Yahoo!ショッピングのメリットとは?楽天市場との比較を徹底解説


Yahoo!ショッピングの最大の特徴は出店料金がかからないことです。すでに自社サイトや楽天市場でEC店舗を開設している場合でも、Yahoo!ショッピングへの出店を検討している事業者の方も多いのではないでしょうか。

Yahoo!ショッピングは、初期費用と月額費用がかからない分、売上ごとにポイント原資や広告費を支払う成果報酬型のモール型ECサイト(ECモール)なので、最小限のコストでEC店舗を開設したい場合に適しています

また、Yahoo!ショッピングの店舗ページ内に、外部Webサイトへのリンクを設定することもできるため、他のECサイトを運営している場合には、新規顧客の流入経路としての役割も期待できます。

Yahoo!ショッピングでの店舗運営には、自社サイトや楽天市場とは異なるノウハウが求められるため、高い収益を目指す場合は、学習と運用にそれなりの労力と予算が必要となります。

この記事ではインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、楽天市場との比較でYahoo!ショッピングの特徴を理解するとともに、出店するメリット/デメリットについて解説します。

数字で比べる楽天市場とYahoo!ショッピングの特徴

まずは、ECモール運営大手の楽天市場との比較で、Yahoo!ショッピングの特徴を理解しましょう(下表を参照)。

◆楽天市場とYahoo!ショッピングの比較

楽天市場 Yahoo!ショッピング
出店数(※1) 5万5,939店(2021年度) 117万店(2021年)
売上
(国内EC流通総額)
5兆118億円(2021年度)(※2)
※他の楽天グループの国内ECサービスを含む
1兆6,971億円(2021年度)(※5)
※PayPayモールを含む
会員数(国内) 3,600万超ID(2022年3月時点)(※3) 2,363万ID(2021年度)(※5)
※Yahoo!プレミアム会員ID数
初期登録費用(税別) 6万円(※4) 無料(※6)
月額出店料(税別) 1万9,500円/月(年間一括払)~10万円/月(半年ごとの2回分割払)(※4) 無料(※6)
システム利用料(税別) 月間売上高の2.0~7.0%(※4) 無料(※6)
ポイント等各種原資および手数料 必要(※4) 必要(※6)

出典:以下の数値に基づき筆者作成

※1:楽天市場 出店案内「比較検討されている方に 他社ショッピングサイトとの違いー店舗数は楽天市場の21倍以上!
※2:ネットショップ担当者フォーラム「楽天グループは2030年に国内EC流通総額10兆円&営業利益率20%超をめざす方針」(2022年5月16日掲載)
※3:ECのミカタ「【楽天決算】2022年度第1四半期の連結売上収益は過去最高の4,371億円(昨対比11.7%増)」(2022年5月16日掲載)
※4:楽天市場 出店案内「プラン・費用 運営スタイルに合わせて選べる出店プラン
※5:Zホールディングス株式会社「事業指標推移表 2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日)
※6:Yahoo!ショッピング「料金・費用について

上表では、Yahoo!ショッピングが出店数(21倍超)、会員数ともに楽天市場を上回っており盛況に見えますが、売上を見ると楽天グループとの差は大きく、国内ECモール市場における楽天市場の存在感は絶大です。

Yahoo!ショッピングの出店数が激増したきっかけは、2013年10月に孫正義氏が発表した「eコマース革命宣言」です。

参考:Yahoo! JAPAN「孫正義『eコマース革命宣言』

Yahoo!ショッピングが出店料と手数料を無料化したことで出店店舗数は急激に増えましたが、ユーザーから「支払いをしたのに商品が届かない」などの被害が報告されるなど、一部の出店店舗のモラルやサービス品質の低下と悪質なビジネス手法が問題となりました。

参考:ネットショップ担当者フォーラム「Yahoo!ショッピング出店サイト『エルショップ』で購入代金詐欺か? ヤフーは『現在調査中』」(2015年2月6日掲載)

このような事態を受け、Yahoo!ショッピングは登録出店者の審査を強化するなどし、出店店舗に対して一定基準のモラルとサービス品質を求める姿勢を打ち出しました。

そのため、一時的に基準に達しない店舗の契約解除などが生じたことから「Yahoo!ショッピングは契約時の審査が厳しい」という評判が流布しましたが、現在は、Yahoo!ショッピングへの出店利用は法人と個人事業主のみとし、個人はヤフオク!を利用するなどのルールが確立され、ユーザーに良質なショッピング体験を提供できるように運営されています。

Yahoo!ショッピングに出店する3つのメリット

それでは、Yahoo!ショッピングに出店する3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット①出店料が無料なので、開店資金のない事業者でも始められる

何と言っても、出店料が無料という点は大きなメリットです。

楽天市場に出店する場合には初期費用の6万円に加え、最も安い契約プラン「がんばれ!プラン」でも月額出店料として1万9,500円を年間一括で支払わなくてはならないため、開店前に約30万円~の資金を用意する必要があります。

Yahoo!ショッピングでは初期費用と月額費用は無料なので、店舗開設時点にまとまった資金がなくても出店することができます。売上が発生した時点でポイントなどの各種原資と手数料の支払いが発生する成果報酬型システムなので、出店時のリスクがほとんどなく市場に参入できる点は魅力的です。

メリット②自社ECサイトに顧客を誘導できる

Yahoo!ショッピングでは店舗ページに外部リンクを設定することができるため、自社ECサイトを運営している場合には大きなメリットとなります。

特に開設したばかりは、ECサイトにおける重要課題のひとつである「集客」に苦戦することが多いため、Yahoo!ショッピングのように高い集客力を持つECモールに出店して顧客を自社サイトに誘導することで、有力な新規顧客獲得チャネルを確立できます。楽天市場では外部リンクを設定できないため、Yahoo!ショッピングならではのメリットと言えます。

ただし、Yahoo!ショッピングの店舗ページに掲載した外部リンクをユーザーがクリックした際には、「あなたがアクセスしようとしているリンク先はYahoo!JAPANではありません。」というアラートが表示されます。ユーザーが安心してリンク先に移動できるよう、リンク先が安全な公式サイトであることが分かるように掲載しましょう。

メリット③重点的に取り組むことで、売上向上につなげやすい

Yahoo!ショッピングに出店する多くの事業者は自社ECサイトや楽天市場の店舗も運営しています。そのため、固定費のかからないYahoo!ショッピングの店舗は、集客機会の一つとして割り切って出店しているケースも少なくないような印象があります。

ECモール内の検索結果を上位に表示するアルゴリズムはECモールごとに異なります。楽天市場(楽天SEO)とYahoo!ショッピングでも、SEOの傾向と対策は異なっており楽天市場では月1,000万円を売り上げている事業者であっても、Yahoo!ショッピングでは月100万円にも達していない、ということも珍しくはありません。楽天市場では有効でもYahoo!ショッピングでは通用しないテクニックは多々あります。

楽天市場と比べてYahoo!ショッピングの歴史は浅いこともあり、楽天市場に注力する事業者が多いのですが、Yahoo!ショッピングで重点的に取り組むことによって、楽天市場よりも結果が出やすいポイントがあります。

それは、Yahoo!ショッピングの「PRオプション」という広告機能を活用する方法で、使用料率を一時的に高く設定すると、Yahoo!ショッピング内での露出を増やすことができます(詳しくは後述します)。こうした広告オプションの設定変更と計測などのこまやかな運用を行うことで、売上向上の機会を拡げられる点は、Yahoo!ショッピングならではのメリットと言えるでしょう。

Yahoo!ショッピングに出店する3つのデメリット

Yahoo!ショッピングに出店する3つのデメリットについても、きちんと理解しておきましょう。

デメリット①売上に応じて費用が発生する

ECモールを利用するための初期費用と月額費用は不要ですが、店舗開設後は売上が発生したタイミングで次の費用が発生します。

・ストアポイント原資負担
・キャンペーン原資負担
・アフィリエイトパートナー報酬原資
・アフィリエイト手数料

参考:Yahoo!ショッピング「料金・費用について

Yahoo!ショッピングの料金・費用ページで、月額費用をシミュレーションできるので、出店検討時には、必ずシミュレーションで予算を把握しておくようにしましょう。

下図のシミュレーション結果では、月商100万円の事業者が各原資の料率を初期値(最小値)で設定した場合、月額5万5,637円(税抜)の費用が発生します。

引用(画像):Yahoo!ショッピング「料金・費用について:月額費用シミュレーション」 (月商100万円を入力した場合のシミュレーション実行結果画面)

また上図の項目にはありませんが、Yahoo!ショッピングでは出店後、一定条件を満たした店舗に「PRオプション」という成果報酬型広告のオプションメニューが提供されます。このオプションはYahoo!ショッピングでの売上を左右する重要な機能です。PRオプションの料率は1~30%までの間で設定でき、月額費用にはその分の料金が加算されるので注意しておきましょう。

デメリット②露出を増やすためのコストが必要

Yahoo!ショッピング、楽天市場ともに正確なアクセス数は公表していませんが、2019年に株式会社ヴァリューズが実施した調査によると、楽天市場のほうがサイトアクセス数が断然多いことが分かります。

つまり、Yahoo!ショッピングは楽天市場より顧客が少ないモール内で、楽天市場の21倍以上の他の店舗と競争しなければならないという状況ということです。

参考:ネットショップ担当者フォーラム「訪問者数が多いWebサイトの1位はGoogle、2位にAmazon、3位に楽天市場」(2019年12月10日掲載)

そのため、Yahoo!ショッピングではポイント原資やPRオプションに高い料率を設定するなどして、集客のために露出を増やす必要があります。

デメリット③楽天市場に比べてサポートが薄い

楽天市場では、出店店舗ごとに運営をサポートしてくれる専任のECコンサルタント(※通称、ECC)がつきます。

※楽天市場のECコンサルタントの詳細については、下記のWeb記事でも解説していますのでぜひご覧ください。

関連記事:【全解説】ECコンサルティングに仕事を依頼する前に知るべき事

どうしても楽天市場の売上が高い店舗ほどサポートが厚くなる傾向はあるのですが、売上が低い場合には必要なサポートをしてくれます。

Yahoo!ショッピングでも担当営業がつきますが、楽天市場と比べると担当店舗数が多いこともあり手厚いサポートはあまり期待できないのですが、PRオプションなどのオプション機能を使用する際には十分なサポートを受けることができます。

Yahoo!ショッピングで店舗を運営している筆者の知人の中には、Yahoo!ショッピングに担当営業による支援システムがあること自体を知らない人もおり、多くの店舗がサポートサービスを十分に活用できていないようです。

Yahoo!ショッピングでは、自分で基本的な情報を収集しながら、分からないことは積極的に担当営業に相談していくことをおすすめします。

「PRオプション」を活用してYahoo!ショッピングの売上を向上しよう

前述のとおり(メリット③、デメリット②)、Yahoo!ショッピングで成果を出すためには、ポイント原資やPRオプションによる投資なしでは難しく、出店後はいかに「PRオプション」を活用できるかがポイントとなります。

PRオプションは、Yahoo!ショッピング内の検索結果表示や、カテゴリリストのおすすめ表示への露出を増やすことができる成果報酬型広告で、料率を0.1%単位で1~30%まで設定することができ、料率が高いほど露出を増やすことができます。

◆PRオプションの掲載位置

引用(画像):Yahoo!ショッピング ツールマニュアル「PRオプションとは(PayPayモール版)」(2021年10月28日掲載)

PRオプションの使用条件として月あたりの取扱高が評価されるため、出店直後は使用することができません。そのため、出店直後は利益を多少抑えてでも、ポイント原資の料率を高く設定して露出を増やし、PRオプションが使える状況を整えましょう。

PRオプションを使用すると、Yahoo!ショッピング内の検索結果表示でも優遇されるため、売上につながりやすくなります

参考:ネットショップ担当者フォーラム(通販新聞ダイジェスト)「ヤフー出店者の利用が増えているYahoo!ショッピング広告『PRオプション』とは?」(2016年2月24日掲載)

PRオプションの使用期間が長くなるほど、Yahoo!ショッピング内の検索結果表示の優遇率が高くなるため、売上アップを目指すのであれば、PRオプションの継続使用が不可欠です。ただし、高い料率を設定し続けるのは負担が大きいため、勝負期は高めに、通常期は低めに設定するなど、緩急をつけて運用すべきでしょう。

Yahoo!ショッピングに出店する際の必要書類

Yahoo!ショッピングへの出店時には以下の書類が必要になります。

・Yahoo!JAPAN ID
・クレジットカード情報
・会社情報(法人の場合は、登記簿謄本の記載内容と13桁の法人番号が必要)
・代表者情報(氏名、住所、生年月日など)
・銀行口座情報
・公共料金の領収書等、国税・地方税の領収証書または納税証明書、青色申告承認申請書(控)、社会保険料の領収書または納入告知書(納付書)いずれか1つ
・登記簿謄本(法人の場合)
・代表者の運転免許証、運転経歴証明書、在留カード、マイナンバーカードのいずれか1つ(個人事業主の場合)
・出店予定商材情報(Yahoo!ショッピングの取扱い対象で在庫が確保されている商材であること)

出店に必要な書類や条件は変更される場合があるため、申請前にはYahoo!ショッピングの公式情報を必ず確認してください。

参考:Yahoo!ショッピング「お申込みの前に

Yahoo!ショッピングとPayPayモールとの違い

近年、ヤフーの親会社にあたるZホールディングス株式会社では、株式会社ZOZO(「ZOZOTOWN」の運営企業)の買収や、LINE株式会社との経営統合などを行ってきました。また同社では、QRコード決済サービス「PayPay」の普及に伴い、「PayPayモール」という新しいECモールを開設しています。

PayPayモールは、厳選された大規模企業やYahoo!ショッピングで高い売上を持つ事業者だけが出店することのできるECモールです。

◆Yahoo!ショッピングとPayPayモールの出店対象企業の違い

・Yahoo!ショッピング:小中規模を含むすべての事業者が対象
・PayPayモール:大規模事業者またはYahoo!ショッピングにおける優良店舗が対象

そのため、新たにEC事業を開始する多くの事業者は、Yahoo!ショッピングからスタートすることになります。

Yahoo!ショッピングへの出店を検討している方へ

Yahoo!ショッピングは初期費用がかからないため、開店資金が少なくても出店できます。しかし、開店後に利益をあげるためには、PRオプションなどの成果報酬型のオプションを上手に運用していく必要があります。

運用コストの検討はもちろん大切ですが、過度に心配することはありません。

すでに、Yahoo!ショッピングにおける売上向上ノウハウについては、ブログ記事やYouTubeチャンネルなどで公開されています。それらを手本とするだけでも、ある程度のノウハウを学ぶことが可能です。さまざまな情報を集めて、理解を深めましょう!


セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。