食品ECの3つの課題とAmazon・Yahoo・楽天等の4社の取り組み


経済産業省が2018年4月に公開したデータによると、BtoCにおける食品・飲料酒類業界の市場規模は1兆5,579億円で、この分野のEC化率はたった2.41%となります。日本の全産業のEC化率である5.79%と比べると食品業界はEC化が進んでいない業界と言えます。また、食品業界のEC化が進んでいないのは日本だけでなく、アメリカ・欧州・中国などの経済大国でもあまり進んでおりません。

食品業界のEC化が進まない理由は3つあると筆者は考えますが、その中でも大きな課題は、食品の鮮度を保って、全国のエリアに配送するためには、食品に特化した大きな物流拠点が必要なことがあげられます。

この点は、Amazonや楽天などのインターネット大手企業が食品ECに進出し、独自の物流拠点を構築するといった戦略を打ち出しており、食品ECのサービスの裾野は広がりつつあります。

本日はインターファクトリーで、マーケティングを担当している筆者が、食品ECについて詳しく解説いたします。

日本の食品EC市場規模とEC化率の推移(2013~2017年)

それでは、食品ECの市場規模とEC化率の推移を見てみましょう。下記のグラフと表をご覧ください。

データは、経済産業省の最新の調査結果より引用:平成 29 年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

食品業界の商取引市場規模は64兆円(2017年実績)と推定されている巨大産業ですが、日本国内のEC化が進んでおらず、たった2.41%しかありません。EC化が進んでいない理由は3つあります。

◆食品業界でEC化が進まない理由

①手に取って鮮度が良いものを選びたい需要があり、ECサイトと相性が悪い
②スーパーやコンビニの利便性に、食品ECサイトが勝てない
③ネット事業者の配送料負担

それでは、それぞれについて詳しく解説いたします。

①手に取って鮮度が良いものを選びたい需要があり、ECサイトと相性が悪い

例えば、家電ECサイトであれば「型番が同じであれば、どこで買ってもクオリティーが変わらない」という傾向があるため、家電業界とECサイトは相性の良いジャンルと言えます。その証拠に家電ECのEC化率は30.18%とかなり高い数字です。

それに比べると、野菜や魚・肉といった生鮮食品は、手に取って鮮度や産地を確かめる方が多く、ECサイトでは鮮度を確認しづらいため、ECサイトよりもスーパーなどのリアル店舗で買い物をするユーザーが多いのです。

それを裏付ける調査結果があります。下記は、消費者が食品ECに期待することをまとめたアンケート結果です。とても良いアンケート結果なので、この記事をあわせてご一読ください。

下記データ引用先:消費者が食品ECに求めること…約3割が「生産者や商品の情報をもっと提供して欲しい」

赤い枠を見ると、約3割の方が「生産者や商品の情報をもっと提供して欲しい」と答えており、消費者は食品に鮮度や産地の情報を強く求めていることがわかります。

また生鮮食品は、鮮度を保ち、早くユーザーのもとに配達する必要があります。鮮度の良い状態で、より大きなエリアにおいて配送を行うためには、食品に特化した独自の物流拠点を持つことが必要です。こういった物流拠点構築は大手企業しか着手することができないのも、EC化を妨げる大きな原因の一つです。

一方で、嗜好品である地方の名産食品に関しては

「すでに食べたことがあって美味しい!」
「良い素材だから、食べたい!」
「口コミで評判だから!」

といった理由で、ECサイトで購入するユーザーも多いですが、あくまで嗜好品であるため食品業界のEC化率に大きな影響を及ぼしておりません。

こういったことから、食品EC化率をあげるには、生鮮食品のECサイトの利用率を高める仕組みや物流拠点の構築が必要なのです。

②スーパーやコンビニの利便性に、食品ECサイトが勝てない

そもそも、ユーザーはECサイトの利便性が高いから活用するものです。例えば、Amazonユーザーが多く、圧倒的シェアを獲得しているのは、住所もクレジットカードも登録されており、「ポチッ」とボタンを押すだけで、買い物ができて利便性が良いからです。

しかし、食品に関してはいうと、ほとんどのユーザーは家から歩いて数分の場所や通勤途中にスーパーやコンビニがあるため、リアル店舗の利便性が高く、すぐに生鮮食品を手に入れることができます。

もちろんECサイトでもカンタンに食品を買うことはできますが、配送に時間がかかることや、鮮度を確かめられない点を考えると、すぐ購入することのできるリアル店舗の利便性にはかないません。

利便性の高いファミマやローソンが始めた、デリバリーで自宅まで配送してくれるネットスーパーがありますが、課題が発生しております。次に解説します。

利益が低く儲からないため、ECから撤退するネットスーパーも出現

下記記事によると、ネットスーパーに進出していた「ファミリーマート」や「ローソン」が相次いでネットスーパーから撤退をしました。

参考記事:ファミマ、ローソンが撤退。現場が限界を迎えていた「ネットスーパー事業」の実態

この記事によると、一回あたりの配達コストは高コストであるにも関わらず、単価の低い商品を注文に応じて、売り場からピッキングを行って配達をするのですが、さらに下記のようなユーザーからの要望が、備考欄に書かれており、

ユーザーのリクエスト例「曲がっていないキュウリ」
ユーザーのリクエスト例「脂身の少ない牛肉」

店舗からピッキングする際に配達員の手間が非常にかかります。このような状況にも関わらず、ネットスーパーの利用者数は少ないために、ビジネスモデルが成り立たないのです。

しかし、ネットスーパーには大きな可能性がありますので、こういった課題を解決し、利益が出る仕組みや体制を構築しなくてはならず、どの事業者もまだ手探りの状況なのです。

③ネット事業者の配送料負担

Amazon Primeや楽天市場の「あす楽」などは、条件を満たせば配送料が無料になりますが、実際にはコストをネット事業者が配送料を負担しており、無料ではありません。しかも、佐川、ヤマト、日本郵便各社が値上げに踏み切ったことから、EC事業者への影響は大きく、今まで配送料無料としていたサービスも、次々に廃止になっております。

参考記事:EC業界に訪れた送料値上げの“春闘”の現状――「もう持って行かないぞ」との圧力も

こういった背景からも、ユーザーはまとまった量の食材を買わないかぎりは、スーパーやコンビニなどで買った方が、配送料がかからないため、リアル店舗に価格競争力でも劣ってしまい、食品ECを使うユーザーが増えづらい状況なのです。

ネットスーパー事業の各社の取り組み

それでは、食品ECの状況を踏まえた上でネットスーパーとしての各社の取り組みを解説いたします。

①Amazonフレッシュ

2017年4月にAmazonは「Amazon フレッシュ」という生鮮食品や牛乳、卵、豆腐から日用品まで、毎日に欠かせない食品を中心に17万点以上の商品の取り扱いを決めました。配送エリアは東京、千葉、神奈川の一部のエリアに限られており、その物流の中心となるのが「Amazon川崎フルフィルメントセンター」です。

この拠点の特徴は、6つの温度帯で食品を管理しており、食品によって最適な温度で管理できるのが特徴です。このサービス普及させるためには、食品に最適な物流拠点が全国に必要になるため、普及には時間がかかります。

Amazonフレッシュでは「鮮度や賞味期限保証サービス」を設けており、ユーザーの不安を下げるよう努力しておます。その結果、Amazonフレッシュの会員数は、下記記事によると、9か月間で2倍以上に増えていることがわかります。

参考記事:アマゾンフレッシュ/6温度帯で食品管理、賞味・消費期限保証も

また、この記事にある通り、人気ランキングの1位と2位が「牛乳」と「水2L」であることを考えると、リアル店舗から自分で家に持って帰るには「重量が重い」商品がECサイトで好まれており、こういった点は食品ECならではの利便性と言えます。

②Yahooショッピング(LOHACO(ロハコ)及び IYフレッシュ)

Yahooとアスクルは元々提携関係にありましたが、2015年5月にYahooがアスクルの株式41.46%を取得し、アスクルを連結子会社としました。

Yahooの狙いとしては、BtoBにおいて優れた物流とマーチャンダイジング機能があるアスクルと提携を深めることで、Yahooのインターネット露出力に、アスクルの物流が加わればAmazonに対抗できる勢力となります。

アスクルが持つ個人向け日用品ショッピングサイトの「LOHACO」が、Yahooショッピングにも出店を始めました。LOHACOの強みは、1時間単位で配送できる「効率的な配送」の仕組みです。これにより、通常15%もある再配達率を2%までに抑えて効率を高めているのです。

参考記事:再配達率2%を実現 アスクルの「効率的な配送」の仕組みとは 

そして、LOHACOでは生鮮食品の提供をセブン&アイHDの「IYフレッシュ」が担っています。下記サイトによると、IYフレッシュのオーダー単価は1.4倍で、リピート率は2倍とLOHACO内でも実績が上がってきております。

参考記事:「IYフレッシュ」のオーダー単価は1.4倍、リピート率は約2倍[「LOHACO」ユーザーとの比較]

やはり、生鮮食品を扱うためにはAmazonのような食品に特化した物流拠点が全国に必要になります。残念ながら、この取り組みは「新宿区と文京区」に限られており、まだまだ限定的なサービスです。※2018年11月現在

しかし、Yahooという日本一のポータブルサイトと、優れた物流を持つアスクルのタッグは、今後の食品ECへの普及に期待が持てる取り組みと筆者は考えます。

③楽天西友ネットスーパー

2018年10月にウォルマート配下の西友と楽天が合同で運営する「楽天西友ネットスーパー」がオープンしました。全国に展開する西友の拠点を利用できるほか、千葉県柏にネットスーパー専用の物流拠点を設けたことで、生鮮食品の配送を可能にしております。

Amazonフレッシュの17万点と比べると2万点と、少ない印象ですが、それでも全国16都道府県に対応している点は、Amazonフレッシュの東京・千葉・神奈川よりも上回ります。

◆赤いエリアが楽天西友ネットスーパーの対応エリア

画像引用:楽天西友ネットの配送エリアについて

広範囲にこのサービスが可能な理由は、西友の拠点が全国にあるためです。また、西友の親会社が米国でAmazonと小売業で覇権を争っている「ウォルマート」という点も興味深く、日本市場では、Amazonのライバルである楽天と組むのは自然の流れと言えます。

また、楽天のユーザー層も「楽天ポイント」目当ての主婦が多いことから、西友と楽天は相性の良い組み合わせであると筆者は考えます。

④オイシックス・ラ・大地

業績絶好調のオイシックス。2017年、2018年に「大地を守る会」と「らでぃっしゅぼーや」と統合したことで「オイシックス・ラ・大地株式会社」となりました。(以後、オイシックスと表記します)

オイシックスのビジネスモデルは、近所では手に入れにくい、有機野菜や無農薬野菜をネットで買える宅配サービスとして購入できる点、また配達日時を選べ、野菜を自由に選べるなど利便性の高いサービスを展開し、最終的にはミールキットとよばれる野菜セットの定期購入を促し、リピーターを獲得することで大きな収益をあげています。

また、オイシックスの大きな特徴は、配送物にあります。下記の主婦のブログに詳しく書かれておりますが、配送の段ボールや説明書に、野菜を美味しくたべるための説明がびっしり書いており、ユーザーに役に立つ工夫がされております。

参考ブログ記事:オイシックスお試しセットの体験ブログ~お得で充実の内容でした!

このような取り組みが、リピーターを獲得する施策につながっているのです。

まとめ:食品ECこそが、日本のEC化率を高めるキッカケになる!

日本のインターネット大手各社が食品ECに力を入れ始めていますが、食品ECを日本全国に浸透させるにはまだまだ時間がかかります。

一番大きな壁は、生鮮食品を取り扱う物流拠点の構築ですが、楽天は西友のような大手小売業と連携することで、既存の食品物流網を使い、一気に広げることができることを証明しました。

衣食住の中心である食品分野のEC化率を高めることは、全ての産業でEC化率を高めるキッカケになります。日本の全産業のEC化率は5.79%と低く、ECサイトの利用率が伸びないと、革新的なサービスやイノベーションが生まれにくくなり、あらゆる産業の国際競争力低下を招くことになるのです。

また、先進国では世界で最初に日本が少子高齢化社会に突入するため、多くの地域・産業で深刻な人手不足が発生します。EC化率を高め、イノベーションにより多くの人の生活の利便性を維持・向上させなくてはなりません。それが出来れば、日本の後に続いて高齢化社会を迎える諸外国にも大きな手本となるでしょう。

ですから、食品業界のEC化率を高めることは、非常に重要な取り組みなのです。


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