企業YouTubeチャンネル開設前に知っておくべき7つのポイント


昨今はYouTubeなどの配信動画の視聴が普及し、ますます「テレビ離れ」が進んでいると言われており、商品やサービスのPR用メディアとしてYouTubeチャンネルを開設したいと考えている事業者も多いと思います

実は、YouTubeチャンネルを新たに開設する前に知っておくべきポイントがあります。例えば、YouTubeチャンネルの登録者数と再生回数を効率的に増やすためにはチャンネル開設後の初回配信がとても重要であるということもその一つです。

この記事では、インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、自身が運営するYouTubeチャンネルの測定結果を例に、YouTubeチャンネルを開設する前に知っておくべき7つのポイントを紹介します。

YouTubeチャンネル開設前に知っておくべき7つのポイント

それでは早速、YouTubeチャンネルを開設したいと考えている事業者が、事前にしっておくべき下記の7つのポイントを一つずつ解説してまいります。

ポイント① 開設時に最も重要な指標は「視聴維持率」
ポイント② チャンネル開設の事前告知は控えるべき
ポイント③ YouTubeチャンネルで広告を出してはいけない
ポイント④ 初回配信前には、少なくとも10本以上の動画を用意しておこう
ポイント⑤ 一目で配信内容が分かるチャンネル名を付けよう
ポイント⑥ 動画の概要欄は有効な情報を戦略的に掲載しよう
ポイント⑦ 最低でも50本、理想は100本目くらいの動画の反応で見極めよう

ポイント① 開設時に最も重要な指標は「視聴維持率」

YouTubeチャンネルを運用する上で最も大切な要素となるのは各配信の「視聴維持率」です。

◆YouTubeチャンネルにおける視聴維持率(例)

引用(画像): YouTubeアナリティクス機能の視聴者維持率の推移画面(数値は筆者の過去の配信動画の測定値)

視聴維持率(または視聴者維持率)とは、動画を見始めたユーザーがどれくらいその動画を視聴し続けたかを示す指標で、配信動画ごとの視聴維持率をYouTubeのアナリティクス機能で確認することができます。上のグラフは5分弱の短めの動画を配信した際の視聴維持率で、動画を見始めた人のうち40%が最後まで見てくれたということになります。

YouTubeチャンネルを初めて運営する場合には、下記の指標に目が行きがちですが、チャンネル開設当初はこれらの指標はさほど重要ではありません

・チャンネル登録者数
・1回の配信における総再生回数

YouTubeには新しく開設されたチャンネルの初回配信の露出を優遇してくれる仕組みがあり、初回配信だけは再生回数が数百回程度まで伸びる場合が多いのです。そのため、初回配信時点の登録者数と再生回数はあまり意識しなくても問題ありません。そもそも、開設直後はチャンネル登録者数が少ないことも、そのために再生回数が伸びないことも当たり前ですよね。

YouTubeで2本目以降に配信する動画の再生回数を伸ばしやすくするためには、視聴維持率がカギとなります。なぜなら、YouTubeの再生アルゴリズムでは視聴維持率の高低が重視されているからです。

YouTubeでは、視聴維持率が高いチャンネルは信頼できると判断されるため、ブラウジング機能(おすすめ動画を紹介してくれる機能)で配信動画が表示されやすくなります視聴してもらえるきっかけが増えることで再生回数が伸びやすくなり、再生回数が伸びることでチャンネル登録者数も増えていきます。

YouTubeチャンネルでは次の①~⑤の流れを生み出すことが理想です。

◆YouTubeチャンネル開設後の理想的な流れ

① 動画の視聴維持率を高める
② 頻繁に動画を配信する
③ ブラウジング機能での表示が増える
④ 動画の再生回数が増える
⑤ チャンネル登録者数が増える

チャンネル開設当初は登録者数や再生回数の少なさに一喜一憂することなく、最後まで見続けてもらえる動画を作成、配信することに注力しましょう。

ポイント② チャンネル開設の事前告知は控えるべき

誰もが知っている有名企業や有名人が運営または参加している場合は告知したほうが効果的ですが、そうでない場合はYouTubeチャンネルの開設を事前に告知しないほうが良いでしょう。

先述のとおり、YouTubeチャンネルの開設初期は「視聴維持率」が最重要指標となります。そのため、開設(すなわち初回配信)を告知することで、動画の内容に興味のない人の視聴やチャンネル登録が増え、視聴維持率が下がる可能性があるからです。

例えば、ユニクロ、ZOZOTOWN、ニトリなど、すでにファンを確立している有名企業などの場合には、ファンが視聴することによる集客が期待できるため、積極的に事前告知すべきです。

しかし、さほど有名ではないアカウントが配信するハウツー系動画などの場合、そのノウハウを「本気で探している人」でなければ、動画を最後まで視聴してもらうことは難しいでしょう。周囲の知り合いに片っ端から告知することで、チャンネル登録数や再生回数は微増するかもしれません。しかし、興味のない人は途中で動画を見るのをやめてしまったり、2回目以降の動画を見なくなったりする可能性が高いため、視聴維持率が大幅に低下します。

視聴維持率が低いとYouTubeのおすすめ動画に表示されにくくなるため、再生回数を伸ばす機会すらつかむことができなくなります。

ポイント③ YouTubeチャンネルで広告を出してはいけない

もし広告予算が十分にあったとしても、安易に広告を掲載するのはやめたほうがいいでしょう。

YouTube広告では、広告を表示するターゲットを絞るためにキーワードを登録することもできるのですが、実際には期待するターゲットよりも幅広いユーザーに広告が表示されてしまいます。そのため、無効なクリックが増えることで、驚くほど視聴維持率が低下してしまいます。

下のグラフは、筆者が実際に広告を掲載して配信した動画の視聴維持率を示しています。

引用(画像): YouTubeアナリティクス機能の視聴者維持率の推移画面(数値は筆者の過去の配信動画の測定値)

動画の開始から約5分30秒が経過した時点で、視聴し続けてくれているユーザーはたった3%になっています。広告を出す前の同じ動画の視聴維持率は30%以上だったので10分の1まで低下したことになります。視聴維持率が大幅に下がった原因は、広告を見たユーザーが動画を再生してみたものの、興味のない内容だったためほとんどが離脱してしまった点にあります。

筆者の経験上では、約10万円の予算の広告掲載により30~100人程度のチャンネル登録者数を増やすことはできるのですが、視聴維持率が低いとYouTubeでの露出が減り、興味のあるユーザーを集める機会を損ねることにもつながるため、安易に広告を掲載することは避けるべきです。

広告掲載は、瞬間的に「再生回数を増やす」、あるいは「チャンネル登録者数を増やす」という目的の場合には有効な施策となるため、目的に応じて使い分けていくようにしましょう。

ポイント④ 初回配信前には、少なくとも10本以上の動画を用意しておこう

YouTubeチャンネル開設当初はYouTube側の優遇措置によって動画はある程度再生されます。そのため、チャンネル開設直後は、できれば毎日、少なくとも週に2~3本程度は動画を配信し続けることをおすすめします。そのために、初回配信前までには、少なくとも10本以上の動画を用意しておきましょう

初回配信前にある程度の動画を用意しておくことで、配信後も常にストックをいくつか持っている状態を作りやすくなり、チャンネルの運営にも余裕を持つことができます。ストックがないと、撮影と編集に追われ配信も滞りがちになりますし、何より動画の質が落ちやすくなってしまいます

YouTubeチャンネルの開設初期は、より多くの人に見てもらってチャンネル登録してもらうための最初の勝負どころとなります。この時期の配信頻度と動画の質がその後のYouTube運営を大きく左右します

ポイント⑤ 一目で配信内容が分かるチャンネル名を付けよう

事業用のYouTubeでは、チャンネル名に企業名やサービス名を付けることが多いと思いますが、名前を知られていない企業の場合にはあまりおすすめできません

例えば、ファッション関連の企業であれば、「ファッション研究所」や「トレンドファッション紹介チャンネル」など、一目で配信内容が分かるチャンネル名にすべきです。

なぜなら、知らない企業名のチャンネルをユーザーは登録しようと思わないからです。

YouTube開設の目的が、たとえ企業名やブランド名の認知の場合であっても、開設当初は、何を配信しているチャンネルなのかがユーザーにきちんと伝わるチャンネル名を付けるべきです。YouTubeのチャンネル名は、月に3回まで変更できますので、登録者数が増えたタイミングなどで、名前を変更するのが良いでしょう。

まずは動画に興味を持ってもらいやすい名前を付けるようにしましょう。

ポイント⑥ 動画の概要欄は有効な情報を戦略的に掲載しよう

優れた動画であっても、概要欄を見ると公式サイトやSNSアカウントしか掲載していない投稿があります。YouTubeの親会社Googleは検索エンジンの老舗です。そのため、YouTubeで配信される動画のあらゆる要素がAI評価の対象となります。動画の内容は言うまでもありませんが、概要欄にもAIが内容を判断できる程度の情報を掲載すべきです。

◆YouTube動画の概要欄(例)

引用(画像):YouTubeで配信する動画の概要表示画面(筆者の配信動画の例)

概要欄には、ひと昔前のSEO対策のようにキーワードを詰め込む必要はありません。200~500文字程度で分かりやすく動画の内容を紹介しましょう。

ポイント⑦ 最低でも50本、理想は100本目くらいの動画の反応で見極めよう

多様なクリエイターが参入しているYouTubeでは、すでにあらゆるジャンルの動画が配信されており、YouTubeですぐに成功することは容易ではありません。チャンネル登録者数がなかなか増えなくても、焦らずに中・長期的な視点で取り組むことが大切です。

最初の目安として、最低50本、できれば100本くらいまでは、コツコツと配信し続けましょう。動画を100本公開した時点でチャンネル登録者数の伸びが悪い場合には、動画のテーマやアカウントのイメージ戦略がうまくいっていないことも考えられるため、もう一度、YouTube戦略を練り直す必要があります。

ライブ配信で視聴者へのエンゲージメント高める

ライブ配信では、視聴者と直接チャットで交流することができます。ライブ配信機能はスマホでは1000人以上の登録者数が必要となりましたが、PCではチャンネル登録者数が1000人以下であってもGoogleに申請すればすぐに利用できるようになります。

ライブ配信を行うことで新規視聴者よりも、チャンネル登録者してくれている視聴者とのエンゲージメントが高くなります。筆者もYouTubeチャンネルを運営しておりますが、ライブ配信では、通常動画とは違う講座を提供したり、ユーザーの質問に直接対応を行っております。

また、ライブ配信動画はアーカイブとして残り、ライブに参加できなかったユーザーにも届けることができるので、動画撮影や編集に手間がかかる企業の方は、ライブ配信をメインにやる手法もあります。ライブ配信の場合は、チャンネル登録者数が少ないと集まりませんので、告知をしっかりおこないましょう。

筆者のチャンネルは1200人程度のノウハウ系ですが、ライブ配信では15人程度が集まります。15人と言うと、少なく感じるかもしれませんが、通常の企業セミナーで15名と言うとなかなかの規模感と言えるでしょう。

視聴者とのエンゲージメントが高くなると、チャンネルの露出のアルゴリズムに影響していきますので、ライブ配信の実施も検討しましょう。

開設後はとにかく継続することが大事!

ここまで、チャンネル開設前の具体的なポイントを解説してまいりましが、配信開始後はとにかく「継続すること」が何より大事です。

元々の知名度がない限り、チャンネルを開設してもしばらくの間は、YouTubeアルゴリズムに認知されていないため、なかなか再生も回らず登録者も増えません。そのためモチベーションも保ちづらいですし、日々の通常業務と並行していくのであれば、なおさら熱を入れにくいでしょう。

しかし、YouTubeチャンネルの運営で大切なことは、すぐに結果を求めずに、決めた頻度で動画を配信し続けていくことです。数人しか観てくれないからといって配信が止まってしまったら、その数人も登録解除して、二度と観てくれないかもしれません。

最初は登録者数50人、あるいは100人まで長い道のりに感じるでしょう。しかし、100人を超えて200人、500人と増えていくほどに、再生回数や登録者が増えるスピードは上がっていくはずです。

筆者も、登録者数2桁から3桁になるまでに長い時間と試行錯誤を費やしました。挫折しそうになったこともありましが、それでも配信頻度を守って決められた曜日と時間に配信し続けたところ、500人を超えたあたりから、コンスタントに登録者数が増えていくようになったのです。

まとめ:チャンネル登録者数1,000人超えを達成するには、最短でも6か月程度は必要

筆者の経験では、YouTubeでチャンネル登録者数1,000人を達成するためには最短でも半年程度の期間が必要になります。また、YouTubeのチャンネル登録者数は、おすすめ動画の表示回数の増加に伴い、一気に増える傾向があります。

そのため、YouTubeチャンネルの開設当初の「視聴維持率」は極めて重要です。視聴維持率が高ければ、YouTubeアルゴリズムで良質なチャンネルと判断されて、露出が増えていくからです。

動画を作成、配信し続けるのはとても大変な作業ですが、高い視聴維持率を保ち続けられるように、配信後の測定結果は必ず毎回分析し、ユーザーが興味を持ってくれる魅力的な動画を作成、配信していきましょう。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。