7つのポイントでEDIを優しく解説!EDIの必要性と課題


EDIとは、「Electronic Data Interchange」の略称で企業間の「電子的データ交換」という意味です。つまり、BtoBの企業間取引においては、

①受注・発注
②出荷・納品
③請求・支払

等の各種取引情報のやり取りが多量に発生し、この処理を紙伝票や電話・FAXで業務を行うと膨大な手間・コストが双方の多大な負担になります。これを企業間でお互いの取引情報を専用回線(オンラインを含む)で接続し、自動化した仕組みがEDIなのです。

ほとんどのEDIは固定電話網を使っておりますが、2024年より段階的にIP網にEDIが移行していきます。そのため古いEDIの刷新や、インターネットに親和性の高い流通BMSやWEB-EDI、ECシステムへの移行の動きが加速することが予想されます。

本日は、インターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が、EDIの概要が把握するためのEDIの必要性や課題を7つのポイントにして解説いたします。

中小企業にEDIが普及しない要因の多くは「EDIが使いずらい」こと

大企業に比べて、中小企業のEDIの普及は遅れております。下記のデータをご覧ください。

◆2016年のIT普及率のアンケート結果(中小企業)

データ引用先:2018年版「中小企業白書」全文

このデータを見ると、中小企業ではEDIの普及が大手に比べて遅れていることがわかります。中小企業でも、顧客が大企業の場合は、顧客にデータ基盤を合わせる必要があるためEDIが普及しておりますが、そうでない場合は、中小企業では従来のFAXやメールでの受発注が現在でも中心なのです。しかし、下記著書によると

著作集第9巻「中小企業・小規模事業者におけるEDI・IoTの活用」 松島桂樹著作集

従来のFAXやメールによる受発注を行っている中小企業は企業風土や社長のITリテラシーが低いために、EDIを導入できないのではなく、単にEDIの利便性が低いためだと主張しております。

例えば、発注画面が非常に見にくく操作方法もマニュアルを見ないとわからない画面構成であったり、発注側によって扱うEDIが複数になってしまえば、受注側はEDIを導入していても非常に非効率です。

そしてEDIの多くはスマホの画面で見ることができず、オフィスのPCでなければ、受発注を確認できません点は非常に不便で、経営者も商談先や外出先でリアルタイムに受発注の判断を下すことができません。

そうなると、結局はFAXやメールなどの手法こそが発注側が複数であっても、受注側からすれば一本化された受発注方式であり、実は古い受発注方式が中小企業にとっては効率的と言わざるを得ない現実があるのです。

そのため、今後EDIはインターネットベースの回線を使用し、さらに経営者がスマホで受発注を確認できるなどの利便性を高めていかなくては、中小企業のEDI普及は難しくなるでしょう。それでは、このような背景を含めて、EDIを理解するために、7つのポイントに分けて解説いたします。

EDIを理解するための7つのポイント

ポイント①BtoBの取引の業務効率化にEDIは必要不可欠!
ポイント②EDIによってデータ品質が向上し、顧客サービスが向上!
ポイント③内部統制の徹底にEDIは欠かせない!
ポイント④EDIの導入は買手主導になり、売手には都合が悪いことも
ポイント⑤企業競争力を高めるEDIとは?
ポイント⑥EDIのほとんどが固定電話回線!
ポイント⑦WEB-EDIとは?

ポイント①BtoBの取引の業務効率化にEDIは必要不可欠!

EDIの必要性について、EDIを導入していない企業と、導入した企業を比較して解説いたします。

下記はEDIを導入していない企業の受発注を図にしたものです。

◆EDIを導入していない企業間取引の例

このように、紙や郵送ベースの取引には両社に大きな負担がかかります。また、紙を見ながら手作業は社内システムに入力時に誤入力が頻繁に発生するため、効率が非常に良くありません。では、EDIを導入すると、どのような仕組みになるのでしょうか?

◆EDIを導入した企業間取引の例

このように企業間で、下記①~③の取り決めを行い、

①取引プロセス
①データの形式・内容
②通信プロトコル

EDIを導入することで、受発注のための伝票を作り、郵送する必要がなく、専用回線で「正確・迅速・低コスト」で企業間取引を一気に効率化できるのです。取引規模が大きくなると企業間取引には、EDIの導入は欠かせません。

また、企業間双方が商品の売上や在庫情報のデータを共有することで欠品を防ぎ、無駄な在庫を生まないように、流通の最適化を図る狙いがあります。

ポイント②EDIによってデータ品質が向上し、顧客サービスが向上!

EDI導入によって、伝票入力等の手作業が減るので、データの品質が向上します。データの品質が向上するとデータ不備や重複によって、莫大なコストがかかっていた顧客サービスの品質も向上するため、コスト削減に結びつきます。

よくある品質のバラつきは、地域・拠点ごとにデータのルールや管理体系がまとまっておらず、その結果、データの集計の信ぴょう性も低かったり、集計の際に人手によるデータ補正をする企業もありますが、そういった手間も省くことになるのです。

ポイント③内部統制の徹底にEDIは欠かせない!

受発注の最適化だけがEDIのメリットではありません。企業の内部統制にもEDIは必要になってくるのです。

内部統制とは会社の経営目標達成のために、社員に対して一定のルールと業務プロセスを整備することです。よって内部統制では重要な書類やデータを電子化し、信頼性を高める必要があります。

しかし、内部のデータだけ整備しても、外部の会社から送られてくるデータが電子化されていないと、信頼性に欠けてしまいます。こういった内部統制の面からもEDIを取引先に求める背景があるのです。

ポイント④EDIの導入は買手主導になり、売手には都合が悪いことも

しかし、企業間のEDI導入においては、買手がシステム導入の主導権を握り、売手が相手のシステムに合わす形になることが多く、企業間の力関係に強く影響を受けます。

また、売手にすると取引先企業は複数社あり、売手は相手によって、複数のEDIを導入している企業もあるのです。このような個別の企業間EDIを「個別EDI」と呼びます。

それに対して地域や業界のくくりで標準化されたEDIを「標準EDI」と呼びます。同じ標準EDIを使う企業同士は、規格が同じため導入がスムーズです。しかも下記の図のように、複数社間で同じEDIを使うことができ、大変効率的であり、このような規格が進めば社会的なロスも大きく軽減されます。

標準EDIが進めば企業同士が対等にデータ交換を行うことができ、他の取引先への導入が容易なため、下請け企業にも大きなメリットがあるのです。

◆標準EDIを使う企業同士の例

しかし、標準EDIには業界や業種毎に多くの規格が存在しており、流通BMSのような業種・業界を超えた標準化が必要になってきております。

ポイント⑤企業競争力を高めるEDIとは?

EDIは単なる受発注の効率化を促すためのものではありません。買手と売手がEDIで迅速で正確なデータ交換をすることで、

①需要予測
②生産計画
③販売計画
④在庫計画

①から④の最適化を2社間で行うことが可能です。例えば自動部品メーカーのEDIではEDIから提供されるデータを見て、3ヵ月先の需要を予測して部品の生産を行っており、自動車製品において需要の調整が、1企業の枠を超えてEDIによって行われているのです。

また、グローバル企業の高度なEDIは、例えばアメリカの会社が日本のサプライヤーに発注をEDIで送りますが、仮に日本に在庫がない場合は、日本からEDIで「在庫無しという情報」がアメリカの企業に送られます。

そして、その情報を得たアメリカの企業のEDIは他の国のサプライヤーに自動で発注をかけます。この世界をまたぐ企業間のやり取りが「たった数秒の間」に行われるという早業なのです。

このようにEDIとは単なる受発注システムではなく、EDIの完成度が、企業の競争力の一因となる場合もあるのです。

ポイント⑥EDIのほとんどが固定電話回線!

EDIの歴史は古く、1970年代から存在します。そのため企業間の回線として、固定電話回線が通信インフラになってきていましたが、電話回線は通信速度が遅く画像データの送信ができないなど、時代遅れの通信インフラになっています。

しかも、NTTは固定電話加入増が見込めないことから、2020年に固定電話回線の随時廃止を決定しました。これにより、2020年から2025年ごろにかけて段階的にIP網へ移行されていきます。その動きに伴い、今後のEDIの通信インフラの変更(固定電話回線→IP網)が、業界の大きな課題になっており2024年問題と言われるおります。

2007年4月に発表された標準EDIの「流通BMS※」の通信インフラはインターネット回線を使った新たな標準EDIです。

今後は流通BMSの普及が、EDIの普及のカギを握りますが、システムコストが負担となりますが、WEB-EDIであればシステムコストが安く気軽に導入できる反面、標準化されていないので、取引先毎にWEB-EDIが異なる場合があるというデメリットがあるのです。

※財団法人流通システム開発センターの商標登録です。

流通BMSが普及すれば、EDIも普及するのか?

流通BMSとは「流通ビジネスメッセージ標準」の略で、

・メーカー
・卸
・小売り

3者で統一のフォーマットであるEDIの標準仕様です。現在普及しているEDIの多くは、この1980年代に策定された「JCA手順」と言われる古い仕様をもとに作らているため、EDIには下記の課題が発生しております。

◆JCA手順による課題

・通信インフラが電話回線で非常に遅い
・電話回線のモデムが入手困難
・業務レイアウトが企業毎に不統一
・漢字や画像が使えない

しかし、流通BMSの仕様では、上記の課題を下記のように解決しております。

◆流通BMS

・インターネット回線で高速
・インターネット回線があればすぐ利用可能
・業務レイアウトの標準化
・XML形式による自由なデータ表現

つまり、流通BMSにより、JCA手順で不便だった点が改善されるのです。イトーヨーカドー、イオン、西友など、影響力が強い大手が、流通BMSを採用する至ったため、流通BMSがEDIの標準的なフォーマットとして、各社に波及しつつあります。

しかし、流通BMSの導入にはシステムコストがかかるので、次に紹介するWEB-EDIはコストが安いことから、今後は、レガシーEDIは「流通BMS」か「WEB-EDI」か?という選択に迫られるでしょう。では次にWEB-EDIを解説します。

ポイント⑦WEB-EDIとは?

WEB-EDIとは、インターネット回線を使ったブラウザーベースのEDIのことです。電話回線やモデムがなくても、インターネットとPCのブラウザーがあればコストが安く手軽に導入できます。

2020年~2025年ごろには固定電話回線が段階的に廃止になりますから、今後はインターネット回線を経由し、データーのやり取りを行うWEB-EDIへ移行する企業も増えて行くでしょう。WEB-EDIはブラウザーベースで、専用ソフトを端末にインストールする必要はなく、クラウド型のWEB-EDIが市場のほとんどを占めています。

従来のEDIと比べて、安価でインターネットとパソコンがあれば、すぐに導入可能です。しかし、WEB-EDIには大きな問題があります。それは標準化されていないことです。

WEB-EDIは標準化されていない!

WEB-EDIは標準化されておらず、個別EDIと同じで、取引先が異なれば異なるWEB-EDIを導入しなくてはなりません。もし、取引先が1社の場合は問題ありませんが、複数社いる場合、EDIも異なるので手間になります。

流通業界においては、標準EDIとしては流通BMSが主流です。流通BMSの1機能として、WEB-EDIがありますが、あくまで流通BMSの補完的な1機能に過ぎません。なぜなら、流通BMSではWEB-EDIのみの提供を行っているわけではないのです。

ですから、WEB-EDI導入はコストが安くなる半面、取引先が増えると、かえってコストや負担が掛かってしまうこともあるのです。また、WEB-EDIを発注先が受注先に提供する場合は、受注先にWEB-EDIの使用料を求めるのが一般的で、初期費用が安くとも、受注先が増えると運営コストが増えていきます。

複数の受注先のWEB-EDIをRPAで自動化

WEB-EDIは、インターネット環境があればすぐに導入できるために普及が広がりましたが、先ほども解説したとおり、流通BMSのような標準仕様がないため、受注先によってWEB-EDIの仕様やフォーマットが異なり、受注側の負担が大きくなるケースも多いのです。

しかし、それを解決するソリューションが「RPA(Robotic Process Automation)」です。RPAは人が行うPCでの作業をロボットで自動化するもので、WEB-EDIの実際の作業とは

◆WEB-EDIの主な作業内容

・ログイン
・ブラウザー画面操作
・ファイルのダウンロード・アップロード

といった単純作業が多く、それらの作業をRPAで自動化し、複数のWEB-EDIを同時に処理するなど、人がWEB-EDIで作業を行うよりRPAの方が早くて正確に作業を実行できるのです。

RPAを導入することで、企業毎には効率化は可能ですが、社会全体の生産性を上げるためには、WEB-EDIにおいても、仕様・フォーマットを標準化することが求められます。

WEB-EDIについては、以下の記事でも詳しく取り上げており、WEB-EDIをご検討している方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

参考記事:Web-EDIとはインターネット回線を利用した電子商取引のこと

では、最後にEDIとECの違いについて解説いたします。

EDIとECの違いは?

BtoB市場においてもECサイトの導入が増えてきております。では、EDIとECの違いはどこにあるのでしょうか?

EDIは決まった取引先とのデータ共有に留まりますが、ECサイトであれば日本中・世界中が取引先になります。しかし、よくある疑問ですが「BtoBなんて、ニッチ市場だから取引先相手は決まっている。ECサイトは無駄だ」と思われるかもしれません。

しかし、例えば、特殊部品を扱う製造業のBtoB企業がECサイトを開設すると、

「WEBで検索から、今までとは違う新規の取引先が生まれた!」
「ニッチ部品だから、個人から受注が発生した!」

といった声もあり、このように商圏を日本中に広げることが可能でBtoB-ECサイトには大きな可能性があります。

そして、EDIには顧客管理という発想がなく、顧客データが溜まらないためマーケーティング施策が行いにくい現状がありました。一方ECサイトでは、元から顧客管理の概念を持っていますので、顧客データベースとの連携によって、高度なWEBマーケティング施策を行うことが可能です。

デジタルマーケティングの隆盛により、今後はBtoBの分野においてもデジタルマーケティングを有効活用することが非常に重要になってきています。顧客管理をすることによって顧客行動を分析し、顧客毎に最適な広告を最適なタイミングで表示することができます。

最近はインターネットでBtoB-ECによる広告もよく見られるようになってきました。こういった取り組みによりマーケティングの最適化を図るには、EDIで受発注の管理をするだけではなく、BtoB-ECによって顧客管理を実施していく必要があります。

ECサイトは今や、フルスクラッチではなくとも「ECパッケージ」や「クラウドEC」をカスタマイズすることで、様々なデータベースとの連携や、BtoB独特の商習慣(卸売り、掛け売り)にも対応しているため、EDIに見劣りしない機能の実現が可能です。

日本企業は、古いEDI等のレガシーシステムに依存したビジネススキームになっていることが多く、 DX(デジタルトランスフォーメーション)  を推進するにあたり大きな課題となっています。

この課題については経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」にも明記されており、レガシ―システムがブラックボックス化することでDXを推進することが出来ず結果的にDXの流れに取り残されてしまうことが解説されています。

レポートではこの課題への解決策として、レガシーシステムを捨て、SaaSやクラウドシステムを積極的に利活用することで、DXに対応し競争力を高めることが必要であるという見解を示しています。

弊社のebisumartはSaaSのECサイト構築システムであり、BtoBに必要な機能や拡張性があり、様々な業種で利用いただくことが可能です。

SaaSのECサイト構築システム;ebisumart(エビスマート)


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。