【2020年版】アパレルECの市場規模と5つの課題をプロが徹底解説


様々なEC業界の中でもアパレルECは市場規模が大きく、注目されている業界の一つです。2020年7月に経済産業省から発表された2019年度の物販系分野のアパレルECの市場規模1兆9,100億円で、前年比伸び率が7.74%急激に伸びている業界です。

しかし、アパレルECの各ブランドが全て上手く行っているわけではありません。

業界の中では、オムニチャネルを推進して、実店舗とWEBの会員データの一元管理を行い、顧客の囲い込みに成功し、利益をあげているブランドと、そうではないブランドの2極化が進んでおります。それを裏付けるように売上上位企業のECサイトは、いずれも会員データの統合を行って成功をおさめております。

また、コロナ禍の時代になり、店舗ビジネスに依存したビジネスモデルは厳しさを増しているために、今後のアパレル業界はECへの取り組みが欠かせないものとなってきております。

本日はebisumartでWEBマーケティングを担当している筆者が、”アパレルEC業界”を解説し、その上で業界の5つの課題と、解決策を解説いたします。

アパレルECの市場規模とEC化率

まずは、経済産業省が発表した最新のアパレルECの市場規模””EC化率”の過去6年分データを表とグラフにまとめましたので紹介いたします。

経済産業省の最新の調査結果よりデータ引用:※PDF:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

アパレルECの2019年の市場規模は1兆9,100億円

青色の棒グラフ=>市場規模(単位:億円)
オレンジ色の折れ線グラフ==>EC化率(単位:%)

グラフを見てもわかるとおり、アパレルECの市場規模は右肩上がりで、EC化率も13.87%と全産業の平均EC化率の6.76%を大幅に上回っています。さらにアパレル市場は毎年EC化率が1~2%程度上昇しております。

市場規模とEC化率が高まっている要因は4つあると筆者は考えます。

◆アパレルEC業界が伸びている4つの要因とは?

①過去3~5年において、アパレルECの管理・運用をカンタンにするツールやソリューションが多く誕生したことで、業界全体で業務効率化が進んだ
②ツールやソリューションの導入によりアパレルECの業務効率化が進み、アパレルECを運営するブランドが増えた
③アパレルEC各社の戦略により、業務効率化を進めMD(マーチャンダイジング)サイクルを短くすることで、販売機会を増やし、売上が増加した
実店舗とECの会員データの統合を進め、CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)を行うことで、ユーザー毎に適した情報をうまく発信し、リピーターが増えた

このため、新しいテクノロジーに熱心なブランドがデジタル投資に積極的なため、売上を大きく伸ばしている一方で、情報の一元化に苦しむブランドもあり、アパレルECは2極化が進んでおり、モールについてはZOZOTOWN一強の状態になっております。

また、グラフにはまだ含まれておりませんが、2020年の新型コロナウイルスの影響により、アパレル業界は旅行業界とともに大打撃を受けており、EC化の動きが今後加速していくのは間違いありません。

それでは次に、アパレル業界のEC市場ランキングをもとに、各企業やモールについて解説します。

アパレルECの売上高ランキング(2018年10月~2019年9月のデータ)

下記の表は、通販新聞社が行った売上高のランキングデータです。

データ引用先:ファッション通販売上高ランキング 100億円以上の通販会社8社に、有店舗アパレルの存在感高まる、モールはゾゾが話題独占

自社EC部門では、ユニクロが1位を獲得しています。

自社ECに力を入れるユニクロ

ユニクロは、自社ECサイトでの販売に力を入れており、ユニクロの下記の最新の決算情報を見ると第3四半期3ヵ月間のECの売上高は281億円、同47,7%増と大幅に上昇しております。

決算説明会:2020年8月期第3四半期業績および通期見通し

ECが好調の要因は、コロナによる自粛中での巣ごもり消費の影響も強いものの、デジタル広告やテレビCMでのオンライン販売での誘導を強化したことがあげられます。

また、オンラインにしかない限定商品を用意したり、店舗で自分のサイズが見つからない場合は、ECサイトでの購入を促し、さらにECサイトで購入した製品の店舗受取を可能にするなどオムニチャネル施策により利便性を高めております。

ユニクロは、全世界でのEC化率は2019年度で11.6%ですが、将来的には30%※まで引き上げることを計画しております。

※参考記事:「ユニクロ」国内低迷が顕著、海外ユニクロ売上高1兆円突破で差が鮮明に【決算報19秋】

EC売上増のアダストリア

「グローバルワーク」「niko and …」など多くのブランドを展開するアダストリアのECは売上増を続けております。下記はネットショップ担当者フォーラムの記事の引用です。

新型コロナウイルス感染症の影響が直撃した3-5月期におけるアダストリア単体の売上高は同56.5%減の284億4400万円。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う害宿自粛、商業施設の休業・営業時間短縮などが響いた。

こうした環境下で気を吐いたのがEC事業。大幅増収に加え、自社ECサイト「st(ドットエスティ)」の会員数は、2020年2月期末からの3か月で20万人増えた。

引用記事:コロナ禍でEC売上増! アダストリアのアパレルオンライン接客事例とは

ネットショップ担当者フォーラムの記事ではアダストリアEC売上増のポイントを以下の3点でまとめられております。

①スタッフによるスタイリング写真の投稿強化
②Instagramを通じたオンライン接客
③レビュー投稿による「顧客の声」で接客

コロナ禍の自宅待機中のショップスタッフによるSNS投稿や、レビュー投稿してくれたユーザーにはポイント付与率を高めるなど、積極的なWEB接客施策を推し進めており、接客においては、実店舗に劣るECサイトを、実店舗の接客に近づける工夫がなされているのです。

また、アダストリア、ユニクロなどのランキング上位企業に共通することはランキング上位企業の自社ECサイトはいずれも実店舗とWEBのデータを一元化することで、顧客の囲い込みに成功しており、これらの上位企業は、業界の平均伸び率を遥かに上回る勢いで成長しています。

ただし、実店舗とWEBのデータの一元化の開発には、高いハードルがあり、そのハードルを越えた企業こそがアパレル業界での勝ち組となるのです。

それでは、次にZOZOTOWNなどのアパレルEC関連のモールについて解説いたします。

アパレルECモールの流通総額ランキング(2016年度~2018年度のデータ)

この表を見てわかる通り、ZOZOTOWNが圧倒的なシェアを独占しており、2位~8位の流通総額を足しても、1位の1,184 億円には全く届きません。最新の決算では1,255億円まで伸びており、ZOZOSUITとPB失敗、ZOZOARIGATOのブランド毀損問題で色々指摘を受け、2019年9月にはYahooの子会社化しましたが、圧倒的シェアであることに変わりはありません。

ZOZOTOWNが強い理由

ZOZOTOWNは代表の前澤氏共々、様々なトピックで話題になっておりますが、実際にZOZOTOWNはどのような取り組みを行い、高い業界シェアを獲得しているのでしょうか?一つ具体例を挙げると、ECサイトに売上を高めるための徹底的なチューニングが施されています。

ZOZOTOWNは初回購入を絶対に失敗させないように、ECサイトで購入を戸惑っているユーザーに対しては、チャットボックスを表示して顧客対応したり、使えるお金の少ない10代のユーザーに対しても購入しやすいようにクーポン券の利用を促したり、見ているだけで楽しい商品一覧画面など、売上を高めるための改善が積み重ねられているのです。

さらに、集客面では、ZOZOテクノロジーズが運営するファッションコーディネートアプリのWEAR(ウェア)は、1000万ダウンロードを超え、世界中のユーザーが利用しているアプリです。

WEARをダウンロードしたユーザーは、コーディネートの写真をアップロードし、公開することができます。そしてユーザーの中にはフォロワーが多い有名人がおり、フォロワーは彼らのチョイスした商品をWEARと連携しているZOZOTOWNで、気になった商品をスムーズに購入できる仕組みになっており、ZOZOTOWNでの売上を大きく伸ばす一因になっているのです。

ZOZOは新しい取り組みに貪欲な企業で、新しいサービス開発や改善を次々と行っており、また社員の自社サービスを改善する思いは強いものがあります。こういった取り組みの結果、高い業界シェアを獲得しているのです。

2020年に業界を襲ったコロナショック!EC化の動きは加速する!

下記はビジネスジャーナルからの引用です。

コロナ禍によって、世界のアパレル業界は旅行関連業界に並ぶほどの打撃を受けた。米国の3~6月の小売売上高は前年同期比7%減であったが、アパレルは55%減であった。

引用先:ユニクロ運営のファストリ、H&M抜き世界2位に(利益ベース)…見えた“世界一”の背中

コロナショックにより、多くの産業がダメージを受けましたが、その中でも旅行業界とアパレル業界は特にダメージが大きい業界となります。

その影響で、国内ではアパレル大手のレナウンは倒産し、オンワードでは700店舗を閉鎖を決めました。またギャル向けファッションでのアイコン的存在だったセシルマクビーも全店閉鎖となり、従業員の解雇を発表しております。

参考記事:オンワード「700店大閉鎖」、コロナで旧来型アパレルは“即死”かコロナ不況で苦境にあえぐ各業界の深刻さ。航空、飲食、アパレル…

さらに都心部では、テレワークが普及したために店舗から人が遠ざかるばかりではなく、オフィスウェアの需要が下がっており、アパレル各社には大打撃となっております。そんな中、店舗ビジネスからECサイトに活路を見出す企業が増えてきております。

こうした中、アパレル各社はEC化に今まで以上に力をいれていくことになりました。オンワードは、2019年にZOZO TOWNから撤退したものの、再出店を決めております。さらに小規模アパレル事業者も、インスタグラムのライブ配信を利用して、ネット販売に積極的です。

参考記事:オンワード、全商品引き揚げた「ZOZO」にたった1年半で再出店せざるを得なかった理由コロナ直撃のアパレル 「これまでからの変革」断行 オンライン接客、商習慣の見直しも

このような動きからも2020年度はコロナショックにより、EC化率がアパレル業界はもちろんすべての産業でで高まる年となり、ECでの販売比率が実店舗に近づくパラダイムシフトが起こっているのです。

アパレルECの5つの課題

アパレルECの市場規模やランキングを把握したところで、それではアパレルEC業界には、どのような課題があるのでしょうか?具体的に解説します。

課題①日本にはアパレル店舗が多く、店舗の利便性が高いためECが普及していない!

アパレル業界においては、日本には人口あたりの店舗が非常に多く、ユーザーのアクセスが非常に良いためにECの利用率がなかなか高まらないという課題があります。下記の図をご覧ください。

◆日米英の小売店舗数の比較

経済産業省の最新の調査結果よりデータ引用:※PDF:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

赤い四角をみてもらえばわかるとおり、日米英を比較しても、日本は人口あたりの店舗が多いために、1店舗あたりの人口が、米英よりも少ないことがわかります。つまり日本はアパレルの店舗が非常に多いために、EC化率が進まない大きな原因の一つなのです。

ただ、すでに解説したとおり新型コロナウイルスの流行により、この傾向は変わりつつあります。従来の店舗を増やして売上を高めていくビジネスモデルから脱し。実店舗とECのビジネスモデルの融合を考えていかねばなりません。

課題②ECサイトでは自分に合ったサイズがわかりにくい!

EC化が進んでいるアパレル業界ですが、実はアパレルはECサイトとは最も相性の悪い業界の一つです。なぜならアパレルは、店舗であれば、試着してサイズ感を確かめることができますが、ECサイトでは、なかなか自分のサイズ感を掴むことができません。

それにも関わらず、アパレル業界のEC化率が伸びている背景には、この問題を解決するための多くのソリューションが生まれており、アパレルECのサイズ問題が解消しつつあるからです。

例えば株式会社メイキャップが提供するunisizeというサービスは、1分間の簡単アンケートに答えると、自分の身体にあったサイズを推奨してくれるサービスです。

◆unisize

画像引用先:unisize公式サイト

このようなサイズをリコメンドしてくれる仕組みは、メイキャップに限らず多数出現しており、その中でも一番大きく話題になったのはZOZOスーツでしょう。

また、Nike.comでは1回に限り「サイズやカラーの返品」を無料で行っており、NikeのECサイトで靴を買うと返品に必要な書類が梱包されており、ユーザーはサイズ感の不安を払拭する努力を行っており、とても満足度の高いサービスになっています。

◆商品と一緒に梱包される返品に必要な用紙や着払い用紙

今後、アパレル業界全体で、このような取り組みやソリューションが普及してくると、サイズ感はほとんど問題とならなくなり、ECでの買い物がユーザーに促進されていくでしょう。

課題③モールに依存せず、自社ECサイトでも活路を見出す!

アパレルEC業界首位のZOZOTOWNやAmazon、楽天ブランドアベニューには抜群の集客力があり、モールに出店・出品することで、大きく売上を伸ばすことができます。しかし、モールで利益をあげている企業も、価格競争に巻き込まれにくい自社ECサイトでも活路を見出し、売上を最大化する必要があります。

自社ECサイトの構築には大きな費用がかかり、システム使用料や決済手数料も発生しますが、それでもモールに比べるとコストコントロールしやすいメリットがあるため、集客が上手くいけばモールと共に大きな売上を生むことができます。

自社ECサイトを作るだけで、上手くいくものでもありません。自社ECサイトで成功した企業は下記のようなマーケティング施策などに取り組んで、売上を最大化しております。

・InstagramなどSNSを利用したインフルエンサーマーケティング
・デジタル広告の最適化
・検索エンジン対策
・アプリによるファンの囲い込み施策
・カート(買い物かご)周りの徹底したチューニング
・スマートフォンに最適化された画面表示

これらのマーケティング施策に加えて、先に解説したようにオムニチャネルやO2Oを導入し、実店舗とWEBの会員データを統合することで、顧客を囲い込み、リピート購入を増やすことができるのです。

これらの施策や取り組みにはノウハウがあるため敷居が高く、カンタンではありませんが、積極的なデジタル投資を行うことで、自社ECサイトで売上を最大化し、モールへの依存度を下げることにつながるのです。

課題④「在庫問題」ZOZOTOWNと自社ECサイトの在庫が一元管理できない!

ZOZOTOWNと自社ECサイトの両方を展開しているブランドも多くおりますが、売上を最大化できるメリットがある反面、大きなデメリットがあります。それが在庫問題です。

まず下記の図をご覧ください。

◆ZOZOTOWNと自社ECサイトを展開するブランドの在庫問題とは?


ZOZOTOWNに出店する場合、ZOZOTOWNで販売する商品在庫は全てZOZOBASEと呼ばれるZOZOが運営する倉庫へ納入する必要があります。

自社ECサイトを持っている場合、その在庫とは別に自社サイト分の在庫を、それぞれ別々に管理する必要があり、必然的に在庫ロスが発生し易くなってしまいます。このように在庫情報を一元化できないと、在庫が分散して売上の最大化が困難になります。

特にアパレル商品はシーズン性が強いため、売れ残りが発生すると大きなLOSSとなります。そのため、在庫の一元管理や効率化、あるいは運用フローの構築が必要とされるのですが、システムでの実現が困難であり、ボトルネックとなる企業が多いのが現状でした。

しかし、2019年10月にこの問題を解決する「Fulfillment by ZOZO(フルフィルメント バイ ゾゾ)」というサービスがZOZOグループ会社からリリースされました。

このサービスは自社ECサイト分の在庫も全てZOZOTOWNの倉庫に(ZOZOBASE)預け、在庫一元管理をします。あとはZOZOBASEが、在庫をまとめて管理をしてくれるので、販売機会を逃さず、効率的な販売が可能になるのです。さらにZOZOBASEの在庫がなくなった場合、店舗の在庫を引き当てることも可能です。

◆Fulfillment by ZOZOによる在庫の一元管理のビフォーアフター

ZOZOTOWNに出店するブランドにとって、在庫を分けて管理する事は非常に悩ましい問題でしたが、在庫一元管理サービス(Fulfillment by ZOZO)を導入することで、さらなる効率化を進めることができるのです。

課題⑤メルカリなどCtoCの隆盛により、アパレルの一次流通は衰退するのか?

かつてヤフオクなどのネットオークションは、ITリテラシーがある人たちが利用するサービスでありましたが、メルカリ等のフリマアプリは、スマートフォンでだれでもカンタンに出品できるようになったため、CtoC市場は一気に普及しました。下記図によると、2017年には6,392億円もの市場が形成されております。

◆CtoC市場

経済産業省の最新の調査結果より引用:平成 30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

特にメルカリなどのフリマアプリでは、多くの衣服やアクセサリーなどが出品されるようになり、ユーザーは、低価格で商品を手に入れることができるようになり、アパレルにおいては二次流通の市場が形成されており、一次流通の市場に影響を与えております。

しかし、このフリマ市場の拡大は防ぎようもなく、また、フリマアプリに衣服を出品する多くのユーザーが実は、古い服を売って得た売上金で、新しい服を買うという行動をとっており、実は一次流通と二次流通の間には相互補完関係もあるのです。

そのユーザー行動に目をつけたのが、メルカリです。メルカリはメルペイというスマホ決済の仕組みをつくり、ユーザーがメルカリで販売して得た売上金を、メルペイの決済を導入した企業のアパレルECから、メルカリの売上金で直接購入できる決済サービスをリリースいたしました。

参考ホームページ:メルペイ

このような仕組みは、ユーザー、アパレル企業、メルカリの3社ともにメリットがあり非常に良い取り組みだと思います。今後、アパレル事業者はECを検討する上で、CtoC市場とどのように向かい合って行くかが、求められるのです。

アパレルECのまとめ!アパレルECで重要なのは徹底的な効率化!

本日はアパレルEC市場の課題について解説しました。

アパレルECの市場規模が増えている背景には、最新のECツールやソリューションを活用した徹底的な効率化が背景にあり、さらに成功しているブランドは、オムニチャネル施策により自社ECサイトのデータの一元化を実現し、リピーターの囲い込みを行っております。これにより利益をさらに高めることができているのです。

冒頭で述べた通り、アパレルEC業界は2極化が進んでおり、今後ECサイトを展開するブランドは、最新の仕組みを導入し、効率化を進めていかなければ、コロナ禍の世界、あるいはアフターコロナの世界でも生き残るのは難しいでしょう。


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