【2021年版】10分で理解するEC業界の概要とトレンド


転職や部署異動で新たにEC担当者になると、知っているようで、知らないことの多いEC業界。EC業界とはどのようなものなのでしょうか?

社内やベンダーとの会議の話についていくために、知っておいた方が良いEC業界の概要やトレンドというものがありますが、ECはインターネットの普及と共に一般的なことになってきおり、新卒ではない方は、今さら同僚や上司にも聞きにくいかもしれませんね。

しかし、ご安心ください。この記事を上から下まで10分かけて読んでいただくだけで、EC業界の概要とトレンドを全て学ぶことができるでしょう。

本日は株式会社インターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、これからEC業界を学ぶ人のために、EC業界の概要とトレンドの全てを解説いたします。

①絶対に知っておこう!「EC化率」とは?

まず、EC業界全体を把握するために大事な指標は、EC化率です。EC化率とは、全商取引(実店舗とECを含む)の中で、ECサイトの割合を指す言葉です。それでは、最新の2020年度のBtoBとBtoCのEC化率を見てみましょう。

◆最新のEC化率(BtoC)

2020年度のEC化率は8.08%

◆最新のEC化率(BtoB)

2020年度のEC化率は33.5%

 

経済産業省の最新の調査結果より引用:「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」経済産業省

特にBtoCに言えるのが、日本国内のEC化率はまだまだ低く、しかも、右肩上がりのため、これからも成長が見込める産業だということです。また、新型コロナウイルスの流行により、感染予防の観点からも実店舗よりもネット販売の需要が今後も伸びることが予想されます。

BtoBの方が、EC化率が高い理由には、EDI※とECの区別がなく、この指標にはEDIが入っているためです。

※EDIとは、Electronic Data Interchangeの事です。企業間の商取引において必ず発生する、注文、請求、決済などの取引をデジタルに変換し、企業間のやり取りをスムーズにするシステムのこと。

EDIについてはこちらの記事をご覧ください:7つのポイントでEDIをやさしく解説!EDIの必要性と今後の課題

社内で、自社ECサイトの今後の展望のプレゼンテーションを行うなら、EC業界全体の数字は資料に掲載する必要があります。そして、業界ごとのEC化率や考察を押さえておいた方が良いでしょう。業界毎の考察は、下記の記事の下の方にまとめておりますので、こちらをご覧ください。

【2021年版】国内EC市場のEC化率|BtoCとBtoBをプロが徹底解説!

②EC通販の売上ランキングベスト30で、EC業界のトレンドを知る

EC業界を語るには、業界で売上上位を占める有力なECサイトを知ることをおすすめます。なぜなら、そこには、必ず、あなたの会社のベンチマークすべき企業があり、自社ECサイトのKPIや目標を定めるには、業界トップの企業のECサイトの売上を参考にするケースがあるからです。

では、以下、「ネットショップ担当者フォーラム」から引用した、ランキングを紹介いたします。

実際のページはこちらです。インサイトがよくまとまっているので、こちらのページも見ていただきたい記事です:【2020年版】EC売上ランキング1位はアマゾン。2位はヨドバシ、3位はZOZO、4位はビックカメラ、5位はユニクロ

※(*)売上高はインプレス社推定
※(◎)は純粋な売上ではなく、サイト全体の流通総額のケースやグループ会社合計値

やはり、Amazonがダントツの1位です。そして店舗とECサイトの連動するオムニチャネルに成功したヨドバシカメラが日本企業では最高位についています。ビックカメラも4位についており、家電系は、型番や製品名が分かれば、どの店で買っても、品質に変わりなく、より安い製品をインターネットで探す傾向が強いので、ECに向いている業界と言えます。

ZOZOTOWNが、昨年に続き3位につけています。ZOZOTOWNは、売上を伸ばすためにECサイトを徹底的にチューニングをいれ売上を伸ばしつづけています。集客に関してはWEARというファッションコーディネートアプリが1,000万ダウンロードを超え、世界中のユーザーが利用しており、気に入った服をアプリで見つければ、ユーザーはそのままZOZOTOWNで購入することができます。

また、ECにも力をいれている、ユニクロが5位についております。ユニクロでは、ネット商品の店舗受取を実施したり、店舗からユーザーをECに誘導するなどのオムニチャネル施策にも力を入れております。

このようにEC企業のランキングから、各業種のECのトレンドを読み取ることができるのです。

③EC業界で知っておくべき単語やトレンドとは?

EC業界で、押さえておくべき単語やトレンドが存在しますので、紹介いたします。

DtoC(D2C)

DtoCとはD2Cとも表記され、Direct to Consumerの略で、カンタンに説明するとメーカーが卸や代理店、ショッピングモールを通さず、直接ECサイトで販売するビジネスモデルであり、ECサイトがShopifyなどで、誰でもカンタンに作れるようになったことで、世に出てきたトレンドワードです。

知名度が弱いブランドやメーカーでも、SNS等でWEBマーケティングを上手く使うことで、フォロワーを増やし、ユーザーと直接つながることで、売上を上げることができるのです。逆に言えばSNSなどのマーケティング施策を適切に実行できなければ、なかなか商品を売ることができません。

DtoCは、EC業界では頻繁に使われる用語の一つなので、覚えておきましょう。DtoCについては下記の記事にまとめてあるので、あわせてご覧ください。

参考記事:担当者が必ず読むべき「DtoC」の解説と成功・失敗事例

オムニチャネル・O2Oとは?

EC業界を知るには絶対に、「オムニチャネル」「O2O」という言葉を理解しておいた方が良いでしょう。またこの2つは似ている施策で、混同している人が多いので、どのポイントが違うのかも明確に分けて解説いたします。

O2O

O2Oとは、オンライン to オフライン(逆の場合も使われます)の略語です。具体的には、「スマートフォンで受けとったクーポン券を、実店舗に持っていき、店員に見せて、割引で製品を購入する」という行為が代表的でしょう。つまりWEBクーポンなどを、実店舗の集客を目的に使う手法です。効果は限定的で、短期的な施策になります。

この施策を行うためには、会員のポイントデータの統合を行う必要があります。

オムニチャネル

オムニチャネルとは、ECサイトと実店舗の会員情報、受注情報、ポイント情報など、全てのデータベースを統合して、顧客は、店舗やスマートフォンなどの全ての接点から、自由に買い物や返品ができる仕組みのことで、目的は顧客満足度を追及することで、リピーターを増やして売上を向上させる長期的施策になります。

O2Oとオムニチャネルの違いは?

O2Oとオムニチャネルの違いがわからない新人を多くみかけますので、この違いを紹介いたします。O2Oはポイント情報の統合により、WEBクーポンを使って実店舗に集客する短期的施策です。

それに対して、オムニチャネルは全てのデータベースを統合し、実店舗とECサイトの境界を無くして、顧客は店舗でも、スマートフォンでも、電話でも、シームレスに買い物ができる仕組みになり、利便性が向上し、リピーターが増える施策で、長期的に利益を上げることができます。

オムニチャネルの弱点は、店舗を多く持つ企業がECサイトを積極的に展開した結果、実店舗より、ECサイトの売上が向上するため、実店舗の閉鎖や、店舗スタッフのモチベーション低下が起きます。そういう意味でも、Amazonのような、Eコマースがメインの会社が、実店舗を展開する方が、メリットが大きい施策でもあります。

オムニチャネルやO2Oに関して、もっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

国内・海外事例やO2Oとの違いでオムニチャネルを理解する【完全解説】

OMO

オムニチャネルよりも進んだ考え方が提唱されております。それがOMOです。OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オフラインでのユーザー行動をデジタル化し、オンラインに統合することで、UX(顧客体験)を向上させることが可能になるマーケティング戦略を指します。

例えば、スマホにスマホ使用率がデータとして貯まるアプリを入れて、眼科がそのアプリのデータから、生活習慣のアドバイスをするなど、オフラインをデータ化することで、顧客に素晴らしい体験を提供するのがOMOです。

OMOとオムニチャネルとの違いがわからない方がいますが、広義においてオムニチャネルとの違いはありません。狭義において、オムニチャネルはデータ連携やチャネル統合という観点で語られることが多いのですが、OMOはユーザー体験という観点から語られます。

両者に明確な違いはありませんが、より顧客起点のOMOがオムニチャネルよりもトレンドのキーワードとなっているので、オムニチャネルと一緒に覚えておきましょう。OMOについては下記記事をご覧ください。

参考記事:OMOを3つの海外・国内事例やUXで理解するプロの解説

越境EC

2015年から2016年は、業界では中国人向けの越境ECが大いに盛り上がりました。特に世間を騒がせたのは、中国人による爆買いです。多くのEC事業者は、中国人の旺盛な消費力に目をつけて、越境EC施策に興味を持ったため、業界では、越境ECがトレンドになったのです。

2020年には、新型コロナウイルスの流行により中国人の日本旅行者がいなくなったため、日本の商品を手に入れたい中国人のための需要が高まることが予想されますが、越境ECで成功している企業は少ないのが現状です。それには中国の事情が障壁として立ちはだかっています。

障壁①中国ではGoogle検索ができないため、SEO対策ができない
障壁②中国ではクレジットカードが普及していない
障壁③日本から中国国内への配送には時間がかかる

といった事情があるため、現在では、自社で作るECサイトより、中国の2大モールの「天猫(T-mall)」と「京東(ジンドン)」に出店する方法が、現実的です。

なぜなら中国人がインターネットで購入するときは検索エンジンではなく、モールで検索する人がほとんどであり、中国で最も普及しているAlipay(支付宝)やWeChat Payment(微信支付)といった決済方法にも対応しているからです。

越境ECサイト構築や課題については、下記の記事をご覧ください。

中国向け越境EC構築のポイントと実現する3つの方式とは?

ID決済の流れ

ID決済とは、クレジットカード番号の入力が不要で、IDとパスワードだけで、決済が行える仕組みのことで、代表的なものは下記の二つです。

・Amazon Pay
・楽天ペイ

ID決済のメリットは、例えば、認知度の低いECサイトに欲しい商品があった場合、ユーザーの心理としては「この商品は欲しいけど、聞いたことがない。信頼できるサイトなのかな?」という不安があります。しかし、決済方法に「Amazon Pay」や「楽天ペイ」のボタンがあれば、安心して、決済を行うことができるのです。

ログインしてしまえば、名前や住所の入力も不要です。ユーザーの不安と手間を省くことにより、EC事業者は、CVR(コンバージョンレシオ)を向上させる、売上を上げることができるのです。

Amazonや楽天にとっては、手数料収入がありますし、楽天は楽天ポイントの「楽天経済圏」をさらに広められるメリットがあるのです。

今後、EC業界で普及していくのは確実なので、「ID決済」については押さえておきましょう。詳しくは下記の記事で解説しております。

2つのID決済「AmazonPay・楽天ペイ」導入前に抑えるべきポイントとは?

経済産業省より「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策強化に向けた実行計画」

多発するクレジットカード番号の流出や、ハッキング被害により、2016年4月に、経済産業省から「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」が発表されました。これにより、EC加盟店は2018年3月までに、下記のいずれかに対応しなくてはなりませんでしたが、2019年現在も対応できていない企業が多いのが現状です。

・PCIDSSに準拠する
・クレジットカード番号を非通過にする

この両方の対応はEC加盟店にとって、大変なことです。まず「PCIDSSに準拠する」には、数千万円の費用がかかります。一方、「クレジットカード番号を非通過にする」は、決済画面のクレジットカード番号入力画面を、外部の決済会社のURLで持つことになり、実装はカンタンですが、外部のURLに飛ばすと、CVRや売上が下がるデメリットがあります。

PCIDSSについては、下記記事で詳しく解説しております。

ECサイト事業者行うべきセキュリティ対策を徹底解説!PCIDSSへの準拠が必要な理由とは?

新しいECサイト構築手法のクラウドECが普及

下記のリンクは2017年2月16日の日本ネット経済新聞の記事に、クラウドECの導入拡大が取り上げられました。今までは、ECサイトを構築する手段としては、下記の4つが主流でした。

◆今までのECサイト構築方法

1.フルスクラッチ
2.ECパッケージ
3.オープンソース
4.ASP

しかし、ASP以外の構築方法では、システムが陳腐化してしまうため、導入から3年もたてばシステムリニューアルを検討する必要があるため、3年から5年ごとに莫大なシステム投資が必要になります。(ASPは陳腐化しませんが、カスタマイズやシステム連携が不可のため、中小規模のECサイト向きの構築方法です。)

そこで、生まれたのがクラウドECという「常に最新で」「カスタマイズ・システム連携が可能」なEC構築方式です。

◆新しいECサイト構築方法

・クラウドEC

そして2021年現在、フルカスタマイズできるECプラットフォームの導入数においては、弊社のebisumartがナンバー1のシェアを持っています。長期的にシステム投資が安くなる、クラウドECによる、ECサイト構築方法は普及するでしょう。

クラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」公式サイト

誰でもECサイトが作れる時代、ECを作るのはカンタンだけど、ECを成功させるのは非常に難しい!

ここまで「オムニチャネル」や「越境EC」などの聞いたことのない言葉について解説してきましたが、もし、ECについてもっと詳しくなりたい!という方は、一番良い方法があります。それはECサイトの運営者になることです。

実は、BASE (ベイス)やSTORESという無料のASPを使えば、誰でもすぐにECサイトを作ることができます。例えば家にいらないものがあれば、それを販売する個人のECサイトをすぐに作ることができます。商品の写真があれば、それこそ10分で作ることも可能です。詳しい方法は下記の記事をごらんください。

【完全解説】無料でECサイトを開設するための4つの方法

つまり、個人であっても企業であっても、ECサイトをすぐに作れる時代のため、ECサイトを作る難易度は下がっており、特別な機能を持たせなければ、すぐに作ることができます。

しかし、ECサイトで最も難しいのは、ECサイトに人を集めるマーケティングなのです。なぜならあなた自身が、ネットで買い物するのも「Amazon」や「楽天市場」などのショッピングモールではないでしょうか?あるいは「ユニクロ」や「ヨドバシカメラ」などの誰もが知っている大手小売りのECサイトではないでしょうか?

よほどの理由がないかぎり、クレジットカード番号を入力するのに抵抗のある小さいネットショップで買い物することはないでしょう。それでも「このショップで買いたい!」とユーザーに思わせるのは大変なことなのです。ここにECサイトを成功させる難しさがあるのです。

EC業界に求められるスキルとは?

ITエンジニアの場合

ITエンジニアの方であれば、他の開発と何が違うのでしょうか?ECサイトの開発において、大切な要素はトラフィック制御です。カンタンに言うと、例えばテレビで自社商品が取り上げられると、その反響はすさまじく秒間に数千のアクセスがECサイトにやってきます。

ECサイトでは、トラフィックを上手く制御しながらECサイトを落ちない(動きを止めない)ようにする技術が求められます。Amazonのサイトが毎日世界中から大量のアクセスがあっても、決してサイトを止めず、ECを運営するのは、実は大変な技術が必要になるのです。

ネットショップ担当の場合

年商が1億円未満のネットショップを担当する場合に求められるスキルは、それこそ経営者のように、全てのスキルが必要になります。ざっくりとあげるだけでも下記のようなスキルがあります。

◆ネットショップ担当に必要なスキル

・商品の仕入れ・在庫管理
・ささげ業務(撮影・採寸・原稿)
・商品発送
・顧客対応・返品対応
・広告やWEBマーケティング
・業者との交渉

大変ではありますが、逆にこれだけのスキルを身につけることができれば、どんな会社でもEC担当者として非常に重宝されるのは間違いありません。そしてEC業界の大きな課題ですが、ECの運営を担当できる人材が非常に少ないのです。

特に、ECを成功させるために絶対に必要なWEBマーケティングスキルを持っている方はごくわずかしかおらず、このスキルがあれば収入で困ることはないでしょう。どの企業であっても優れたマーケティング担当の採用をおこなっており、高い収入を見込めるからです。

あらゆる産業がECに進出する!EC業界は面白い!

私の経験ですと、日本の大手の小売業では、EC部門が花形部門ではない会社が多いのが実情です。しかし、冒頭で紹介したとおり、日本国内ではEC化率は毎年右肩上がりで、今後も、さらなる成長が見込める分野であることは確実です。さらに、コロナ禍の時代、実店舗からネットへの動きが加速しております。

今後、企業が成長を重ねるには、ECへの参入や、店舗とECの垣根を無くすオムニチャネル戦略が増えていくでしょう。そしてEC業界は、移り変わりの激しい業界です、毎年新しいトレンドや、施策が生まれる、非常に面白い業界であることは、私は断言します!


ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。