多く発生する
✓自社で与信管理を行いたくない
✓決済業務を効率化したい
✓未払い料金の回収負荷を軽くしたい

ただし、EC事業者のリスクが少なくなる分、企業間後払い決済サービスの手数料は高めです。決済代行会社に支払う手数料を考慮した上で利益が見込める場合には、EC事業者と取引先企業の双方にとって、利便性の高い与信管理手法と言えるでしょう。

企業間後払い決済にはさまざまなサービスがあるので、導入前に複数の主要な決済代行会社に見積もりを依頼するなどし、比較検討を十分に行うようにしましょう。

自社の与信管理システムを使用する方法(大手企業向き)

与信管理を自社で行っている企業の場合には、企業間後払い決済サービスではなく、自社の与信管理機能をシステム連携で実装する方法も考えられます。

その場合、企業によっては独立したシステムではなく、基幹システムや顧客管理システムの機能として組み込まれているケースもあるため、自社の何のシステムで、どの部門が与信管理を運用・管理しているのかを確認しましょう。

連携に必要な機能の開発自体は決して難しくはありません。与信管理システムとECシステムの間で取引先企業情報と審査結果を送受信できるようにし、さらにECシステム側に、与信管理の問い合わせを実行するタイミングや審査結果の通知機能などを実装することで実現できます。

とはいえ、既存の主要システムとの連携は影響範囲も大きく、場合によっては数百~数千万円という費用がかかってしまうこともあるため、大規模企業などで採用されることが多い方法です。

BtoB向けECサイトでありがちな誤入力問題

筆者の経験則では、BtoB向けECサイトを利用する企業ユーザーに多い注文間違いの傾向として、「注文桁数の誤入力(例えば、商品の数量「10」をタイプミスで「100」と入力してしまうなど)が多く、特にデジタル化が進んでいない取引先企業や担当者が多忙な状況で発生しがちである」という印象です。

定期的な取引で通常と異なる数量の注文や、さほど消費されることのない商品の大量注文など、EC事業者が異常に気づいた場合は、取引先企業に確認して受注前に修正する、という運用を行っているケースも少なくありません

誤入力を防ぐためには、BtoB向けECサイトで入力している時にユーザーが間違いに気付けるよう、画面表示やアラートなどの入力サポートの仕組みを組み込むことも重要です。

誤入力問題は、企業間後払い決済サービスを使用する場合も同様に起こります。

せっかくなので与信管理機能の導入と一緒に、ECサイトの購入手続きにおけるユーザビリティや視認性についても再確認してみることをおすすめします。

すべての与信管理業務がサービス化される未来

あくまで筆者個人の見解ですが、決済代行会社が提供する企業間後払い決済サービスが普及することで、企業は自社で与信管理する必要がなくなるため、与信管理部門を持たない企業が増えるのではないかと予想しています。

また、決済代行会社でも人間が介入することなく、AI(人工知能)だけで与信管理プロセスを完結できるようになるかもしれません。

それらが実現すると、決済代行会社を含むすべての企業で、与信管理業務に専任担当者を配置する必要がなくなります

企業はそれぞれが強みとする事業に注力し、企業間で必要な役割を補完し合うことで、より質の高いサービスが提供される未来が訪れるかもしれません。

不確実な未来の可能性の一つとして、現在の業務効率化にも効果的な「企業間後払い決済サービス」などの専門サービスを取り入れた業務フローやビジネスモデルを構築してみてはいかがでしょうか?

クラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」は、企業間後払い決済サービス連携機能を標準提供しています。また、既存の与信管理システムとの連携実績も豊富です。与信管理機能を備えたBtoB向けECサイトの構築にお悩みの方は、ぜひ検討してみてください。

「ebisumart」のBtoB向け機能に関する資料は、下記の公式サイトでダウンロードできます。

BtoB向けECサイト 構築・導入(ebisumart)


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。