【2019年版】国内EC市場のEC化率|BtoCとBtoBをプロが徹底解説


経済産業省が2019年4月に2018年の日本のEC市場、日米中の3ヵ国の越境EC市場などに関する市場調査を発表しています。本日は、経済産業省の調査結果をもとに、EC化率について記事にしました。

当記事においてデータや図は指定がない場合、経済産業省の最新の調査結果より引用:平成 30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)

まず、EC化率とはなんでしょうか?例えば、経済産業省のデータから2018年のBtoC食品産業(食品・飲料・酒類)の例で説明します。

食品産業のネットとリアル(実店舗)を含めた全商取引は、64兆871億円。そのうちECサイトなどの電子取引されているものが、1兆6919億円です。ですから食品産業のEC化率は2.64%と言えます。

■食品産業を例にとったEC化率
1兆6919億円(EC取引総額) /  64兆871億円(全商取引総額)= 2.64%(EC化率)

さらに、全産業(物販系の)におけるEC化率は6.22%であることから、食品産業のEC化率は、他の業界に比べると進んでいない業界であることがわかります。

EC化率からわかるのは、その産業で、どれくらいEコマースが使われているかという指標です。これからビジネスを起こす人や新規事業の担当者は、EC化率を念頭に置いてビジネスプランを立てることで、将来性や競合環境の概要を把握する事ができるのです。

EC化率が高ければ、オンラインを基軸に戦略を置くことになりますし、一方でEC化率が少なければ競合他社の参入が少なくチャンスかもしれません(産業によってはEC化の敷居が高く、参入が困難な場合もあります)。

本日は、このEC化率について、最新の経済産業省のデータをもとにインターファクトリーでWEBマーケティングを担当している筆者が解説してまいります。

BtoBのEC化率は記事最下部で紹介しております。すぐに見たい方はこちらをクリックして、ページ下に移動してください。

日本国内のBtoCのEC化率は6.22%

海外のEC化率と比べると、アメリカのEC化率は約10%、中国では約15%を超えており、日本におけるECの普及は遅れているのが現状ですが、全産業においてEC市場は伸び続けおります。

そんな中、2018年度のBtoCにおける日本国内のEC市場規模は17兆9,845億円で、EC化率は6.22%で市場規模が対前年比8.12%増になりました。

2017年、2018年と連続して伸び率は10%を超えていませんが、2018年度における日本の実質GDPがほぼゼロ成長だったにも関わらず、ECの市場規模は前年より約1,5兆円も伸びていることから、EC市場は堅調に伸びている印象を受けます。

◆BtoCのEC市場規模とEC化率の推移

EC化率の伸び率が昨年同様にあまり伸びていない理由を経済産業省の仮説を含め、筆者は下記①~③のように推察しました。

理由①リアルとECの垣根がなくなってきた

企業のオムニチャネル化の推進により、リアル(対面販売)とECの垣根がなくなってきました。そのためECでの売上がリアルに計上されることが多く、EC化率が鈍化しているわけではなく販売の形態が変化していると考えられます。※例:ECで注文し、店舗受取などの形態

理由②市場規模が大きい業界でEC化が進んでいない

EC化が進んでいる産業とそうではない産業の二極化になっています。家電や電子書籍などの業界はEC化が進んでいるのに対して、食品業界や医薬品業界などは市場規模が大きいにも関わらず、ITの導入が遅れておりEC化が進んでおらず市場が活性化できていないのが原因とみられます。

理由③母数である全産業の市場規模が大きくなっており、EC化率が低く見える

EC化率を上げることとは、大まかには下記のことを指します。

「EC化率を上げること ≒ 企業がEC関連のサービスを拡充させること」

しかし、2018年度は日本の実質GDPがほぼゼロ成長となりEC化を押し上げるベースの成長がありませんでした。サービスの拡充には当然投資が必要となりますが、ベースの経済成長が無かった分、日本ではEC関連の投資が以前よりも後手に回っている印象を受けます。

逆に、EC化率の高い中国は、高度経済成長期とEC拡大期が見事に合致し、企業側の投資がEC関連に集中したため、加速度的にEC化率が上がったものと推測されます。

 

今後は携帯電話の通信システムにおいて「5G」普及することで、ECの利用がさらに進むと筆者は予想します。日本国内においてスマートフォンの普及率は横ばいですが、5Gがもたらす「高速・大容量化」「超多数端末接続」「省電力・省コスト化」の影響で、新しいサービスやIOTが普及することにより、多くの産業においてデジタルシフト化が加速します

それにともない、ECを結び付けたサービスも多く生まれると捉えられます。日本での5Gの本格的普及は2020年以降と予想されていますが、各産業、各企業において5Gを念頭においたサービスの開発が進んでおります。

日本国内の3つのBtoC分野別EC市場規模

分野別は下記表の通りとなります。

◆分野別の市場規模及びEC化率の表

物販系分野は、9兆2,992億円で、伸び率8.12%(前年対比6,984億円増)
サービス分野は、6兆6,471億円で、伸び率11.59%(前年対比6,903億円増)
デジタル分野は、2兆382億円で、伸び率4.64%(前年対比904億円増)

総計としては、伸び率が8.96%と、昨年の9.1%を少し下回る結果になりました。物販系分野、サービス系分野は昨年よりも伸び率が上がったのに対して、デジタル系分野の伸び率が4.64%と伸び率が急激に鈍化し、足を引っ張ってしまったことが要因と考えられます。

デジタル系分野においては、NetflixやHuluなどの有料動画配信サービスの普及が進んでおりますが、デジタル系分野において、最も大きい市場である「電子出版」の伸び率が2017年度の20.1%から2018年度には7.57%に落ち込んでしまったことにより、この分野の伸び率を下げた最大の要因です。

それではEC化率が公開されている「A物販系分野」から「Bサービス系分野」「Cデジタル分野」を順に解説いたします。

A.物販系分野のEC市場規模

A-1:EC市場においてもっとも伸び率が高かった分野とは?(物販系分野)

2位:「食品、飲料、酒類」 8.6
3位:「雑貨、家具、インテリア」  8.54
4位:「書籍・映像・音楽ソフト」  8.39

※データから見れば1位は「その他」ですが、詳細がわからず考察ができないため、2位以下を解説いたします。

EC化率における「伸び率」の観点で言うと、物販系分野は対前年度8.12%となり、昨年よりも伸び率が高まったカテゴリーになります。

EC化率の伸び率が最も高い分野は「食品、飲料、酒類」「雑貨、家具、インテリア」「書籍・映像・音楽ソフト」です。

「食品、飲料、酒類」については、従来生鮮食品を扱う分野のEC化が進んでいませんでしたが、ネットスーパー業界に動きが出始め「Amazonフレッシュ」や「楽天西友ネットスーパー」が物流拠点の整備を進めています。

現在は首都圏が中心のサービスですが、拠点整備を行い、全国に配送可能になれば、EC化率が大幅に伸びることが期待されます。

「雑貨、家具、インテリア」は、これまでデザイン性に優れたものは海外製品が多かったのですが、日本でもデザイン性の高い家具やインテリアが増えてきました。ITリテラシーが高く、良いデザインを求めるユーザー層が、IKEAなど実店舗での購入からLOWYAなどの家具・インテリアの通販に流れていると推察します。ネットで”質が高くて妥当な価格”の商品が手に入るようになったのが、EC化率の伸び率につながったのです。

「書籍・映像・音楽ソフト」(※デジタルコンテンツを含みません)ですが、2017年度の伸び率が4.17%だったことを考えると2倍以上に伸び率が増えております。この伸び率に関しては推測が難しいのですが、おそらく「安室奈美恵引退」が数字に強く影響しており、幅広い世代からDVDやCDなどの販売がECで一気に進んだ影響と考えられます。

2018年の音楽業界について、下記のブログがよくまとまっており、2018年度の音楽業界において安室奈美恵の影響が大きかったことが解説されており、非常に参考になるので、是非一読ください。

参考記事:国内音楽市場はネット配信で復活?ほんとに?

A-2:EC化率が高い分野とは?(物販系分野)

1位:「事務用品・文房具」 40.79
2位:「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」 32.28
3位:「書籍、映像・音楽ソフト」 30.80

1位の「事務用品・文房具」のEC化率が伸びているのは、アスクルに代表されるサービスのインターネット販売が、一般的に普及してきたからでしょう。

2位の「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」はヨドバシ.comやビックカメラ.comをはじめとし、生活家電のECサイトが伸びています。その背景には、そもそも家電系はECに向いている分野であることが言えます。

なぜなら、型番等や製品名の指名買いができる点と、どこで買っても品質がかわらないのであれば、店舗で商品を確かめて、1円でも安い商品をWebで探すという消費者の傾向があるからです。本来、こういったWEBショールーミングを嫌う家電大手でしたが、ヨドバシカメラは、それを逆手にとり、店舗の製品横にバーコードを設置し、顧客がカカクコムやAmazonで購入する前に、ヨドバシ.comで購入させる戦略をとり、大成功した経緯があります。

また、2019年10月に消費税の増税が決定しており、家電製品などの高価格商品には増税前の駆け込み需要が期待されます。

逆に市場は大きいのですが、EC化率が最も低いのは「食品、飲料、酒類」です。家電とは正反対で、食品の分野は実際に目でみて、鮮度を確かめる必要がある分野のためEC化率は低いのが特徴です。

しかし、2017年にはAmazonが「Amazonフレッシュ」をスタートし、生鮮品を最短4時間で顧客に届けるサービスをはじめました。こういったサービスの普及が、この分野のEC化率の上昇につながり、またこの分野のサービス拡大には、物流センターの整備が欠かせず、Amazonや楽天などの大手が着々とこの業界でシェアをとるために拠点整備に乗り出しております。

そして、唯一EC化率を下げている「自動車・自動二輪車・パーツ等」の分野ですが、これはECの市場規模が少なくなっているのではなく、リアルの車やパーツの輸出が伸びていることが要因として挙げられます。アメリカには「25年ルール」と呼ばれる規制があり、海外の車においては製造年から25年経っていないと輸入できないルールがあります。

もともと、アメリカでは日本の中古車の需要が高く、例えば日産の古いGT-R(R32)がアメリカでは大人気で価格が高騰しているなど、日本からの中古車の輸出が増えております。それにともない車のパーツ関連の輸出も伸びているため、ECよりもリアルの市場が伸びているため、EC化率が下がっているのです。

もちろんこの統計は国内を対象にしたものですが、この影響がデータに反映された結果だと推察できます。

A-3:ECの市場規模が大きい分野とは?(物販系分野)

1位は「衣類・服装雑貨等」 1兆7,728億円
2位は「食品、飲料、酒類」 1兆6,919億円
3位は「生活家電、AV機器、PC・周辺機器」 1兆6,467億円

EC市場規模では「衣類・服装雑貨等(アパレル)」が市場で1位です。この分野の特徴は靴やスーツ、パーティードレスなど、実際に着てサイズを確かめることが重要視されるため、実はECとは相性が悪いのですが。ユーザーが買いやすいサイト作りや、ロコンドのような返品無料で自宅で試着ができるという新しいサービスの導入により、EC化が進んだ市場になります。

さらに、2018年に話題となった「ZOZOSUIT(採寸ボディースーツ)」のような革新的サービスが今後も生まれてくると推察され、今後もこの分野で市場の拡大が見込めます。

ZOZOTOWNは「ZOZOARIGATOメンバーシップ」による割引が、ZOZOに加盟する一部の企業から「ブランドイメージの毀損」が懸念され、ZOZOTOWNを脱退する企業が相次ぎました。しかし、ZOZOTOWNは「Fulfillment by ZOZO」というZOZOTOWNの在庫と自社ECの在庫を一元管理できるサービスを発表しました。

2018年末にZOZOTOWNの成長鈍化などがニュースで取り上げられましたが、「Fulfillment by ZOZO」が普及すれば、アパレル業界の物流のシェアを独占し、アパレル業界におけるZOZOの一極化が進む可能性もあります。

2位の食品市場は、ECの市場規模が大きいにも関わらず、EC化率が低いため、前述した通り今後、Amazonフレッシュ等の大手ネットスーパーが参入し、物流拠点や配送網の整備により抜本的に、この業界のEC化率の拡大の鍵を握っているのは間違いありません。

B.サービス系分野のEC市場規模

サービス分野とは、旅行・宿泊、あるいは飲食などのサービス分野です。例えば、

◆サービス分野のBtoC-ECの市場規模

旅行サービスにおけるEC化の歴史は早く、1990年代後半にはスタートしていました。国内外関わらず、インターネット上でいつでも手軽に航空券や宿の予約が出来ることや、チケットレスサービスの「eチケット」などは消費者にとっては便利なシステムです。

また、「エクスペディア」や「じゃらん」といったインターネット専業の旅行代理店(通称OTA)の台頭もBtoC-ECの活用度の高さの一因とも言えます。しかし、実店舗の需要もあり、ユーザー動向は二極化している状況です。

2018年の最新の動向を解説すると、大きく伸びているのは、昨年に続き「飲食サービス」と「理美容サービス」です。この2つに共通するのは、事前予約サービスです。美容院やマッサージ店は、予約時に決済する方法が市場で伸びてきております。

特に「飲食サービス」は数年前より明らかにネットで予約する機会が増えている印象があり、大手の「食べログ」や「一休.com」といった予約サービスにおいて、登録するレストランが充実し、カンタンに予約ができるようなりました。元々マーケットニーズがある分野において、品質が追いついてきたところが大きいでしょう。

今までもこういった予約サービスはありましたが、より一般的に広まってきたことが、市場規模の伸び率からわかります。「飲食サービス」「理美容サービス」ともに1店舗の規模が小さく、店舗が多い業態においてサービスのクオリティが上がってきたことが市場規模の伸びにつながっているのです。

チケットサービスにおいては、チケットの二次流通(転売)を防ぐため本人確認を必要とケースが増え、電子チケットをスマートフォンに登録することで、他人への譲渡ができなくなることからスマートフォンとチケットサービスは相性が良いサービスと言えます。このため今後のチケットサービスのEC化が進んでいくことが予想されます。

C.デジタル系分野のEC市場規模

デジタル分野とは、電子出版・有料音楽/動画配信、あるいはオンラインゲームなどの分野です。

◆デジタル分野のBtoC-ECの市場規模

デジタル分野全体で見ると有料音楽配信が12.51%、有料動画配信が12%とこの2つの分野が大きく伸びています。

電子出版やオンラインゲームですが、2017年度の電子書籍の伸び率が20.1%、オンラインゲームの伸び率が6%だったのに対して、2018年度はそれぞれ7.54%、3.0%と半分以下に落ち込みました。

これはスマートフォンにおける「趣味」や「空き時間の娯楽」時に利用するサービスが電子書籍やオンラインゲームの利用者が動画配信サービスに流れた影響と考えます。

動画配信サービスに関しては、今までは携帯電話キャリアとの契約で「容量の縛り」のある契約形態がほとんどでしたが、ソフトバンクからデータ容量が50GBのウルトラギガモンスターという大容量料金プランが生まれたり、格安Simのキャリアにおいても特定サービスの動画視聴分を使用した容量としてカウントしない契約形態が生まれたことで、通勤時にも容量を気にせず視聴できる環境ができたためだと筆者は考えます。

また、動画配信サービスにおいては、例えばAmazonプライムやNetflix限定のような、会員限定の魅力的な独自コンテンツが増えており、その分テレビの視聴者数も減っていることが予想されます。

今後のEC業界は「大手による寡占が進み、業者の淘汰が進む」

まずは、下記のネット担当者フォーラムから引用したデータをご覧ください。

データ引用先:通販・ECは競争激化で倒産件数が過去最多、「大手の寡占で業者の淘汰が進んでいる」

EC市場は、緩やかに確実に右肩上がりで成長している産業ですが、一方でAmazonや楽天、ZOZOTOWNなどの大手ECモールが成長を続けているのに対して、中小のECサイトは苦戦を強いられており、2018年度のEC事業者の倒産件数は過去最多の30件となりました。

ブランド力のない小規模EC事業者では、品ぞろえやサポート体制に限界があり、物流コスト増の影響を強く受けます。さらに自社商品の露出拡大のためにECモールへ出店すると、余計に価格競争にさらされるため、ブランド力がないと利益を増やしづらい傾向にあります。

昨今、メーカーがECサイトを構築し、仲介業者や販売店を介さずにECサイトで直接販売するDtoC(ダイレクト トゥ コンシュマー)を実施する事業者が増えておりますが、ECサイト運営において最も難易度が高いのは集客であり、また、集客を担当するマーケティング担当者はEC業界において常に不足しているため、DtoCを成功させるのは容易ではありません。

参考記事:DtoCを検討する前に知っておくべきDtoCの【成功事例と失敗事例】

また、昔から通販事業を行っている大手事業者の中には、レガシーシステムを刷新することができず、経済産業省が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)に乗ることができない企業もあり、経営が厳しくなることが予想されます。そうなると、ますますAmazonや楽天、ZOZOTOWNなどの大手ECモールによる寡占化が進む可能性が高くなります。

参考記事:経済産業省のデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは(経済産業省)

 

さて、話は変わりますが、今回の経済産業省のEC市場調査レポートには、新たな項目について、データや見解が掲載されておりましたので、ECの関係の深い調査結果においても、解説いたします。

日本のネットリユース(CtoC)の市場規模

◆ネットオークションの推定市場規模

※単位:億円

「メルカリ」を代表するCtoC市場が急速に拡大しています。ネットオークションはニーズが強い市場にも関わらず、少し前まではリテラシーの高いユーザーしか利用されていませんでした。なぜなら、ユーザー同士のやり取りや商品をネットへ掲載する手間が、ネット初心者にとってはネットオークションのハードルが高いものだったからです。

しかし、ユーザーインターフェースが改善され、スマートフォンがあれば誰でもカンタンに出品できることと、テレビコマーシャルなどの宣伝によりユーザーが大きく増えました。このようにネット初心者まで使い始めると、サービスは一気に普及するものです。

◆フリマアプリの推定市場規模

※単位:億円

この影響で、「ブックオフ」などのリユース大手が大きな打撃を受けています。なぜなら急拡大しているフリマアプリの影響により、商品の仕入れに影響が出ているからです。ただし、ネットリユース市場にも、大きな課題があります。それは新しい市場のため、法規制が整っておらず「現金」や「入金済みSuica」が出品される行為が問題になっています。

これらの問題が社会問題化し、ネットリユース市場に法規制がかかれば、市場の成長にも影響しますので、そうならないためにもネットリユース各社の対応が求められます。

スマートフォン経由での物販の市場規模と普及について

◆スマートフォン経由の市場規模の直近4年間

・2018年の物販のBtoC-EC市場規模  9兆2,992億円
・上記のうち、スマートフォン経由  3兆6,552億円
・スマートフォン比率        39.31%

かつて、スマートフォンはパソコンに比べて文字入力がしづらい点、通信環境が一定ではないなどのデメリットがあるため、ユーザーにとってスマートフォンでの物販には高い敷居が存在しておりました。

しかし、スマートフォンや通信環境の進化や5インチ以上の入力しやすい大画面スマホが普及し、ユーザーのスマートフォンでの商品購入の”慣れ”が進み、スマートフォンで購入することが一般的になりました。

また、2000年以降の携帯電話の普及によりクレジットカード支払いが広く普及し、スマートフォンにクレジットカード番号を入力することに抵抗が少なくなったことも、スマートフォン経由での市場規模が拡大した大きな要因です。

その結果、スマートフォンを経由してのEC市場規模が全体の約4割に達しており、今後もスマートフォン経由の物販は広く普及していくはずです。

◆インターネット利用端末の種類

特定のターゲットや業界別の傾向だけではなく、あらゆる分野において、スマートフォンが基準となりつつあります。

インターネット利用端末として、スマートフォンが過去7年で急上昇しており、15年末にはついに過半数を超え、17年末には59.7%となりました。このデータからユーザーがインターネットを使う端末はPCからスマートフォンが基準となりつつあることがわかります。

特に10代後半から20代までがターゲットのサイトでは、9割以上のユーザーがスマートフォンからの購入というケースもあり、ガラケー時代同様、若年層や女性ユーザーのほうがモバイル端末からの購入の親和性が高いという傾向が見られます。

業界別の傾向では、アパレルや化粧品・医薬品業界の様に女性ユーザーがメインターゲットになる業界ほど、スマートフォンの利用率が高い傾向があります。

また、Googleが2017年にMFI(モバイル・ファースト・インデックス)を発表しました。今までは、検索順位の基準はPCサイトだったのが、今後は検索結果の基準がスマートフォンになります。この影響はPCの利用者圧倒的に多いBtoB事業においても、スマートフォン対応が求められており業界に関わらずスマートフォン対応されたサイトの普及が加速することになるでしょう。

若年層のPC離れもあり、今後はどの分野においても、スマートフォンがインターネット端末の基準になることは確実です。さらに2017年には「タブレット型端末」が統計上はじめて、減少に転じているのは、スマートフォンが5インチを超える大画面端末が一般的になり、スマートフォンの画面がタブレットのように見やすくなったため、タブレット端末を買う人が減っているためと考えられます。

課題の多い”物流”について

◆宅配便取扱個数の推移(単位:百万個)

※画面をクリックすると拡大します

データ引用先(総務省):平成29年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法

ネット購入の普及による宅配荷物の増加と、宅配業者の人手不足や残業が社会問題になっております。

もはや物流業界だけの問題だけではなく、ECに係る業界全体の問題として取り組まなくてはなりません。例えば、再配達を減らせる仕組みをECサイト側で対策するなどの抜本的対策が必要です。このままだと、この問題がボトルネックになり、ECのマーケットが発展しません。

政府も駅やコンビニなどに宅配ボックスを設置することに対して、補助金を出すなど対策を行っておりますが、設置個数や設置スペースに限界があり、それだけでは解決に結びつきません。今後は受取時間指定の細分化と、再配達時に料金徴収を行わないと配達業者もビジネスが成り立たなくなるでしょう。

また、Amazonも倉庫内のピッキングや梱包の効率を追求した結果、過剰包装により、小さな荷物でさえも均一の大きさの箱で包装されています。そのため物流全体、つまり宅配便の車のキャパシティーに無駄ができ、この問題を加速させている背景があります(あくまで小さな一例です、課題は各社、政府及びユーザーにも多く存在します)。

この例からもわかるとおり、業界を超えて、この問題を対策する必要があり、日本は少子高齢化により、人手不足はあらゆる業界で加速しますから、ネットやITを駆使した効率化は日本の命題であり、その土台を支えるのが物流なのです。

一人ひとりがこの問題に関して積極的に改善に向けて取り組まないといけません。この記事を読んでいるあなたも決して例外ではありません。可能であれば受取先を会社にしたり、コンビニや店舗受取の利用を積極的に進めていきましょう。

決済(クレジットカード決済以外の全てが利用率下がる)

◆インターネットで購入する際の決済方法(複数回答)平成29年末アンケート結果(n=1,633)

インターネットでの決済方法としては、圧倒的に「クレジットカード払い」が昨年よりも利用率を高め66.1%になりましたが、2位以下の「コンビニエンスストアでの支払い」「代金引換」など1位以外はすべて利用率を下げております。

筆者の仮説ですが、アンケート項目として設けられていないAmaozn Payや楽天ペイ等の「ID決済」が普及しはじめたため、大きく利用率を下げているのではないかと予想します。

2018年は、PayPayのキャッシュバックキャンペーンにより、リアルのQRコード決済が大きく話題となりましたが、ネットの決済とも無関係ではありません。なぜならQRコード決済は「ID決済」としてネットで決済することも各社可能になってくるからです。

参考記事:「PayPay」がオンライン決済対応、ヤフーの「Yahoo!ショッピング」「LOHACO」などに順次導入へ

また、メルカリも「メルペイ」を発表し、アパレルEC事業者は、自社ECサイトの決済画面に「メルペイ」を用意することで、ユーザーがメルカリで売った服のポイントを利用して、アパレルECサイトで新しい服を購入することができるなど、QRコード決済の普及はリアルだけでなく、ネット決済にも多大な影響を及ぼします。

クレジットカード決済の不正利用

◆クレジットカード不正利用被害の発生状況(単位:億円)

EC業界において課題は、クレジットカードの個人情報漏えいの事故が社会問題になっている点です。この問題を受けて、経済産業省は「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」を指導しており、EC事業者には、以下のどちらかの対応を2018年3月までに実行する必要がありました。

・クレジットカード情報の非保持化
・PCI DSS準拠

参考記事:ECサイト事業者行うべきセキュリティ対策を徹底解説!PCIDSSへの準拠が必要な理由とは?

この動きを受けて、EC事業者はクレジットカードの決済システムの入れ替えを検討していますが、間に合わない企業も多く、EC事業者は責任ある対応を求められています。

日本国内のBtoBのEC化率は30.2%

◆BtoBのEC市場規模とEC化率の推移

BtoB-ECの市場は約317兆円と非常に大きなマーケットとなり、業種別に見てもEC化率は上昇しています。その背景の一つに、ECシステム各社の新規参入や、BtoBに特化したASPの展開する会社も出てきたこともありますが、経済産業省が出しているEC化率の30.2%という数値は、EDI※等の受発注システムとECが区別されていないため、実際のBtoBのEC化率数値よりもかなり高い数値になっています。

※EDIとは、Electronic Data Interchangeの事です。企業間の商取引において必ず発生する、帳票処理(注文、請求、決済など)を電子的に交換し自動化する仕組みであり、一般的に私達がイメージするECサイトとは異なります。

EDI等の受発注システムでは様々な制約があり、時流に合わせたマーケティング施策を実行する事が難しく、EDIからEC化を検討している企業が増えている傾向があります。また、2024年にINSネット(EDIが最も使用されているネットワーク網。カンタンに言えばISDNのことです)が廃止され、EDIのIP網への移行が進むとともに、EC化を検討する企業は増加すると予想されます。

EDIについては、過去の記事でまとめており、下記の記事をご覧ください。

7つのポイントでEDIをやさしく解説!EDIの必要性と今後の課題

また、今回の経済産業省の資料からBtoBの業種別内訳のデータが追加になりましたので、次に紹介します。

◆BtoB-EC市場規模の業種別内訳

製造業は比較的EC化率が高いです。なぜならもともと自分達が作った”モノ”をお客様に売るというビジネスモデルは、ECのモデルそのものであり、最も伸びやすい分野だからです。

それに対して建設・不動産、情報通信、サービスは”モノ”がないため、サービスをシステム化しづらい面があり、全体的に”モノ”がない分野のEC化率が遅れている印象です。ECの市場規模が最も大きい卸売は中間業者のため、日本のEC化率が全体的に進めば市場規模は縮小に転ずることが予想されます。

最後に

現時点でBtoC取引の約94%は非ECのリアルで行われていますが、ECの取引が占める全体シェアは毎年上がっており、今後の成長も期待されています。事業者にとっては、これまで以上に店舗とECの両立が重要になってきており、いかにユーザーにとって使いやすいサービスを提供していくのかという点が注目されています。

また、日本は少子高齢化社会に突入しており、ECの利用促進により社会全体の効率化を進める必要があります。ですからEC化率を高めるということは、決してEC業界関係者のみに影響することではありません。

EC化率を伸ばすには、特に物流の人手不足や効率化の問題を解決しなくてはならず、この問題にあっては、政府、EC業界、物流業界、ユーザーの全てが前向きに取り組むことが必要です。

この記事を読んだ方にもできることはあります。それはECで買い物をした際は、なるべく再配達が必要のない届け先や時間帯を選択することで配送の負荷を減らすことです。こういった社会的課題は一人ひとりが取り組んでいくべきでしょう。


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