今からECサイトでSNSを運用する人が読むべきまとめ


ECサイトの集客のためにSNSを始めたいと考えている担当者の方は多いのではないでしょうか? ECサイトでSNS運用を開始する際は、ECのターゲットであるユーザーが一番利用しているSNSの運用から始めるのが効率的ですが、優先順位に迷ってしまうという方に筆者がおすすめするのは「Instagram」です。

Instagramはユーザーに写真や動画でシンプルにメッセージを届けることができるため、共感してくれるユーザーにフォロワーになってもらいやすいからです。また、ショッピング機能も提供されており、Instagramで商品を紹介してECサイトに誘導することもできるので、比較的手軽にEC連携を実装できます。

この記事ではインターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、6種のSNS(Instagram、Twitter、Facebook、TikTok、LINE、YouTube)について、ECサイトで運用する際のポイントを解説します。

ターゲットユーザーがよく利用しているSNSは?

下図はNTTドコモ モバイル社会研究所が2021年1月に実施した世代別のSNS利用率を示したグラフです(ここでは、識別しやすいようにサービス名と年代を追加しています)。

◆年代別SNS利用率(2021年1月)

出典:「【SNS】LINE利用率8割超え:10~30代は9割が利用」(NTTドコモ モバイル社会研究所ホームページ)(2021年5月20日掲載)を加工して作成

グラフを見ると、国内では全世代共通でLINEが最も利用されています。2番目に利用されているSNSは年代で差があり、10~50代ではTwitter、Instagram、60~70代ではFacebookが利用されています。また、10代からはFacebookよりもTikTokが支持されていることが分かります。

上のグラフには含まれていないYouTubeについては、次のような数値が公開されています。

◆YouTubeのリーチとスマートフォンのみの利用状況(2018年12月)

引用:「若年層の約9割がスマホだけでYouTubeを利用/有料動画アプリの利用率は25%増【ニールセン調査】」(MarkeZine)(2019年3月1日掲載)

左のグラフからは、YouTubeは幅広い年齢層で利用されていることが分かります。また右のグラフが示すように、すべての年齢層においてYouTubeユーザーの大半がスマートフォンで視聴しています。

自社のECサイトで運用するSNSを選定する際には、上記のような公開情報を参考にして、ターゲットユーザー層が利用しているサービスを検討するのがよいでしょう。

SNSでは頻繁な投稿が求められ、また、サービスごとにコンテンツや性質が異なるため、自社で運用を継続できるかという点を検討することも大切です。

6種のSNSの特徴と運用のポイント

6種のSNS(Instagram、Twitter、Facebook、TikTok、LINE、YouTube)について、それぞれの特徴と運用のポイントなどを見ていきましょう。

①Instagram

Instagramは、メインコンテンツが写真や動画なので視覚的にメッセージを訴求でき、フォロワーからの反応を得やすいという特性があり、比較的ECサイトの集客効果につなげやすいサービスです。タグを設置することで、興味のある人に見つけてもらいやすくすることもできます。

Instagramには、ショッピング機能(Instagramショッピング)など、ユーザーをECサイトに誘導するための仕組みが提供されており、ECサイトとの連携を比較的手軽に始められます。また、ストーリー機能(Instagramストーリーズ)を使うと、写真や動画にECサイトのURLを張ることができるため、ECサイトの販売チャネルとして確立させることもできます。

商材を写真や動画にした際の視覚効果が高いため、下記とは特に相性が良いSNSです。

・アパレル
・食品
・家具・雑貨
・デジタルコンテンツ(アニメや漫画)

一方でソリューションや機能型のサービスや商材を扱う業界では、投稿コンテンツを作り込む必要があるため、都度の制作コストが大きくなりすぎる可能性もあります。

参考:InstagramInstagramショッピングInstagramストーリーズ

②Twitter

Twitterは、テキスト主体のサービスなので、ユーザーとの活発なコミュニケーションが生まれやすいという性質があります。ツイートを見たフォロワーは即座に「リプライ」「リツイート」「いいね」などの反応を示してくれます。

Twitterでフォロワーを増やすためのポイントとして次のようなものが挙げられます。

①プロフィールで信頼できるアカウントであることを示す
②適切なタイミングと回数でツイート(投稿)する
③写真を添えてツイート(投稿)する
④フォロワーのリプライ(返信)を積極的にリツイート(転載)する
⑤フォロワー数の多いアカウントをメンション(アカウント名をタグ付けして投稿)する

特に⑤のメンションは、同じようなテーマの情報を発信している人気アカウントをタグ付けすることで、より多くのユーザーの目に触れやすくなります。人気アカウントのユーザーがリプライしてくれることもあり、関心のあるフォロワーとの交流が生まれやすくなります。

公式Twitterの運用で注意しなければならないのは投稿内容です。テーマと無関係な内容や、仲間内の情報、個人的な主張は投稿しないほうがよいでしょう。

例えば、「今日は弊社の創立記念日です」や「本社の外の桜がやっと咲きました」などのツイートは仲間やコアなファンが多い場合には盛り上がりますが、一般にECサイトの公式アカウントではECサイトならではの有益な情報が求められます。よほど戦略的な意図がない限り、ECサイトが発信する情報はユーザーに役立つ情報に絞ったほうがよいでしょう。

参考:Twitter

③Facebook

Facebookは、ユーザーの年齢層が高い傾向があり、生活に比較的ゆとりのあるユーザー層が利用していると見られています。

Facebookの最大の特徴は長文を投稿できる点です。下図は実際にヨドバシカメラの公式Facebookアカウントに掲載された投稿です。

◆ヨドバシカメラの公式Facebookページ(投稿例)

引用(画像):ヨドバシカメラ公式Facebookページ(@yodobashi)の掲載記事より

ヨドバシカメラのFacebookページでは、商品の魅力を十分に伝えるために、写真とテキストで、商品の特徴や利点を丁寧に解説しています。また、コメントやメッセンジャー機能を利用して、双方向のコミュニケーションが取れるようにしています。

若者世代の利用率は高くありませんが、20代以降のユーザーを幅広くカバーしているサービスなので、中・長期的な施策の1つとしての運用を検討しておくとよいでしょう。

参考:Facebook

④TikTok

TikTokは、動画がメインコンテンツのサービスです。TikTokのアルゴリズムでは、新規投稿についてはフォロワー数や他の指標に関係なく一定回数まで自動再生してくれるため、アカウントを開設するにあたり心強いです。

面白いコンテンツを投稿することで、フォロワーが一気に増えてバズを生み出すこともあります。

TikTokの投稿におけるポイントとしては次のようなものが挙げられます。

①プロフィールで信頼できるアカウントであることを示す
②初回投稿コンテンツからクオリティーを重視する
③リズミカルな動画を投稿する
④毎日同じタイミングで投稿する
⑤サムネイルを統一する

TikTokでは、「役立つ」という要素よりも「面白さ」という要素のほうが、より反響が大きくなる傾向があります。毎日配信するための企画や動画制作には労力を要しますが、ヒットコンテンツが生まれれば、爆発的にフォロワーを増やすことができるため、何度も繰り返し視聴したくなるような、魅力的なコンテンツを投稿するように心がけましょう。

10~20代の若者から支持されているサービスなので、若者をメインターゲットとする商材やサービスを取り扱っている企業は、TikTokの運用も検討してみるとよいでしょう。

参考:TikTok

⑤LINE

LINEは、国内で最も利用されているSNSで、基本的には1対多のコミュニケーションツールです。従来のメルマガ(メールの一斉配信)と似ていますね。

企業がLINEを運用するためには、LINE for Businessの「LINE公式アカウント」の登録が必要になります。フリープラン(月額無料)でも毎月1,000通までメッセージを送信できるので、「友だち」(フォロワー)の数が少ない間は十分運用できます。

まずは、ECサイトや実店舗などの販売チャネルでLINEの公式アカウントを積極的に紹介して「友だち」登録数を増やすことから始めましょう。

「友だち」を増やすためには、クーポンやポイントなどの特典施策を同時に展開することが重要です。LINEの最大のメリットはユーザーが手軽に利用できる点です。メルマガよりも読んでもらえる可能性が高く、購買後のフォローアップやリピート購入の促進などにも利用できるため、「友だち」を増やすための継続的な取り組みが大切です。

参考:LINELINE for BusinessLINE公式アカウント

⑥YouTube

YouTubeは、チャンネル登録者数を増やすことで大きな収益チャネルを確立できますが、人気チャンネルへと成長させるためのノウハウが必要です。また、コンテンツ制作や定期配信などの運用コストは比較的大きくなります。

過去にはEC企業の参入も少なく、チャンネル登録者数を増やしやすかった時代もありましたが、今日では多くの企業やクリエイターが参入し、すでにレッドオーシャン化しているため、チャンネル登録者数を増やしづらいのが現状です。

YouTubeでチャンネルを開設する際のポイントとして次のようなものが挙げられます。

①プロフィールで信頼できるアカウントであることを示す
②初回投稿コンテンツからクオリティーを重視する
③視聴維持率を意識する
④開設前にある程度のコンテンツを用意しておく
⑤企業名やサービス名をチャンネル名にしない

YouTubeのアルゴリズムでは、チャンネル開設後に初めて投稿する動画については、再生されやすくなるように優遇されます。そのため、最初に投稿するコンテンツで興味を持ってもらえるようにクオリティーの高いコンテンツを用意しましょう。

また、チャンネル登録者数が増えるまでは、YouTubeのアルゴリズムによる評価を高めるためにも、継続投稿できるようにコンテンツを用意しておきましょう。筆者の経験では、開設後の数か月間は週に2本以上は投稿する運用をおすすめします。

YouTubeのアルゴリズムでは、視聴維持率も評価されます。そのため、最初からコンテンツのテーマやアカウントに関心のないユーザーが動画を見ると、途中で離脱してしまうため視聴維持率が低下します。つまり、再生数やチャンネル登録者数だけを意識して、数合わせのためだけに知人や社員に登録を依頼してしまうことで視聴維持率が下がる場合があるということです。

YouTubeの存在価値と情報共有の本来の目的から考えても、ユーザー自身が興味のあるチャンネルを発見してチャンネル登録するというのが極めて自然な流れです。

例えば、YouTube広告を利用したことで、興味のないユーザーが大量に訪れた結果、視聴維持率が下がってしまった、ということも起こり得るため、チャンネル開設当初は広告運用も含めて戦略的に検討すべきでしょう。

参考:YouTubeYouTube広告

ECサイトのSNS投稿の基本は「お役立ち情報」

SNSでは面白いコメントが注目され、バズを生みやすい傾向があります。しかし、EC事業の収益を上げることを目的とするSNSでは、ユーザーに「お役立ち情報」を継続的に提供することが求められます

奇抜な投稿で一時的にフォロワーを増やせたとしても、そのフォロワーがECのターゲット層と一致する可能性は低いでしょう。なぜなら、そのフォロワーは奇抜な投稿を求めているだけで、企業やブランド、商品に関心があるわけではないからです。

企業は、ブランドや商品、企業自身のコアなファンを増やしていくために注力すべきです。ファンを増やすためには、ユーザーに役立つ情報を定期的に投稿していくことが大切になります。

◆お役立ち情報の投稿例

・季節ごとのおしゃれなファッションコーディネートの紹介(アパレル業界)
・料理方法や旬の食材の紹介(食品小売業界)
・インテリアのコーディネートや便利な使用方法の紹介(家具・インテリア業界)

信頼されるプロフィールを登録しよう

SNSで1つの投稿を見たユーザーがすぐにアカウントやチャンネルをフォローするというケースはまれで、「このアカウントではいつも何が投稿されているのか」「自分に役立つ情報を発信しているか」などを確認してからフォローすることが多いです。その際にユーザーが確認するのが、アカウントアイコンのクリックで表示されるプロフィールです。

プロフィールを見たユーザーに、信頼できるアカウントであることを伝えられない場合には、フォローしてもらうことができません。また、過去の投稿の内容がプロフィールのイメージと違う場合や、テーマが一貫していない場合にも、フォローしてもらえなくなることがあるので注意しましょう。

SNSの運用を開始する際は、公開前に分かりやすいプロフィールを作成するとともに、アカウント名、アカウントアイコン、壁紙のテーマなどについても総合的に検討するとより効果的です。

ささげ業務にSNS用の写真撮影を入れる

SNSに投稿する写真や動画は、SNS専用のコンテンツを用意するようにしましょう。

ECサイトに掲載している商品やイメージ画像などのコンテンツを転用するのではなく、実際に商品を使った時に機能や特徴をイメージしてもらえるようなコンテンツのほうが反響を得やすくなります。

日々のECサイトの運営に加え、SNSを運用していくことで、業務負荷は確実に増えるため、例えば、ささげ業務でECサイト用の商品を撮影する際に同じスケジュールでSNS用の写真撮影を組み込むなど、できるだけ作業の負担を低減して効率よく運用できるような業務フローや体制を検討しておくことも重要です。

ささげ業務については、関連記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:ささげ業務とは「撮影・採寸・原稿」の頭文字の略称

まとめ:会員だけが、リピーターではない!

LTV(顧客生涯価値)を高めるためには、新規・既存を問わずECサイトで繰り返し購入してもらう必要があります。リピーターの育成に重点的に取り組んでいるEC企業も増えており、ユーザーの利便性を高めるための施策を展開しています。

SNSが普及したことで、顧客接点の種類は格段に増え、その頻度も増しています。ユーザーの興味がコミュニケーションの起点となるSNSは、コアなファンを獲得し、ECサイトの売上につながるリピーター育成でも重要なチャネルです。

まずは、自社に合ったSNS運用を確立して、ユーザーとのコミュニケーションを活性化していきましょう。


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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。