アパレル業界市場や事例からオムニチャネルが必要な3つの理由をプロが解説


アパレル業界ではオムニチャネルを導入した企業と、そうではない企業で二極化が起こっており、アパレル市場ではオムニチャネルを導入しなければ、市場で生き延びることが難しくなってきたといえます。

なぜなら、日本は少子高齢化社会に突入し、アパレル産業の若年層を中心にマーケットは縮小傾向にあるため、アパレル企業が売上を伸ばすには、顧客単価や顧客一人当たりの購入回数をオムニチャネルで高める必要性があるからです。

現に、アダストリアやベイクルーズなどの大手アパレル企業では、オムニチャネル施策導入により、顧客単価を大幅に増やし、売上高を飛躍的に伸ばしている側面があります。

本日はebisumartでマーケティングを担当している筆者が、アパレル業界にオムニチャネルが必要な理由について詳しく解説いたします。

国内アパレル市場販売額推移(1980年~2018年)

まずは経済産業省が公開しているデータをもとに「アパレル市場における年別販売額推移」を筆者が独自にグラフを作成してみました。下記をご覧ください。

青い棒線は百貨店・スーパーを除いた小売業の衣料販売額
赤い棒線百貨店の衣料販売額

グラフデータ引用元:時系列データ|商業動態統計|経済産業省

アパレル市場の販売額のピークは1991年のバブル期であり、リーマンショックが起こった2008年以降は10兆円から11兆円の間でほぼ横ばいに推移しているのがわかります。その中で、百貨店の販売額が顕著に落ち込んでおり、2018年には約2.7兆円と、1991年のピーク時約6兆円の半分を切っております。

経済産業省のデータでは「専門店」や「通販」のデータが分けられておりませんが、ユナイテッドアローズのIR情報に下記のような販路チャネル別売上高のデータがありました。

◆販売チャネル別売上高の推移

上記グラフ引用先:アパレル小売市場の概況(UNITED ARROWS LTD.)

このグラフを見ると下記のことがわかります。

①百貨店と量販店の売上は年々下がっている。
②専門店と通販の売上が伸びている

つまり、日本のアパレル市場規模はこの4~5年は横ばいですが、百貨店や量販店の売上が下げている分、ユニクロのような「専門店」やZOZOTOWNのような「ネット通販会社」がこの市場を引っ張っているという、成長率の上げ下げが相殺する形となり、アパレル市場全体としては成長率が横ばいになっているのです。

売上上位の自社ECサイトを持つアパレル企業は、ほぼ全てがオムニチャネルで成功している事実

下記の表は、日本ネット経済新聞の2018年11月22日号に掲載されていた2018年度の上位7社のランキングデータです。

 

画像引用先:【ファッションEC 2018】〈ファッションEC売上TOP100発表〉 「ユニクロ」2年連続1位/一部企業で”ゾゾ離れ”始まる

※全ての売上高データ等は上記サイトより購入可能です。

この7社は、いずれも「オムニチャネル」を推進しており、売上を飛躍的に伸ばしています。アパレルEC業界では「売上を高めている企業」と、「そうではない企業」の2極化が進んでいます。その鍵となるのがオムニチャネル施策です。

しかし、オムニチャネルを実行するためには、実店舗とECサイト(アプリを含む)のそれぞれのデータの一元化を行わなくてはいけませんが、このシステム的なハードルがかなり高いために、デジタル投資に積極的な企業だけが、オムニチャネルを実行することができるのです。

アパレル大手3社のオムニチャネルの取り組み事例

それではオムニチャネルの事例としてアパレル企業3社を紹介いたします。この3つの事例を見れば、オムニチャネルの必要性をより理解することができるでしょう。

事例①ユニクロ:アプリ利用者の約3割が「EC商品の店舗受取」を利用

下記記事によると、ユニクロの公式アプリの利用において、件数ベースではECでの販売の約3分の1が「店舗受取」を利用しております。

ネットショップ担当者フォーラム:ユニクロの実店舗とネットの融合をめざす「有明プロジェクト」の進捗状況は?

これはユニクロにとって大きなメリットがあります。

なぜならECで購入したユーザーが、商品を受け取るためにユニクロの実店舗に足を運べば、そこでクロスセルに結びつき、店舗の売上も増えます。またECのデメリットの一つである「商品を都合の良い時間に受け取りづらい」という悩みも解決されています。

まさに、店舗数が多いユニクロならではの施策と言えます。さらにユニクロはこの施策を進めるために「ECサイトにしか置いていない商品」を用意することで、ECやアプリの利用率促進を図っています。

事例②アダストリア:実店舗とスマホの両方を利用するユーザーが売上高の約40%を占める

アダストリアは積極的にオムニチャネル施策を進めているアパレル大手企業です。アダストリアには数多くのブランド(GLOBAL WORK、niko and…、LOWRYS FARM等多数)があり、これらのブランド全て自社で生産、物流、販売までを行っております。

自社ECサイトやZOZOTOWNへの出店など、ECに力を入れ、2018年2月期の売上高は333億円にまで達し、これは同社の3年前の業績と比較して2倍以上の売上高です。下記記事によると、アダストリアが最も力をいれているのが「実店舗とEC両方を使うユーザーを増やす施策」です。

Digital Innovation Lab:ECの売上高は3年で2倍以上、スマホアプリを重視するアダストリアのオムニチャネル戦略

なぜなら、データ連携により実店舗とEC両方を使うユーザーは売上高の40%を占めることがわかっており、アプリの利便性を増すことで、さらなるユーザー増を目指しているのです。

こういった取り組みはオムニチャネルならではであり、実店舗とECのデータが連携しているからこそ、力をいれるべき施策のKPIが明確になるのも最大のメリットと言えます。

事例③ベイクルーズ:店舗とECの在庫を一ヵ所にすることで一元管理できている

セレクトショップを展開する「ベイクルーズ」のEC事業は好調で、2017年度8月期には前期比27%増の275億円となり、全売上高の4分の1に達しています。それを牽引しているのは、オムニチャネル施策です。

ネットショップ担当者フォーラム:自社EC売上が44%増の137億円のベイクルーズ、伸びている理由は? 物流問題の影響は?

上記記事によると、オムニチャネル施策によって、店舗とECの在庫を一ヵ所に統合しました。

全ての在庫が一つのデータベースで管理されることで、ほぼタイムラグがない状況で、どの店舗からでも在庫の引き当てが可能な状態になりました。

これにより、ベイクルーズの一部ブランドでは、店舗在庫の取り置きがECサイトで予約できるようになり、こういった在庫の取り置き機能を他のブランドへのサービス拡充を行っています。

また、アダストリアの事例にもありましたが、ベイクルーズにおいても「実店舗とEC」の両方を利用するユーザーは、店舗だけ利用するユーザーよりも購入金額が3倍も高いことがわかりました。

このように、アパレル市場においてオムニチャネルを実施することは、ロイヤルカスタマーを育て、購入単価を高めることで、売上高を飛躍的に伸ばすことができるのです。

アパレル企業にオムニチャネルが必要な3つの理由

オムニチャネルが必要な理由①売上を極限まで高めるため

国内では少子高齢化が進んでおり、最も服を購入する若年層の人口は減り続けております。下記の総務省のデータをご覧ください。

 

データ引用先:第1節 若者を取り巻く社会経済状況の変化(総務省)

2010年を「100」としたデータですが、比較すると若年層が今後どれだけ減っていくかがわかります。

このような背景で、競争の激しい国内アパレル市場で売上を高めていくためには、一人あたりの購入回数や購入単価を高めるのが最も効率的となります。それを実現するにはオムニチャネルが最適といえるのです。

例えば、店舗に来たユーザーに対し、会計の際にその場で使える割引クーポンなど訴求して、ユーザーにアプリ導入を勧めます。その後、ユーザーが店舗に来ていない時にも、クーポンやキャンペーンの紹介や、新製品の通知を行います。アプリを有効に使うことで、会員一人当たりの購入機会を高めることができます。

もちろん、実店舗とECサイト(アプリを含む)のデータ連携をせずとも、O2O施策で購入促進の施策は可能です。

しかし、アダストリアやベイクルーズの例のように、実店舗とECのデータが一元化されているからこそ、「実店舗とECの両方のユーザーの購入単価が高い」という効果をデータで実証することができますし、それらのユーザーをセグメントして、ロイヤルカスタマーを育てる施策を行うことができるのです。

オムニチャネルが必要な理由②オムニチャネル導入で人手不足を解消する

今はアパレル業界に関わらず、日本国内ではあらゆる産業で人手不足が深刻な問題です。とくにサービス業の人手不足は深刻な問題です。下記のグラフをご覧ください。

グラフ引用先:人手不足で疲弊、もう「外食・小売り」は限界だ(東洋経済)

これは、アルバイトなどのパート労働者の人手不足を業界別に表したグラフですが、その中でもアパレル業界が含まれる小売業は飲食サービス業に次ぐ2位に位置します。

アルバイトの雇用が上手くいかないということは、つまり社員の現場負担がかかることを意味します。この人手不足を解消する方法としては、オムニチャネルの観点からは下記の2つがあげられます。

(1)デジタル化やデータ統合を進め、業務効率化
(2)ECサイト利用の促進

オムニチャネルを通して、商品や在庫データが店舗とECで統一していれば、店舗スタッフは、在庫の確認をタブレットで行うこともできますし、欠品の時は、そのままECサイトでの購入を促すこともできます。

また、自社ECサイトで購入するユーザーが増えれば、全体として店舗スタッフの業務負担が減りますし、そもそも店舗スタッフの確保が難しくなる以上、新規出店をすることで売上を上げるのは、困難になります。

オムニチャネルが必要な理由③ユーザーは24時間スマートフォンを使う

アパレル業界も、昔はテレビなどのマスメディアやファッション誌が強い影響力をもっていましたが、スマートフォン全盛の今では、ユーザーがファッションの流行をチェックする一番の情報源はスマートフォンです。下記の表をご覧ください。

MarkeZine:20代男女のファッションEC事情/情報源はTwitterとの回答が最多【テスティー調査】

2017年に実施された調査ですが、この図を見れば女性では71.9%、男性では52.6%のユーザーが、ファッションの「流行」情報収集にスマートフォンを使っていることがわかります。

スマートフォンの中での利用率1位は、TwitterやInstagramなどの「SNS」ですが2位がWEBで、3位がアプリであることから、WEBもアプリもこの中に「自社ECサイト」の利用が含まれ、影響力が高いことがわかります。

そして、何よりオムニチャネル施策の本質は、顧客接点の増加により利便性向上にあります。現にオムニチャネル施策を行った企業の多くは「実店舗とEC(アプリを含む)」の両方を利用するユーザーの顧客単価や購入回数が多くなり、売上に多大な影響を与えております。

そのため、顧客接点を中心に考えると、スマートフォンアプリや、ブラウザーによる自社ECサイトがオムニチャネルの中心になってくるのです。

オムニチャネルは成功すれば売上が飛躍的に伸びる一方で、導入が非常に難しい!最大の理由は実店舗とECのデータの一元化!

本日は、アパレル業界の市場・背景から、オムニチャネルを成功してきた会社の事例を中心に、なぜアパレル業界にオムニチャネルが必要なのかを解説しました。ここまで読んで、下記のような考えをもったのではないでしょうか?

「全てのアパレル企業がオムニチャネルを導入すればいいのではないか?」

しかし、それが非常に難しいのです。

とくに百貨店や量販店などの大企業では自社の顧客を管理しているシステムがフルスクラッチで作られていることが多く、それらの多くはレガシーシステムです。ECの顧客データとも連携していないケースが多いです。

企業の長い歴史の中で、社内システム(レガシーシステム)に詳しい人間は、退職しているケースが多く、企業は実店舗とECのデータの一元化には自社内でシステムに精通する人材が不可欠です。また、ECとデータ連携を行う際は、在庫のリアルタイム連携などを考慮すれば、レガシーシステムはオムニチャネルに不向きです。

オムニチャネルを実行するためには、経営者が「オムニチャネルを行わなくて、アパレル業界で生き残れない!」ことを全社員に宣言し、オムニチャネル担当者に高い権限を与え、企業のあらゆる部署から担当者を集め、横断的に対応する必要が不可欠なのです。

そこまでしなければ、オムニチャネルの導入は困難であり、逆にオムニチャネル導入に成功すれば、飛躍的に売上高を伸ばすことができる可能性が高まるのです。


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