基幹システムの主要機能と導入するための7つの手順を解説


基幹システムは、事業の根幹ともいえる情報を管理し、経営活動を支え、業務を効率化するための支援システムです。具体的には、以下のような業務システムを指します。

◆基幹システムの6つの機能

①会計管理
②生産管理/仕入管理
③在庫管理
④販売管理
⑤仕入管理
⑥人事給与管理

基幹システムはまさに企業の中核であり、戦略の策定や業務の効率化にも大きく関わってきます。

近年はDXの加速を目指して基幹システムの見直しを検討している企業も少なくありません。基幹システムは社内のあらゆる部門に影響するため、新しいシステムの導入が完了するまでに数年かかることが多いです。

基幹システム導入を成功させるためには、企業の業務に精通し、全部門とコミュニケーションを取りながらリーダーシップを発揮してプロジェクトを推進していくことができる人材を、プロジェクトリーダーとして任命することが理想的です。

この記事では、インターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、基幹システムの導入と移行について、筆者の経験を交えて解説します。

基幹システムの導入費用は数億円規模となる場合も!

比較的リーズナブルに基幹システムを構築できるSaaSサービスも数多く存在しており、月額費用数万円程度で利用できるものもあります基幹システム導入時の費用は企業規模や構築方法などによって異なりますが、筆者の経験をもとにした目安を下表にまとめました。

◆基幹システムの構築方法別の費用感比較

クラウド(SaaS) パッケージ スクラッチ
初期費用 安め 高め 非常に高い
システム自体の
ライセンス料金
月額/年額で利用料金が発生 初期費用のみ 不要
ハードウェア費用 不要(月額/年額利用料金に含む) 別途手配(別料金) 別途手配(別料金)
カスタマイズの可否 限定された範囲内で可能な場合がある(追加料金が必要) 可能(追加料金が必要) 可能(追加料金が必要)
システムアップデート費用 不要 都度発生 都度発生

出典:筆者の経験に基づき独自に作成

中~大規模企業の場合、機能やカスタマイズの幅が限定されたSaaSでは要件を十分に満たせないため、パッケージをベースにカスタマイズや、フルスクラッチ開発が必要となり、費用が数億円以上にのぼるというケースも少なくありません。

経済産業省が公開している「DXレポート」でも報告されているように、日本でDXが進まない原因の一つに、企業ごとに独自の業務フローを構築している場合が多いため、SaaSやパッケージの標準機能だけでは業務が回らないという点があります。

また、特定のITベンダーと契約している企業では、システムに関する課題はすべてITベンダーに丸投げしているというケースも多いです。そのため、業務フローの標準化や不要なシステム機能の見極めが難しく、結果として、システム機能が過剰に盛り込まれ、開発・導入費用が増えるといった状況が生まれやすくなります

参考:経済産業省DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月7日公開)

日本企業も欧米企業のように、業務プロセスをSaaSやパッケージの機能仕様に合わせて最適化することができれば、より早く、より低コストでシンプルな基幹システムを構築できるようになります。しかし、部署ごとに細分化した複雑な業務プロセスを、システムの仕様に合わせて構築し直すことは容易ではありません。

基幹システムの6つの主要機能

では、次に基幹システムに必要とされる機能について解説します。一概には言えない面がありますが、多くの企業の基幹システムに含まれている主要機能は以下の6つです。

基幹システムの6つの主要機能

①会計管理
②生産管理/仕入管理
③在庫管理
④販売管理
⑤仕入管理
⑥人事給与管理

基幹システムでは、①~⑥の機能を緊密に連携させる必要があります。以下は、6つの機能の連携イメージです。

◆基幹システムにおける機能連携(イメージ)

出典(画像):筆者作成

上図のように、基幹システムは企業の中核業務を円滑に遂行するために最低限必要な機能群です。そのため、一般には以下の機能は基幹システムには含まれません。

基幹システムではない機能の例

・文書管理
・顧客管理
・営業支援
・広告管理

もちろん上記の機能が重要ではないということではありませんが、これらのシステムがなくても中核業務は遂行できるため、事業が中断されることはないからです。

①~⑥の基幹システムを個別運用している企業もあれば、部分的あるいは完全に統合して運用している企業もあります。

基幹を含む全てのデータを統合・管理するためには、ERP(Enterprise Resource Planning)を導入する必要があります。ERPを導入することで、社内のさまざまなデータを素早く分析して、データ駆動型の意思決定ができるようになります。

基幹システムを導入するための7つの手順

基幹システムも、他のシステムと同じ手順で導入していくのですが、企業の中核事業に関わる基幹システムは、他システムを含めた企業全体への影響が極めて大きいため、導入時の難易度がとても高くなります。

それでは、基幹システムの導入手順を見ていきましょう。今回は、実際に基幹システム導入に携わった筆者の経験をもとに、7つの手順で概要を解説します。

手順①プロジェクトチームの作成

プロジェクトチームを組成し、プロジェクトリーダー、関連部門の担当者、IT部門の担当者を任命します。また必要であれば、外部の専門家もプロジェクトメンバーに含めるようにしましょう。

プロジェクトリーダーは、社内業務に精通し、部門間の垣根を越えてコミュニケーションを取りながらリーダーシップを発揮することができる人材が適任です。

とはいえ、完璧な人間はそうそういませんので、不足している能力を補完できるような体制を構築しましょう。プロジェクトリーダーとメンバーの人選は、プロジェクトの成否を決める最初の鍵であると筆者は考えています。

手順②要件定義

業務プロセスをすべて洗い出した上で、システム化が必要なプロセスを決定し、要件定義書として明文化します。新しいシステムを導入するタイミングは、業務プロセスを見直す絶好の機会でもありますので、現行プロセスをシステムに置き換えるのではなく、最初に業務プロセス自体を最適化して、システム化すべきプロセスは何か、どのように実現するのが適切か、という視点で新しい業務プロセスを改善しましょう。

業務プロセスの検討と要件定義は、最も業務を理解しており、実際にシステムを利用することになる業務担当者を交えたメンバーで行います。

要件定義フェーズから業務担当者がプロジェクトに参画することで開発の手戻りを減らすことができ、自分たちが使う新しいシステムを作っているのだという当事者意識が生まれやすくなります

特に基幹システムの導入では、システムを利用する業務担当者が前向きに関与できるようにプロジェクトに巻き込んでいくことが大切です。

手順③システム選定

採用するシステムを選定します。日本の企業文化として独自の業務プロセスを好む傾向が強いため、カスタマイズの自由度が低いSaaSやパッケージを利用できる企業はあまり多くありません。しかし、手順①の要件定義で定義したシステム要件を満たせる場合は、費用対効果の高いSaaSやパッケージを採用すべきでしょう。

昨今は、世界中で「DX」の重要性に対する意識が高まっていますが、現実として、「標準的なシステム機能に合わせて業務フローを変更する」という考え方は、日本文化では受容されにくい印象があります。日本人は他国に比べ、サービスに対して「丁寧さ」や「安心」を求め、「失敗」を避ける傾向がより強いと言われることも多いです。

特に老舗企業や大手企業では、業務プロセスの改善は影響範囲が大きく、失敗した際のダメージが大きいため、簡単に決定することはできないでしょう。

さて、自社で内製する場合以外は、スクラッチ、SaaS、パッケージのいずれの方法で構築する場合も、開発から導入までをベンダーに委託することになります。すでに取引のある企業だけでなく、数社に提案を依頼して比較検討した上で、自社の事業領域に精通しており、基幹システムの導入実績が豊富なベンダーを選ぶようにしましょう。

また、導入・開発費用だけではなく、操作トレーニング、保守の体制とサービス内容、導入後のカスタマイズ対応など、運用条件、ハードウェアやソフトウェアのライセンス等についても、この時点で確認しておく必要があります。

手順④システム構築(開発/導入)

手順①で策定した要件定義書に沿ってシステムを構築(開発/導入)します。

システム構築期間中に(スクラッチの場合は開発方法によっても異なりますが)、要件定義に含まれていない追加要件や仕様変更が発覚する場合も少なくありません

リリース後にシステム機能と実際の業務プロセスとのギャップが生じることのないように、この期間中も、業務担当者を交えた定例会議で進捗状況を確認するようにしましょう。

手順⑤各種テスト

システム開発では、開発工程で実施する単体テスト、結合テスト、システムテスト、性能テスト、開発後に実施する運用テスト(受け入れテスト)などがあり、各工程でシステムが想定どおりに機能するかどうかを確認し、問題点やバグを洗い出します。

筆者が以前勤務していた英会話スクールの基幹システムのリプレースでは、最初に一部の拠点だけに新システムを適用し、そこでの試験運用の中で課題やバグを洗い出し、それらの修正と改善を反映した新システムを全拠点に一斉適用するという、段階的な導入手順を採用しました。

範囲を区切ってテストと改修を段階的に重ねて導入していくことで、問題が生じた場合にも、事業への影響を最小限にとどめることができます。

手順⑥トレーニング

システム構築が完了し、運用を開始するまでの期間で、業務担当者にあらかじめ作成しておいた操作マニュアルや運用マニュアルなどを配布し、システムの操作方法を教えるためのトレーニングを開催します。

手順⑦システムリリース(運用切り替え)

システムリリースは、旧システムから新システムへの切り替えとトラブル発生時の切り戻しをスムーズに行えるように計画する必要があります。

また、基幹システムではありませんが、新潟県の公文書管理システムに改修プログラムを適用した際にバックアップを取っていなかったために、約10万件の公文書データが消失してしまったという事故も発生しています。システム切り替えの前には、必ず旧システムの最新データのバックアップを作成することを忘れないようにしましょう。

参考:ITmedia NEWS「新潟県データ10万件消失事故 拡張子を小文字にしたかったのはなぜか 県に聞いた」(2023年4月24日掲載)

新システムへの切り替えは、業務への影響が比較的小さい休業日や深夜帯などに行うようにしましょう。また、新システムの運用開始後しばらくの期間は、予期せぬトラブルや問い合わせが発生するため、あらかじめフォロー体制を構築しておくことも重要です。

システム導入成功の秘訣はリーダーシップの存在

先程も軽く触れましたが、筆者がかつて勤務していた英会話スクールで、プロジェクトの完了までに5年以上を要する基幹システムの導入を経験しました。この時の経験から筆者は、プロジェクトを成功させるための最初の鍵は、プロジェクトリーダーに最適な人材を任命することである、と確信しています。

当時、プロジェクトリーダーには、一般社員として入社し、実績を積んで幹部になった、いわゆる「たたき上げ」で、社内の人望も厚い男性が任命されました。

プロジェクトリーダーとなった彼が最初に行ったことは、当時1,800人の全従業員に向けて「新しい基幹システムを導入できなければ、我々に明日はない!」というメッセージを発信し、全従業員に新システムの導入が企業の最優先事項であることを理解させることでした。

その後、数々の苦難を乗り越えて、無事に導入された新しい基幹システムの費用は、最終的に数十億円にのぼりました。

システム導入の障壁と成功要因は業界や企業ごとにさまざまだと思いますが、すべての企業に共通する鍵となるのが、企業全体を巻き込む前向きなパワーを持ったプロジェクトリーダーの存在であると筆者は考えています。

ECシステムと基幹システムは疎結合のほうがよい

ECシステムと基幹システムはそれぞれ独立運用し、必要なデータと機能だけを連携させることをおすすめします。

ECでは、例えばマーケティング機能や新しいデバイスへの対応など、外的要因の変化にも即座に対応する必要があるため、他のシステムと比べて、アップデートや改修が多くなりやすいシステムだからです。

そのため、ECシステムと基幹システムを無理に統合するよりも、仕入管理などの一部の機能だけを連携させるほうが効率的です。

最近は、SaaSやパッケージの場合でも、外部システムと連携するためのAPIや仕組みを複数提供していることが多いです。

クラウド型のECプラットフォームである弊社の「ebisumart(エビスマート)」でも、API連携はもちろん、さまざまなシステムとの連携が可能で、基幹システムとECシステムの連携実績も多数あります基幹システム導入をご検討中の方は、下記の公式サイトからお問い合わせください。

【公式】「ebisumart(エビスマート)」

まとめ

基幹システムの導入やリプレースは相当な覚悟が必要ですし、ITベンダーやコンサルタントに丸投げするだけでは、決してうまくいきません。

企業の業務に精通しており、リーダーシップを備えた人材をプロジェクトリーダーに任命し、プロジェクトリーダーに不足している領域がある場合には、そこを補完してくれる人材を外部から招集しましょう。

基幹システム導入は、数年規模のプロジェクトとなることがほとんどなので、すべての部門が一丸となり、会社の資産を構築するのだという空気感を醸成することがより良いシステム導入につながります。

開発を委託する場合にはITベンダーの選定ももちろん大切ですが、企業が、自分たちが仕事をするためにより良いシステムにしようという当事者意識を持ち、プロジェクトを推進するために最善の体制を構築することが、何よりも重要です。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。