大手4社から学ぶオムニチャネルマーケティング事例の解説

オムニチャネルは今では誰もが耳にしている言葉です。オムニチャネルは、omni(全て)とchannel(経路)で成り立ち、全ての顧客接点で購買に結び付けるという意味です。

しかし、この解釈は昔から実施しているマルチチャネルと大差がありません。オムニチャネルとは販売するだけではなくユーザーエクスペリエンスが含まれ、マーケティング戦略の中心的存在であります。では、全ての顧客接点でどのようにマーケティングをすればいいのでしょうか?

その答えを見つけるのは容易ではありませんが、各業界の大手のオムニチャネル戦略の取り組みが参考になるはずです。本日は株式会社インターファクトリー(ebisumart)でWEBマーケティングを担当している筆者がオムニチャネルを実践している業界大手4社の事例を交えてオムニチャネルマーケティングを解説いたします。

まず、オムニチャネルについて、言葉の意味やO2Oとの違いなど、オムニチャネルの基本的な理解を深めたい方は、下記の記事をご覧ください。

オムニチャネル記事:国内・海外事例やO2Oとの違いでオムニチャネルを理解する【完全解説】

目次

1社目:イオンのオムニチャネルマーケティングへの取り組み
2社目:セブン&アイホールディングスのオムニチャネルマーケティングの取り組み
3社目:資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組み
4社目:ツタヤのオムニチャネルマーケティングの取り組み
オムニチャネルマーケティングの3つのポイント
まとめ

1社目:イオンのオムニチャネルマーケティングへの取り組み

2018年4月11日にイオンは、米国のベンチャー「Boxed」に出資に関するニュースがありました。Boxedは2013年に設立されたスタートアップで、

・物流システム
・AIを活用したアルゴリズムによる顧客提案

のノウハウがあるということです。ネット担当者フォーラムの記事によると、イオンの狙いは

Boxedの物流幹部を招聘することで、自社の物流ノウハウの取得
オンラインビジネスにおけるデータ管理・活用、AI技術のノウハウを習得

にあります。ユーザーの利便性を高めるオムニチャネルには、円滑な物流システムや顧客データの活用は欠かせません。Boxedへの出資には、イオンのデジタルシフトを加速させる役割を担っているのです。

イオンは2018年にデジタル推進統括部を設立し、その統括部には「オムニチャネル推進室」も配置されております。イオンのオムニチャネルへの取り組みは、オムニチャネルの受け皿であるイオンドットコムが握っております。

イオンのオムニチャネルの受け皿!イオンドットコム

またイオンはオムニチャネル施策の受け皿となるECサイト「イオンドットコム」の準備をしています。現在はイオングループ各社の29のECサイトを束ねる形になっているだけで、ある商品を買おうとすると、対象製品のグループ会社ECサイトに遷移するのみの仕組みになっていますが、将来的には「イオンドットコム」内で商品を購入できるように進めております。

waon
「イオンドットコム」を利用するにはイオンスクエアメンバーへの登録が必要です。登録すれば図のように、「ネットWAONポイント」が貯まり、「WAONポイント」との交換が可能になります。ポイントの交換が必要になる点は、スムーズではないですが、リアルとネットのポイントの一元化によりユーザーへの利便性を提供しているのです。

「ネットWAONポイント」が使えるのは2016年1月の時点では20社でしたが、今もあまり増えておらず、グループ全体でポイントの一元化が進んでいくと思いますが、開発がなかなか進んでいない印象があります。イオンドットコムのWEB開発は、グループ会社の「イオンリンク」が内製で行っております。内製の最大のメリットはスピード感のある開発ができることです。
しかし、イオンは巨大企業グループであり、イオンドットコムに参加している各社を取りまとめるのは、容易なことではありません。イオンのオムニチャネル展開のスピードはイオンドットコムにかかっております。こういった取り組みにより、2016年にはデジタル売上比率は0.7%程度でしたが、2020年には12%まで高めることを目標としております。

2社目:セブン&アイホールディングスのオムニチャネルマーケティングの取り組み

2015年9月24日にセブン&アイ・ホールディングスはネットと全国1万9千店舗ある実店舗を連動させた「Omni7」(オムニセブン)を発表しました。これはグループ間で、ネットでもリアルでも場所や時間の制約が無いシームレスな買い物ができるようにする取り組みです。

しかし、2017年に最高益を達成したセブン&アイ・ホールディングスですが、オムニセブンに関して234億円の減損対象になりました。2016年5月にオムニチャネルを推進していた鈴木敏文会長が退任した影響により、社内でオムニチャネルを推進役がいなくなったことが大きく影響しております。

これを受け、セブン&アイ・ホールディングスは、オムニチャネル戦略の転換を図っております。新オムニチャネル戦略の骨子にあたるのが、1日あたり2,200万人に上る顧客データを使ったきめ細やかなCRM戦略です。その起点となるのが、スマートフォンアプリです。

◆セブン&アイ・ホールディングスIR資料よりキャプチャー

セブン&アイ・ホールディングスは、グループ会社各社からスマートフォンのアプリを刷新・リリースを行い、新しいポイントサービスの「セブンマイルプログラム」を展開します。このマイルは以下のようなことが実施予定です。

・購買実績・購買行動に応じたマイル付与
・貯めたマイルでnanacoポイント獲得
・貯めたマイルランクに応じた特典サービス

このように、セブン&アイ・ホールディングスの新しいオムニチャネル施策は「アプリ」を起点とし、「顧客ごとにグループ各社の利用状況をつなげ、全チャネルを通じてサービスの質を追求すること」を目標として掲げております。

CRMというと、少し古臭いイメージがありますが、セブンオムニのWEBを起点にした、今までのオムニチャネル戦略より、スマホアプリを起点にしたことで、より、手軽にユーザー接点ができるのは大きなメリットだと思いますし、無理にセブンオムニのサイトで各社を統一するより、グループ各社のアプリをユーザーに使ってもらいながら、アプリを利用してもらいながら、顧客データを統合管理する方が、非常にシンプルでわかりやすい戦略です。

セブン&アイ・ホールディングスが、新決済会社「セブン・ペイ」を設立

2019年春のサービス開始を目標に、傘下のセブン・フィナンシャルとセブン銀行が共同出資で、決済サービス会社の「セブン・ペイ」を立ち上げました。この決済会社は、グループ内で新たに利用する決済サービスを提供する。

この決済サービスと、「セブンマイルプログラム」と連携を行うことで、顧客IDの一元化と顧客一人ひとりへのCRMの最大化につなげていくと思われます。

今後、すでに流通している、電子マネーのnanacoとのすみ分けなどがどのように行われて行くのか疑問が残りますが、新しい決済サービスがセブン&アイ・ホールディングスの新オムニチャネル戦略の一役を担っています。

3社目:資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組み

資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組みは、美と健康に関する企業と専門家によるコラボレーションサイト「Beauty&Co.」、総合美容サービス「watashi+」、百貨店などのリアル店舗で構成されています。

Beauty&Co.は、美に関する様々な情報を発信しています。運営は資生堂がしていますが、資生堂色を全面にだしているわけではなく、美を提案することで美への意識を高めることをしています。このことで、ユーザーエクスペリエンスを提案し、化粧品を売るのではなく、市場拡大を目的にしていると考えられます。

watashi+は、資生堂を全面に出し、オンラインショップとO2Oを目的としています。インターネット上でセルフチェックができ、最後にはお化粧方法の提案とおすすめの商品の購入ができます。もう少し本格的に検討したいと思えば、ビューティーコンサルタントに相談できるようになっています。

それ以外にも、優秀なビューティーコンサルタントを紹介し、店舗でコンサルティングを受けられるようにしている。Beauty&Co.で、顧客エクスペリエンスを高め、watashi+で資生堂の商品をECによる販売と、店舗への集客を促しています。

Salesforce Marketing Cloudを導入し、LINEとメールからの顧客行動も可視化

2015年7月2日にセールスフォース・ドットコムは資生堂にSalesforce Marketing Cloudの導入すると発表しました。資生堂が保有する日本国内のWEBのリードは、ワタシプラスのEメールの対象会員が200万人以上、LINE公式アカウントの友だち数は1600万人を超えます。

これらの莫大な会員データをSalesforce Marketing Cloudに繋ぎ込むことで、顧客一人ひとりの行動に即したタイミングで、情報を配信する事で顧客との信頼関係を強化し、美への発見から購買、リピートまでシームレスな流れを仕組み化しているのです。

4社目:ツタヤのオムニチャネルマーケティングの取り組み

二子玉川に蔦谷家電が開店しました。広い店内で、ヤマダ電機や、ヨドバシカメラ等とは、全く違った陳列で、ライフスタイル提案型のショップとなっています。楽しい生活空間を提案することで、消費者の購買意欲を高めることが出来ています。

しかしながら、家電はショールーミングの対象になりやすい商品であるため、最終的に蔦谷家電で購入するかは疑問が残る。また、ツタヤのEC事業はTSUTAYA.comに集約していますが、蔦谷家電との連携がされているようには見えません。

二子玉川は賃料も高いことから、ECでも販売することでオムニチャネルマーケティングとしての役割も担っているかと思えば、家電を販売していないこともありO2Oらしさもなく疑問があります。

さて、なぜオムニチャネルマーケティングで紹介しているかといえば、蔦谷家電はオムニチャネルマーケティングに重要な顧客エクスペリエンスを実践している店舗だからです。

二子玉川の富裕層や、特定分野にこだわりのある消費者を狙い、価格に関係なくライフスタイルに合うと感じたら購入する顧客層をターゲットとしていると考えられますが、特に特定分野にこだわりのある消費者への訴求としては、とても効果的です。

コーヒーにこだわりがある消費者には、エスプレッソメーカーがあり、その周りにはコーヒーをより楽しむための補完商品が演出されている。このことにより、コーヒーを楽しく空間を想像させ、体験したいと思わせることをしている。

オムニチャネルマーケティングには、販売するだけではなく、このような顧客エクスペリエンスを訴求することが求められており、リアル店舗だけではあるが蔦谷家電から学ぶものがあります。

タブレットPOSの導入を始めた蔦谷家電

2016年1月8日に蔦谷家電はユビレジ社のiPadを使ったPOSシステムの採用をしたという発表がありました。まずはイベントスペース専用の導入のようです。

イベント会場用での導入という事は、まずはタブレットPOSのテスト的導入要素と思われます。タブレットPOSであれば「オンラインでの在庫確認」、「店舗にない商品のオンライン注文」、「他店舗の在庫確認」など顧客本位な接客が可能であり、少しずつではありますが、確実にオムニチャネルにむけて動きだしております。

オムニチャネルマーケティングの3つのポイント

オムニチャネルはデジタル化の仕組みだけではありません。全ての顧客接点で顧客エクスペリエンスを提供するオムニチャネルマーケティングを実施するには、3つのポイントに注意しなければなりません。

1.オムニチャネルマーケティングは企画ではない

顧客視点は、今に始まったことではなく昔からのマーケティングの考え方です。どうしても、マーケティングという言葉が、流行の施策に対して使われる傾向にあるため、話題性や企画と勘違いされている感があります。話題性や企画では短期的な売上のためであり、ブランディングにもなりません。

オムニチャネルを推進するには、顧客層、経路を再定義し、最適なユーザーエクスペリエンスを提供できるようにカスタマージャーニーマップ等を使い、戦略を考えなければなりません。

2. 全ての顧客接点が、全ての役割を担っている

A店舗に来店した顧客が、X商品に興味を持ち、比較サイトでX商品について情報を得て、B店舗で購入した場合、A店舗ではX商品に興味を持っていただくことが役割となります。

B店舗では意思決定の後押しをします。A、Bともに同じ店舗でありながら、顧客の購買プロセスのフェーズによって役割が違います。もし、同じ接客をしていたら、顧客はX商品の同じ説明を2度聞かされることになるでしょう。

オムニチャネルは、全ての顧客接点を通じて、顧客エクスペリエンスを提供することで、購買プロセスのフェーズに適した接客をする必要があります。

インターネット広告でも、ECやリアル店舗に誘導することだけではなく、認知、興味を引く役割も担っているのです。リアル店舗、インターネットで、それぞれに得意分野はあるものの、役割分担ではないのです。お互いに顧客というバトンを渡していくことも期待されているのです。

3. オムニチャネルマーケティングは全社戦略

全社員が全ての顧客接点で適切な接客ができるように理解していなければなりません。しかし、殆どが個別施策の乱立となっているのが現状です。

どうしても、売上目標を達成するために、広告やキャンペーン等で、担当範囲の視点で個別対策をしているからです。でも、これではオムニチャネルではなく、シングルチャネルになってしまっています。オムニチャネルでは、目先の売上だけではなく、顧客エクスペリエンスを提供しブランド価値を高めることに意味があります。

そのためには、顧客に最適な体験を提供するために、オムニチャネルマーケティングの方向性を全社に示し、全社戦略としなければなりません。

まとめ

IOT(Internet of Things)にあるように、あらゆるものがインターネットに接続する時代へと進歩していきます。

このことは、顧客との接点は無限に広がることを意味しています。オムニチャネルマーケティングは、今まで以上に、複雑で重要な意味を持ってきます。そのための、オムニチャネル戦略、体制、仕組みつくりへの投資は必要不可欠です。

もし、いまのマーケティングがオムニチャネルになっていないと不安に感じたら、見直す良い機会かもしれません。

オムニチャネル事例紹介:オムニチャネルもebisumartで短期導入:藤巻百貨店様

また、アパレルECの世界においても、オムニチャネルやO2Oの顧客データ統合が、勝ち組か負け組を決定する重要な、要因となっており、合わせて下記の記事も読んでいただければと思います。

【2018年版】アパレルECの市場規模と3つの課題をプロが徹底解説

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