「Web受注」を導入する3つの方法とメリットを徹底解説!


企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)は不可欠な取り組みとなっています。コロナ禍をきっかけに一気に進んだ「テレワーク」も、今後、企業における多様な働き方の一つとして定着していくことは必然です。テレワークで業務が継続できるように、従来の電話やFAXによる受発注業務をWeb化したいと考える経営者や担当部門の方は少なくないでしょう。

受発注業務をWeb化することで、自社の業務効率向上だけでなく、顧客(取引先企業)ごとに注文画面や受発注サービスを用意することも容易になるなど、顧客の利便性とエクスペリエンスを高めることができます。また、日々の定型業務をデジタルに任せることで、従業員は売上向上などのより付加価値の高い業務を行えるようになります。

今すぐすべての受注窓口をWeb化するのは難しいという場合でも、電話/FAXに並ぶ受注チャネルの一つとしてWeb受発注システムを採用することは、企業にさまざまな効果をもたらすでしょう。

この記事ではインターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、BtoBの受発注業務をWeb化するメリットと、Web受発注システムの3つの構築方法を紹介します。

受発注業務をWeb化しないデメリット

特別な理由がない限り、従来の電話/FAXによるアナログな受発注業務を続けることは、企業にとってデメリットしかありません。

◆従来の電話/FAXなどによる受発注業務のデメリット

・注文時のミスが発生しやすい
・作業場所が固定されるため、テレワークが推進できない
・受付時間が営業時間に限られる(休日/夜間受付ができない)
・担当者に依存するため業務スピードにばらつきが出やすい
・受発注業務だけがWeb化から取り残される

受発注業務に携わる担当者にとっては当たり前のことだったかもしれませんが、デメリットだと理解しつつも電話/FAXによる受注を続けざるを得ない背景には、自社のデジタル成熟度や取引先企業のニーズが関係している場合がほとんどです。

業務フローの変革、特にWeb化の成功体験が少ない企業などでは、現場の不安と混乱が大きくなり業務が停滞するという事態を回避したいと考えるのは当然です。確かに受発注業務をWeb化することで、一時的に多くの負担が生じます。しかし中・長期的に見ると、デジタル取引は取引先企業にも十分な恩恵をもたらします。

◆受発注業務のWeb化によるメリット

・誤入力による注文ミスを防ぎやすくなる
・取引履歴を簡単に検索・参照・再利用できるようになる
・モバイル端末等から、いつでも、どこからでも、注文できる
・担当者に依存せずに受発注業務を標準化できる

受発注業務のWeb化を成功させるためには、取引先企業の一時的な負担に十分に配慮した上で、スマートフォンやモバイル端末でどこにいても注文手続きができる、必要な情報をいつでも手軽に活用して業務を行える、といった現場のメリットと、利便性と生産性の向上、業界のデジタル化促推などの企業としての成果を丁寧に伝え、取引先企業の理解と協力を得ることも重要になります。

続いて、Web受発注システムの構築方法について解説します。

3つのWeb受発注システム構築方法

新たにWeb受発注システム(またはサービス)を構築する方法は大きく3つあります。

方法①Web受発注専用システム

Web受発注業務に特化した専用システムでは、BtoB特有の会員(取引先企業)管理や、割引率管理なども標準機能として提供されています。取引規模や取引先企業ごとに異なるフローにもカスタマイズで柔軟に対応できる場合が多いです。

標準機能またはオプション機能だけで運用を開始する場合は比較的低価格(月額数万円~)で利用できるサービスもありますが、個別カスタマイズや他システムとの連携が必要となる場合には高額(開発費用+月額数十万~数百万円以上)になります。

そのため、可能であればWebでの受発注業務を標準化し、例外フローはシステム化せずに電話/FAX受注で対応しつつ、取引先企業の都合に合わせて緩やかにWebへの移行に誘導するなど、コストバランスを考慮した段階的なWeb移行プランを策定することをおすすめします。

Web受発注専用システムでは業界に特化した多彩な機能が提供されています。自社の事業分野や運用にフィットする機能を備えたサービスを探してみましょう。

方法②BtoB機能を備えたECプラットフォーム

BtoB向けのECプラットフォームでは、基本的なWeb受発注機能が提供されています。BtoB向けのECプラットフォームを採用する最大のメリットは、マーケティング機能を利用できる点です。

例えば、「おすすめ商品」や「人気商品」などのレコメンド、キャンペーン設定および自動通知、チャットボットによる自動応対といったBtoCではおなじみの機能をBtoBでも使えるようになります。

オペレーターや担当営業が行っている接客業務の一部も、マイページやメール等で自動化することも可能です。また、それらの施策に対するリアクションや会員動向などもすべてデジタルデータで取得できるようになるため、データを分析してよりこまやかな顧客サービスを提供できるようになります。

さらに、非会員向けのECサイトを開設することで、取引先企業以外(非会員)にも販売網を拡大するといった戦略も可能になります。

ただし、複雑な商流やイレギュラー運用をシステム化したり、他システムとの連携が必要となったりする場合には、Web受発注専用システム(またはサービス)と比べてカスタマイズにかかるコストは高くなります。システム化要件が決まったら、①②両方の見積もりを取得して比較検討を行うようにしましょう。

方法③フルスクラッチ

自社の開発部門やITベンダーに依頼し、Web受発注システムをゼロから開発するという方法もあります。この場合には、現行業務を完全にシステムに置き換えることも可能です。しかし以下の理由から、筆者はこの方法をおすすめしません。

◆フルスクラッチのデメリット

・①や②のような既製システムで標準的な受発注機能が提供されており、ゼロから開発するのはコストメリットがない
・①や②のような既製システムで提供される定期アップデートや新機能がないため、システムが陳腐化しやすい
・機能追加や仕様変更が発生するたびに莫大な開発コストが必要になる

昨今は、多様かつ高度な受発注機能を備えたクラウド型のシステムが多数提供されており、カスタマイズや他システムとの連携にも柔軟に対応できるサービスもあります。導入実績、ノウハウも豊富でセキュリティ対策も十分になされている、専門企業が構築したシステムを利用しない手はありません

「自社の商流は複雑だから、一般的な受発注システムでは業務が行えない」と決めつけることなく、基本機能は既製システムを利用し、例外業務だけを自社開発したり、アナログ運用で対応したりするなど、切り分けて検討してみるとよいでしょう。

受発注業務のWeb化がもたらす3つの効果とは?

受発注業務をWeb化することで、次の3つの効果が期待できます。

効果①受発注処理の高速化(生産性向上)

受発注業務をWeb化することで、注文受付時に自動で在庫引き当てができるようになります。従来は、注文を受け付けたらオペレーターが在庫情報を確認するといった作業が不要となるため、1回あたりの受発注手続きにかかる時間が大幅に短縮します。1回の手続きにかかる時間が短縮されることで、受付できる注文数を増やせるため、潜在的な機会損失も防ぐことができます

効果②受発注業務の標準化と効率化

受発注業務のすべてをデジタルデータで管理することができるため、過去の履歴を参照したり、前回の注文情報を再利用して新規注文を作成したりできるようになります。また、新任が担当する場合や担当者変更が生じた場合も、システムのフローに沿って手続きを進めることができるようになるなど、受発注業務を標準化できます。

効果③取引先企業のデジタル化とモビリティの促進

受発注窓口のWeb化は、自社だけでなく取引先企業のペーパーレス化にも貢献できます。また、多くのWeb受発注システム(またはサービス)は、スマートフォンからのアクセスにも対応しており、いつでも、どこからでも受発注業務を行えるため、テレワークの導入も可能になります。

受発注業務のWeb化を成功させるためには取引先の理解と協力が不可欠

突然、一方的に「今後はWebでの受注に切り替えるのでそちらを使ってください」と告げられても、告げられた側は対応できません。担当者のモチベーションの低下や、取引先の反発や離脱を招くことになるようでは、Web化の意義が損なわれます。

受発注業務をWeb化する際は担当者と取引先企業の協力を得て、取引先企業の要望を集めて受発注システムへの実装可否を検討しましょう。システム化すべき要素を絞って機能や入力項目に落とし込むことが重要です。

特に大口取引やVIP顧客などの場合は、通常の取引とは異なるイレギュラー対応も多いでしょう。そのため、個別対応が必要な取引先企業に対しては専用の注文画面を用意するなどの対策を取る必要があります。その際も、要件ヒアリングを丁寧に行い、従来の手続きを継続すべきか、見直すべきか、また見直す場合にはどのように改善することが好ましいかを、取引先企業とも協議した上で実現方法を検討しましょう。

取引先企業の事情で電話/FAXでの注文チャネルを例外的に残す必要がある場合にも、将来的には自動音声受付やFAX-OCRによる自動取込など、将来的なデジタル化を見据えて検討することをおすすめします。

取引先企業への説明では、顧客側で生じる負担と新システムがもたらす短期的および長期的な効果の両面について、誠実に説明することが肝要です。その上で、一時的な負担を軽減し、Web受発注システムのメリットを十分に感じてもらえるように、導入直後のフォロー体制などについても事前に相談・検討しておくようにしましょう。

システムリリース時には感謝を伝えるキャンペーンを実施するなどして、顧客満足度の低下や離脱を防ぐための施策も検討しておくとよいでしょう。

まとめ

受発注業務のWeb化を検討する際は、先述した3つの構築方法の中で、自社に最も適した方法はどれか十分に検討して選定しましょう。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。