大手ファッションECサイト2社から学ぶ!売上改善の9つのポイント


アパレル産業はイーコマース(ECサイト)と、もともと相性が良い分野ではありませんでした。なぜなら、オンラインでは服や靴は身につけてサイズを確認する必要があるため、実際の試着ができずオンラインでの購入を敬遠するユーザーが多かった傾向がありました。

しかし、2021年には、物販分野全体のEC化率平均8.78%に対してアパレル産業のEC化率は20%を超え、今やEC化が非常に進んでいる分野になりました。その背景にはスマホの普及やインターネット人口増加があるのはもちろんですが、各社オンラインで服を売るための努力や工夫を行い続けたことも大きな要因です。

今後アパレル業界のEC化はどんどん進み、今までは「商品力」や「ブランド力」に力を注いでいたアパレル企業も「ファッションECサイト」を戦略の柱の一つにすることが求められます。

本日はファッションECサイトの超大手の「ZOZOTOWN」と「ユニクロ」のECサイトの9つのポイントをebisumartでWEBマーケーティングを行っている筆者が詳しく解説いたします。

※本日の参考・画像引用サイトのURL

ZOZOTOWN:https://zozo.jp/
ユニクロ:https://www.uniqlo.com/jp/ja/

ユニクロのファッションECサイトとしての4つのポイント!

◆ユニクロのスマホサイト

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ユニクロは2017年3月の新オフィス発表の際に下記宣言を発表しました。以来、リアル(店舗)・デジタルを問わずに「いつでも、どこでも」買い物ができるオムニチャネル施策を進めてきた結果、オンラインユーザーの実店舗へ誘導に成功し、業界においてもオムニチャネル施策のベンチマークとなっています。

柳井正・会長兼社長「デジタルを最大限活用して産業革命を起こす。SPA企業から情報製造小売業へと進化をする」

※WWDよりニュース記事引用:ユニクロ大改革の鍵をにぎるECサイトリニューアルの真相

ここでは、筆者のWEBマーケーティングの観点から、現在のユニクロのECサイトにおける4つのポイントを取り上げてみます。

ポイント① 鮮明な写真や動画で世界観を構築(スマホ画面)

スマートフォンは登場以来、少しずつ画面が大型化され、通信速度も数年前と比較すると驚くほど向上しました。そのようなデバイスの変化や、技術進化に合わせて、ユニクロもECサイトを少しずつ進化させてきました。

TOPページは、説明的な文章や、細かなボタンやバナーを使わず、写真を全面に押し出し、画面を大きく使ったインパクトのあるTOPページになっております。

また、写真だけでなく動画もキービジュアルとして使用することで、TOPページというユーザーとのファーストコンタクトの時点で、より商品のイメージやブランドの世界観をわかりやすく伝えることに成功しております。

◆動画を使用したTOP画面

uniqro_movie

かつてのモバイルサイトは、表示速度の関係で、画像の多用はタブーとされてきましたが、デバイスや通信速度の技術向上によって、鮮明で大きな写真や動画もストレスなく表示できるようになりました。

解像度の高い写真をふんだんに使用できるようになったことで、ビジュアルが重要なアパレルのECサイトとしてはサイトでの世界観の構築がしやすくなりました。こういった点がECサイトの利用促進にもつながったと考えられます。

ポイント② 商品詳細画面でユーザーレビューのコメントが見れる

ECサイトにおいて、ユーザーレビューは購入を決める大きな要素になります。家電業界でも製品の口コミは売上を左右する大きな要素です。

◆ユニクロの商品詳細画面にある「ユーザーレビュー」

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ユニクロでは、商品詳細ページに下部に「お客様のコメント」が掲載されています。しかも購入者の性別や年齢、体形まで掲載されているので、自分の属性と近いユーザーのコメントは強く参考になるはずです。

また、下記のようなネガティブなコメントもしっかり掲載しておくことで、ユーザーは様々な角度から冷静に判断することができます。仮にそのコメントがきっかけで購入をやめたとしても、長期的には企業への信頼性につながることになります。

◆ネガティブなコメントも掲載

unipro_ネガティブレビュー

オンラインの購入は、試着ができないため不安が付きまといますが、自分と近い年齢や体系の方の意見は購入の後押しすることは間違いないでしょう。

ただし、こういったコメント欄の設置は企業のマーケーティング担当者としては、炎上のきっかけにもなりかねない怖い機能でもあります。ユニクロのような大企業でユーザー目線で貫きこの機能を実装するのは社内調整がカンタンではないのではない?かと筆者はついつい想像してしまいます。

この機能を各社が真似しようとなると、仕組みの構築よりも社内調整が大変なのではないでしょうか?自信をもって良い製品を販売している企業でないとなかなかできることではありません。

ポイント③ 自身の体型から最適なサイズを提案してくれる

何度も言いますが、試着のできないECサイトでの服の購入はサイズ感で不安が付きまといます。ユニクロの「MySize ASSIST」では、自分に最適なサイズ感がわかるように、ご自身の

「①性別」
「②年齢」
「③身長」
「④体重」
「⑤好みの着用感」

を入力するだけで、おすすめのサイズと、それぞれのサイズの着用感を細かく教えてくれます。

◆MySize ASSIST

uniqro_サイズ確認

また、ユーザー登録をしていれば過去の購入品の寸法と比較できたり、スマホサイトでは、カメラ機能を使って自身の体型を計測した上で最適なサイズを提案してくれるなど、サイズの把握のために様々な機能が備えられております。

このような工夫で各社オンラインでの服の購入の不安の払しょくを行っています。サイズの不安を払しょくする方法としては、株式会社メイキップが提供するunisizeのように、WEB上に自分の体形を事前に登録しておけば、インターネット上でサイズ感を確認できるサービスがアパレル各社に普及しております。

このようにサイズ感の不安の払しょくは、ECサイトで服を購入を促進させることにつながります。

ポイント④ 店舗の在庫状況把握も店舗受取も可能!オムニチャネルの実践!

ユーザーとは、欲しいと思ったものは「すぐ手に入れたい!」と考えます。それは万国共通のユーザー心理です。時には配送を待てず、オンラインで気に入った商品があれば、すぐに店舗に足を運んで買いたいユーザーも多いのです。

ユニクロの商品詳細ページには「カートに入れる」ボタンの下には「店舗在庫状況」の項目が用意されています。

uniqro_在庫確認

 

在庫の状況がわかれば、

「会社の帰りにユニクロ店舗に行って買おう!」
「今日中に欲しいから店舗で買おう!」

という状況に対応できます。在庫の残りが少ないことがわかれば、ユーザーも「早めに買わなければ」という心理になりますし、販売促進につながりやすくなります。

またユニクロではオンラインで購入した製品を、店舗で受け取ることも可能でありオンラインで購入したユーザーが店舗にいけば「ついでに買い物でも!」というクロスセルも狙えます。まさにオムニチャネルです。

ZOZOTOWNの徹底的なマーケーティングの5つのポイント

◆ZOZOTOWNのスマホECサイト

zozotown_top

ZOZOTOWNは、2004年の開設以降、右肩上がりに成長し、現在も圧倒的な存在感でアパレルECのトップを独走しつづけております。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが2020年に発表したデータによると「ZOZOTOWN」が最も「NPS(ネットプロモータースコア)」の高い企業(アパレルEC部門)に選ばれました。

※NPSとはカンタンに言えば「友人や同僚に勧めたいと思うか?」という他社推奨をスコア化したもの

幅広い商品ラインナップや、貯まりやすいポイントの仕組みによって得られた支持ですが、今回はWEBマーケーティングの観点で、ZOZOTOWNのECサイトの画面から5つのポイントを取り上げてみました。

ポイント① CVRを極限まで高まる努力を感じる「サイズとカラーの選択」

通常のファッションECサイトではサイズやカラーをそれぞれ選択した上で、カートインのボタンを押して決済画面に移動します。ですから商品詳細ページから、購入までに下記のように最低でも3つのアクションが必要になるのです。

アクション①カラーの選択
アクション②サイズの選択
アクション③カートインボタンを押す

しかし、ZOZOTOWNのECサイトでは1つのアクションが削られています。下記をご覧ください。

zozo_カートイン

ZOZOTOWNでは、サイズとカラーを写真から同時に選択できるため、通常より必要なアクションが一つ少ないのです。こういった小さい改善ぶりからZOZOTOWNが徹底的にCVRを高めるための「カート周り」の改善に力を入れていることが伺えます。

この機能はZOZOTOWN以外でも、多くのファッションECサイトで実践されており、弊社のECプラットフォームのebisumartでもオプション機能としてアパレル会社などに提供しております。

ポイント② 商品詳細画面で商品の届く時期がわかる!

オンラインでの購入には、手元に届くまで時間がかかります。ですから

「商品はいつ届くのかな?」

という疑問を抱きますが、通常はカートインし、住所を入力して(ログインして)初めて到着予定時期が明らかになりますが、ZOZOTOWNでは商品詳細画面で、最短でいつ届くのかが表示されており(下記の赤い四角を参照)

zozo_配達時期

「明日の午前なら自宅にいる!」
「明日には手に入るのか!」

という想像が働き、購入を促進させる心理が働くことは明確です。実はこういったことを自社ECサイトに導入するにもASPのECプラットフォームでは、在庫情報とシステム連携していないため不可能であり「ECパッケージ」の改修やフルスクラッチでECサイトを作る必要があります。

ZOZOTOWNは自社のフルスクラッチでECサイトが作られており、こういったシステム改修が可能なのです。

ポイント③ ログインが必要ない「お気に入り」登録機能

気に入った服があれば、今は買わなくてもお金が入った時に購入を検討したいものです。ZOZOTOWNのメインユーザーは10代の若者ですから、社会的と比べればお金を持っていないのが顧客セグメントの特徴ではないでしょうか?

「この服欲しいけど、アルバイト代が入ってからだなー」

このような考えを持つユーザーは多いはずです。ですからお金が入った時に商品の閲覧履歴を追える「お気に入り」機能は、ZOZOTOWNのターゲットユーザーには特に重要な機能になるのです。しかし、いざ「お気に入り」ボタンを押したときに「ログインが必要です」「新規会員登録が必要です」となると、お気に入り登録をあきらめるユーザーも相当数でてきます。

しかし、ZOZOTOWNの「お気に入り」はブラウザーのクッキーで情報を保持しているため会員登録を必要としません。気軽にお気に入りボタンを登録できます。またお気に入りは、単なる閲覧を追うものではなく、ユーザーからの支持数を表すものにもなり、支持数(お気に入り数)の多いアイテムは、購入意欲を高める効果もあるのです。

◆会員登録不要のお気に入り機能

zozo_お気に入り

ポイント④ 新規登録を促す高額(1,000~3,000円)のクーポン券!

新規会員数増加のための施策は、どの企業も大変な苦労をしています。ZOZOTOWNも例外ではありませんが、筆者がZOZOTOWNのサイト感じたのは、そのクーポン券の露出と金額です。ログインをしていないユーザーに対して「会員登録」を促すバナーが目立ちます。そして、その金額が高価であり、お金のない10代であれば登録する気持ちは高まります。

◆新規登録促進のバナー

zozotown_新規登録バナー

もちろん、ZOZOTOWNのマーケーティング担当者は「一人が新規登録すれば、それ以降、一人当たりがどのくらいの売上を生んでくれるのか」というデータを持っており、その範囲内でクーポン券の金額を計算しているのでしょう。

こういった取り組みはユーザーも、安く購入できるというメリットを最大限に享受できることから、NPSでナンバー1を獲得した背景があるのです。

ポイント⑤ カートインを失敗させない!チャットボックス

ZOZOTOWNでカートインを行う際に、絶対に失敗させないように「チャットボックス」を用意しております。それも、すぐ表示されるものではなく、入力情報画面で、一定の時間が経過すると「何かお困りですか?」と表示させる。

一定時間が経過しても、入力が進んでいないユーザーは何か困っている可能性が高いですから、そのタイミングでチャットボックスが表示されると、問い合わせる気持ちも高まります。

一見ただの、ユーザーサポートですが、こういった細かい機能からも、ZOZOTOWNの「カートインを失敗させない」という意志を感じることができます。

参考にできるものは取り入れてみよう!

本日は「ユニクロ」と「ZOZOTOWN」のマーケーティングの取り組みを紹介しました。2社ともフルスクラッチでECサイトを作っているため、単純に真似ができないことも多いかもしれません。

しかし、筆者が感じて欲しいのは1つ1つの改善ポイントの背景です。徹底的に売上を伸ばすために離脱を下げ、カートインに少しでも近付けていく努力や姿勢をこの2社から感じて欲しいのです。

両社とも、こういった改善ができる前提として、細かいKPI(中間指標)を全て管理しており改善による変化があれば、すぐに効果を担当者が把握できるようになっているからこそ、改善を重ねることができるのです。また、ただの数字を追うだけでなく、両社とも実際のユーザーにマーケーティング部担当者が接触し、使い勝手の感想も聞いているはずです。

数字とユーザー視点、両方の目線が、ECサイトの売上の最大化には欠かせないのです。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。