AIを活用してECサイトの運用を効率化する7つの機能とは?


昨今話題となっている「ChatGPT」のような高性能なAIが登場したことで、世界の変化が加速すると言われています。実際にAIの活用が進むことで、EC機能の実装方法やサイトの運用方法も大きく変化すると筆者は考えています。

◆AIの活用で効率化するECの7つの機能

本日は、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、AIを活用することで効率化できるECの7つの機能について解説します。

AI活用で効率化するECの7つの機能

AIを活用することで効率化が加速するECの7つの機能をそれぞれ解説します。

機能① 対話型AIチャットボット

ECサイトでは、実店舗のように販売スタッフが接客することができないため、チャットによるWeb接客機能を実装する方法が用いられます。

◆利用者がチャットを利用するシチュエーション(例)

・探している商品が見つからない
・商品についてもう少し質問したい
・購入決済が完了できない

すでにEC向けWeb接客ツールでは、AIチャットボットサービスが提供されており、導入しているECサイトも少なくありません。

AIチャットボットは、ユーザーがチャットで入力した質問に対して、最適な回答を返します。チャットに利用されているAI技術には以下の2つがあります。

◆2つのAI技術

① 機械学習
② ディープラーニング(深層学習)

参考:株式会社ユーザーローカル「チャットボットを導入するなら知っておきたいAIのこと

現在提供されているAIチャットボットサービスの多くが「① 機械学習」によるAIで、手頃な料金で利用できるものが多いのですが、その分、高精度なAIには劣ります。

「② ディープラーニング」によるAIチャットボットサービスは、導入するだけでも数百万円かかるほど高価なものが多く、また、有効な回答を得られるようにするために多様な学習用データセットが必要になるため、精度を高めるまでに時間を要します。

しかし現在は、オープンソース(ソースコードが公開されており、誰でも自由に利用できるソフトウェア)の「ChatGPT」が登場したことで、自然な対話が可能なAIチャットボットサービスを、誰でも容易に実装できるようになりました。すでにChatGPTを使用したLINE用のチャットボットサービスなどが、提供され始めています。

参考:PC Watch「ChatGPTを使ったLINE用チャットボット。友だち登録で利用可能」(2023年3月16日掲載)

機能② 商品説明文の自動作成

ECサイトで商品を売るためには、商品情報の掲載が不可欠です。この、商品情報を制作するための業務は、3つの作業の頭文字を取って「ささげ業務」と呼ばれます。

取り扱い商品数が多いECサイトでは、この「ささげ業務」の頻度も量も増えるため、担当者の負荷が高くなります。

◆「ささげ業務」の3つの作業

・撮影(つえい)
・採寸(いすん)
・原稿(んこう)

AIは「ささげ業務」の支援ツールとしても大いに活躍すると期待できます。

例えば、ChatGPTを使用すると、従来はライターが苦労して作成していた商品説明などの文章が即時に作成できます

試しに、GPT-4(ChatGPT Plus、有料版)で以下のプロンプト(命令)を入力し、商品説明文の作成を依頼してみました。

◆ChatGPT Plusに与えたプロンプト(命令)

「ハンディ扇風機 軽量 片手で操作可能 5時間の長時間利用可能 色は5種類」というキーワードをもとにECサイトで使う商品説明文を考えてください。

◆ChatGPT Plusが作成した商品説明文

当社のハンディ扇風機は、軽量で片手で簡単に操作できます。最大の特徴は、長時間利用可能な5時間のバッテリー寿命です。これにより、あなたの快適さを確保しながら、暑い夏の日々を楽しめます。5種類のカラーバリエーションも用意しており、お好みの色をお選びいただけます。旅行やアウトドア、オフィスでの使用に最適な製品です。ぜひ、お試しください。

15秒程度で、上記の商品説明文が出力されました。さらに修正が必要な場合には、追加のプロンプトを与えることで改善案を作成してくれます。また、複数パターンの文章の作成依頼にも、プロンプト次第ですぐに回答を提示してくれます

筆者も実際に使用してみて、すでに、EC業務が未経験、あるいはライティングが不得手な人間が作成した文章よりも優れた文章を、短時間で作成できると感じました。

現時点ではまだ内容や日本語表現の正確さなど不足している面もありますが、それもすぐに改善していくのではないかと思います。

機能③ SNS運用の自動化

ユーザーとのコミュニケーションではSNSは有効な手段となります。ECでは広告のためにSNS投稿を用いることもありますが、投稿が宣伝ばかりでは、フォロワーが離れやすく、アカウントの影響力を維持することが難しくなります。

そのため、自社アカウントに最適な投稿が何かを分析・調査しながら、最適にSNSを運用していくことが大切になります。このようなSNS運用でも、AIを活用した効率化が始まっています。

2023年3月にBsidefunny株式会社が、ChatGPTを搭載したTwitter運用自動化ツール(「TwitterRobot」)をリリースしています。従来のSNS運用の一部の作業をAIが代行することで、SNS運用担当者の作業工数を85%削減できる可能性があるとのことです。

参考:PressWalker「【ChatGPT搭載】Twitter運用自動化ツール」(Bsidefunny株式会社、2023年3月14日発表)

ただし、Twitterではこれまで無償提供していたTwitter APIについて、2023年3月30日から新しい有料プランの提供を開始しました。これによりサービス内容の縮小や、停止を発表しているサービスもありますので、利用の際には注意が必要です。

◆「TwitterRobot」で自動化できる業務

・ターゲットユーザーをツイート内容から検索
・特定のツイートをしているユーザーに対していいねの実施
・特定のツイートをしているユーザーに対してDMの送付
・特定のツイートをしているユーザーに対して一括DMの送付
・ターゲットユーザーのCSV化
・特定のアカウントのリツイート欄から検索
・特定のアカウントのリツイートをしているユーザーに対していいねの実施
・特定のアカウントのリツイートをしているユーザーに対してDMの送付
・特定のアカウントのリツイートをしているユーザーに対して一括DMの送付
・リツイートをしているユーザーのCSV化
・公式アカウントの検索除外
・BOTアカウントの検索除外
・業者アカウントの検索除外
・ChatGPTを活用した自動ツイート文の作成

引用:PressWalker「【ChatGPT搭載】Twitter運用自動化ツール」(Bsidefunny株式会社、2023年3月14日発表)の「TwitterRobotの製品特徴」より

もちろん、AIが優れているといっても、現時点では、必ず成功するコンテンツの自動作成などは現実的ではありませんが、今後は、ルーティン業務やレポーティングなどの作業をAIツールに任せるという方法が主流になっていくのではないでしょうか。

機能④ ブログ記事の自動作成

Webサイトの集客施策として、サイト内にブログを設置し、ターゲット層がキーワード検索した際に検索結果の上位に記事が表示されるようにSEO対策を施して、アクセス数を増やす方法があります。この方法では1記事ごとに対策が必要なため、記事を完成させるまでに時間と手間がかかります

記事のライティングを外注している企業も多いと思いますが、ChatGPTが登場したことで、今後は、適切なプロンプトを作成することで記事作成を自動化できるようになります。

すでに世界中でChatGPTを搭載した文章作成サービスが提供され始めており、低料金で記事を作成することができます。もちろん、自分でChatGPTを使用して、記事を作成することも可能です。

ChatGPTを利用して記事を自動作成する場合には、既存の他のサービスの運用への影響に留意が必要です。

例えば、Googleでは自動生成したコンテンツの使用自体は禁止していませんが、検索ランキングの操作を目的として生成された記事はスパムと判断することなどが明示されています。Googleは、自動システムあるいは人間がポリシーに違反しているコンテンツと挙動の両方を検出しており、違反が認められたサイトは、検索結果の掲載順位が下がったり、検索結果に表示されなくなったりする場合があります

参考:Google検索セントラル(検索の基本事項)「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー

機能⑤ CRM関連の運用(分析・コンテンツ配信など)の自動化

売上を伸ばすためには、いかに「リピート購入」を増やすかという点も重要です。ECでは、会員向けのCRM戦略の一つとして、データ分析で特定した顧客セグメントごとに、リピート購入を促すためのメールマガジンやステップメールなどを作成・配信するなどの運用を行います。

このようなCRM関連の運用でも、AIを活用した自動化が進んでいます

AIを搭載したCRMツールを利用することで、顧客やサイトのデータ分析、効果的なコンテンツの作成や最適なタイミングの配信など、CRM関連の運用を自動化できます。

従来は、シナリオの作成と設定やメルマガの作成などは、ある程度のCRMおよびツールに関する知識と経験を持った人材でなければ、効果的な運用が難しい業務でした。しかし、効果的な運用を標準化した上でAIツールを使用することで、誰でも簡単に運用できるようになる可能性があります。

参考:日経クロストレンド「セールスフォースがChatGPT対応 マーケ業務も生成AIが必須に」(2023年3月8日掲載)

機能⑥ サイト内表示のパーソナライゼーション

ECサイトを訪れたユーザーに初回購入を促すための仕組みづくりと運用も大切です。初回購入者向けの特典を用意することで、新規ユーザーの購入意欲を促進します。

初回購入を促進するための施策(例)

・クーポンやポイントなどの特典
・興味を引くための目玉商品
・送料無料、ギフト包装無料などのメリットの明記

そのために役立つのが、AIを搭載したパーソナライゼーションツールです。

AIツールを使用することで、サイトを訪れたユーザーが「新規顧客」か「既存顧客」か、また購入実績の有無などを識別して判定し、ユーザーごとに、サイトのトップページに異なるコンテンツやバナーを表示できるようになります。

◆AIツールで表示するバナーを判定(イメージ)

ECサイトの見せ方をパーソナライズすることで、ユーザーの購入意欲を促進したり、意思決定を後押ししたりすることができます。上図でも示したように、この機能は新規だけでなくリピート購入施策にも使用できます。

機能⑦ 企画やアイデアの洗い出し

企画やアイデアを洗い出す際の優れた味方として、AIツールを利用することもできます。以下は、ChatGPT Plusを使用して筆者が与えたプロンプトとその回答です。

◆ChatGPT Plusに与えたプロンプト

私は置時計を専門とするネットショップです。新商品のアイデアを考えています。若者向けに良い商品アイデアを考えてください。

◆ChatGPT Plusが考えた商品説明文

若者向けの置時計に関する新商品アイデアは以下の通りです。

1. スマート置時計: スマートフォンと連携し、天気予報やカレンダー、通知、音楽コントロールなどの機能を備えた置時計です。Bluetoothスピーカー機能も搭載し、スタイリッシュなデザインで若者の部屋にもなじむようにしましょう。

2. 環境に配慮したエコ時計: ソーラーパネルや自然エネルギーを利用した置時計で、若者の環境への意識を高めることができます。リサイクル素材や環境に優しい素材を使用したデザインも魅力的です。

3. カスタマイズ可能な置時計: インターチェンジャブルなフェイスやフレームで、若者が自分の好みや部屋のインテリアに合わせてカスタマイズできる置時計です。オンラインで独自のデザインを作成できるサービスも提供しましょう。

4. プロジェクション置時計: 天井や壁に時間や天気予報などの情報を投影する置時計で、寝る前や起きる時に便利です。また、若者が好む映画やアニメのキャラクターを投影する機能も追加すると人気が出るかもしれません。

5. ストレスリリーフ機能付き置時計: 瞑想タイマー、リラックス効果のあるライトやサウンド、アロマディフューザーなどの機能を搭載した置時計です。若者のストレス解消やリラクゼーションに役立ちます。

これらのアイデアをベースに、ターゲットとなる若者の趣味や関心に合わせて商品開発を行うことで、人気のある置時計を作ることができるでしょう。

手元のスマートフォンですぐに時間を確認できる現代では、それほどニーズがなさそうな置時計の新商品について、アイデアを考えてほしいと依頼してみたところ、ユニークかつ実際的なアイデアを提案してくれました。

ルーティン業務やいわゆる「作業」と呼ばれる領域だけではなく、クリエイティブ領域でもAIの働きによる進化が期待されています

まとめ

今回はAIを活用することで効率化できる7つのEC機能を紹介しました。

今最も注目されているAIの「ChatGPT」も、最新版のGPT-4のリリースから日の浅い現時点では、嘘の情報を提示したり、情報漏えいなどにおける未知数のリスクを抱えていたりと、まだまだ発展途上にあります。しかし、今後も幅広い領域で多種多様なユーザーが利用することで加速度的に成長し、それに伴い、関連する法規制やルールなども整備されていくでしょう。

かつて、「Microsoft Windows 95」が登場し、PCが普及するきっかけとしてITの歴史に刻まれる出来事となりました。同様に、「ChatGPT」はAI時代のメガトレンドと言えますので、今すぐご自身の業務の中でも積極的に使ってみることをおすすめします


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。