大手4社から学ぶオムニチャネルマーケティング事例の解説

オムニチャネルは今では誰もが耳にしている言葉です。オムニチャネルは、omni(全て)とchannel(経路)で成り立ち、全ての顧客接点で購買に結び付けるという意味です。

しかし、この解釈は昔から実施しているマルチチャネルと大差がありません。オムニチャネルとは販売するだけではなくユーザーエクスペリエンスが含まれ、マーケティング戦略の中心的存在であります。

では、全ての顧客接点でどのようにマーケティングをすればいいのでしょうか?

本日は株式会社インターファクトリー(ebisumart)でWEBマーケティングを担当している筆者がオムニチャネルを実践している業界大手4社の事例を交えてオムニチャネルマーケティングを解説いたします。

まず、オムニチャネルについて、言葉の意味やO2Oとの違いなど、オムニチャネルの基本的な理解を深めたい方は、下記の記事をご覧ください。

オムニチャネル記事:国内・海外事例やO2Oとの違いでオムニチャネルを理解する【完全解説】

目次

1社目:イオンのオムニチャネルマーケティングへの取り組み
2社目:セブン&アイホールディングスのオムニチャネルマーケティングの取り組み
3社目:資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組み
4社目:ツタヤのオムニチャネルマーケティングの取り組み
オムニチャネルマーケティングの3つのポイント
まとめ

1社目:イオンのオムニチャネルマーケティングへの取り組み

イオンのオムニチャネルの取り組みとしてイオン幕張新都心店があります。

「実店舗とインターネットの連携を強化し、お客さまに新しいショッピングスタイルを提供」をテーマに、POPにかざすとレシピが表示されるアプリの「撮って!インフォ」。店舗に品揃えしていない商品のお取り寄せ・店舗受け取りができるタブレット端末の「A touch Ru*Run」などです。

POPにかざす「撮って!インフォ」は、いままで紙で配布していたレシピをスマホアプリでも見られるようになります。情報量が多くなるので、メニューを考えることが大変な主婦にとって助かるサービスです。

A touch Ru*Runは、店舗にない商品をお取り寄せが出来る端末です。機会損失を減らす施策となり、顧客にも助かるサービスです。しかし、この端末を使うときは基本的には目的買いですのでECと大差がなく、顧客エクスペリエンスを最大化するには、店員も端末を持ち接客に利用する事も必要だと思います。

その他にもサウンドキャッチというアプリは、特定の場所でスマホをかざすと吉本の芸人が音で接客してくれるなど面白いアプリもあります。

このように、イオンのオムニチャネルへの取り組みは、イオン幕張新都心店で楽しんでお買い物ができる工夫がされています。現時点ではこういった取り組みはイオン幕張新都心店のみですが、今後は他店舗でも実施しどのようにEC含めグループ全体にオムニチャネルを普及させ、店舗以外の顧客接点でユーザーエクスペリエンスを提供していくかが課題となるでしょう。

イオンのオムニチャネルの受け皿!イオンドットコム

またイオンはオムニチャネル施策の受け皿となるECサイト「イオンドットコム」の準備をしています。現在はイオングループ各社の29のECサイトを束ねる形になっているだけで、ある商品を買おうとすると、対象製品のグループ会社ECサイトに遷移するのみの仕組みになっていますが、将来的には「イオンドットコム」内で商品を購入できるように進めております。

waon
 「イオンドットコム」を利用するにはイオンスクエアメンバーへの登録が必要です。登録すれば図のように、「ネットWAONポイント」が貯まり、「WAONポイント」との交換が可能になります。ポイントの交換が必要になる点は、スムーズではないですが、リアルとネットのポイントの一元化によりユーザーへの利便性を提供しているのです。「ネットWAONポイント」が使えるのは2016年1月の時点では20社ですが、今後グループ全体でポイントの一元化が進んでいく事でしょう。

2社目:セブン&アイホールディングスのオムニチャネルマーケティングの取り組み

2015年9月24日にセブン&アイ・ホールディングスはネットと全国1万9千店舗ある実店舗を連動させた「Omni7」(オムニセブン)を発表しました。これはグループ間で、ネットでもリアルでも場所や時間の制約が無いシームレスな買い物ができるようにする取り組みです。

過去にニッセンを買収(2014年)したことからも、ネット販売への強化を図っており、例えば通販の商品をセブンイレブンで受け取る事ができれば、セブンイレブンにとってもお客様が足を運んでくれるキッカケにもなり、グループ間で高い相乗効果を得られます。

今までのセブン&アイはチャネルの事業毎に事業を展開した経緯があり、グループとしての相乗効果をほとんど発揮する事ができていませんでした。セブン&アイのような巨大グループ企業がオムニチャネルを実践する事で、「いつでもどこでも買い物ができる」ようになり、日本人の商習慣を変えてしまう程のインパクトを与えるかもしれません。

しかし、一見するとこのオムニチャネルマーケティングは良い事ばかりのように思われますが課題は2つあります。

1つ目は現場の負荷です。顧客の利便性を高めて行けば行く程、セブンイレブンの現場の業務量は増えて行きます。ただでさえコンビニの業務量は多岐にわたります。グループのオムニチャネルの受け皿になるセブンイレブンには大きな負荷がかかります。

2つは目は物流センターの人手不足です。オムニチャネルというと、お客様との接触点(WEBや店舗)ばかりがフォーカスされますが、オムニチャネルを裏で支えるのは物流です。セブン&アイホールディングスの物流センターの「久喜センター」は改善を重ね、省人化を図っていますが、依然として物流センターの人手の確保が課題となっております。人手不足の課題はセブン&アイHDに限った話ではありませんが、利便性を高めるオムニチャネル施策は、配送時間のリードタイムをいかに少なくするかは物流にかかっているからです。

課題もありますが、すでに全国1万9千店舗のお客様接点がある点は大きな強みです。さらにセブン&アイはグループをあげてオムニチャネルに関する取り組みをブランディングしております。

WEBから来店誘導の効果測定ができるGoogleの来店コンバージョンの実施

そして2015年12月21日にGoogleが公表した発表によると、セブン&アイはGoogleの新サービス「来店コンバージョン」を実施することになりました。これはセブン&アイのオムニチャネル施策の効果の可視化を行うものです。従来はWEBから実店舗への誘導促進の効果測定は来店アンケートに頼るのみでした。これだと正確なデータもとる事ができませんし、サンプルデータも不足しがちです。

しかし、「来店コンバージョン」はスマートフォンのロケーション履歴をONにしているユーザーのサンプルデータから集計し、実際にWEBでの集客がどの程度、実店舗への誘導に貢献したかを計測できる仕組みです。オムニチャネルで困難だった実店舗への誘導の効果測定ができれば、業界のベンチマークになる取り組みなることは間違えありません。

今後もセブン&アイからこういった先進的なオムニチャネルの取り組みが行なわれていく事でしょう。

3社目:資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組み

資生堂のオムニチャネルマーケティングの取り組みは、美と健康に関する企業と専門家によるコラボレーションサイト「Beauty&Co.」、総合美容サービス「watashi+」、百貨店などのリアル店舗で構成されています。

Beauty&Co.は、美に関する様々な情報を発信しています。運営は資生堂がしていますが、資生堂色を全面にだしているわけではなく、美を提案することで美への意識を高めることをしています。このことで、ユーザーエクスペリエンスを提案し、化粧品を売るのではなく、市場拡大を目的にしていると考えられます。

watashi+は、資生堂を全面にだし、オンラインショップとO2Oを目的としています。インターネット上でセルフチェックができ、最後にはお化粧方法の提案とおすすめの商品の購入ができます。もう少し本格的に検討したいと思えば、ビューティーコンサルタントに相談できるようになっています。

それ以外にも、優秀なビューティーコンサルタントを紹介し、店舗でコンサルティングを受けられるようにしている。Beauty&Co.で、顧客エクスペリエンスを高め、watashi+で資生堂の商品をECによる販売と、店舗への集客を促しています。

Salesforce Marketing Cloudを導入し、LINEとメールからの顧客行動も可視化

2015年7月2日にセールスフォース・ドットコムは資生堂にSalesforce Marketing Cloudの導入すると発表した。資生堂が保有する日本国内のWEBのリードは、ワタシプラスのEメールの対象会員が200万人以上、LINE公式アカウントの友だち数は1600万人を超える。

これらの莫大な会員データをSalesforce Marketing Cloudに繋ぎ込むことで、顧客一人ひとりの行動に即したタイミングで、情報を配信する事で顧客との信頼関係を強化し、美への発見から購買、リピートまでシームレスな流れを仕組み化しているのです。

4社目:ツタヤのオムニチャネルマーケティングの取り組み

二子玉川に蔦谷家電が開店しました。広い店内で、ヤマダ電機や、ヨドバシカメラ等とは、まったく違った陳列で、ライフスタイル提案型のショップとなっています。楽しい生活空間を提案することで、消費者の購買意欲を高めることが出来ています。

しかしながら、家電はショールーミングの対象になりやすい商品であるため、最終的に蔦谷家電で購入するかは疑問が残る。また、ツタヤのEC事業はTSUTAYA.comに集約していますが、蔦谷家電との連携がされているようには見えません。

二子玉川は賃料も高いことから、ECでも販売することでオムニチャネルマーケティングとしての役割も担っているかと思えば、家電を販売していないこともありO2Oらしさもなく疑問があります。

さて、なぜオムニチャネルマーケティングで紹介しているかといえば、蔦谷家電はオムニチャネルマーケティングに重要な顧客エクスペリエンスを実践している店舗だからです。

二子玉川の富裕層や、特定分野にこだわりのある消費者を狙い、価格に関係なくライフスタイルに合うと感じたら購入する顧客層をターゲットとしていると考えられますが、特に特定分野にこだわりのある消費者への訴求としては、とても効果的です。

コーヒーにこだわりがある消費者には、エスプレッソメーカーがあり、その周りにはコーヒーをより楽しむための補完商品が演出されている。このことにより、コーヒーを楽しく空間を想像させ、体験したいと思わせることをしている。

オムニチャネルマーケティングには、販売するだけではなく、このような顧客エクスペリエンスを訴求することが求められており、リアル店舗だけではあるが蔦谷家電から学ぶものがあります。

タブレットPOSの導入を始めた蔦谷家電

2016年1月8日に蔦谷家電はユビレジ社のiPadを使ったPOSシステムの採用をしたという発表がありました。まずはイベントスペース専用の導入のようです。

イベント会場用での導入という事は、まずはタブレットPOSのテスト的導入要素と思われます。タブレットPOSであれば「オンラインでの在庫確認」、「店舗にない商品のオンライン注文」、「他店舗の在庫確認」など顧客本位な接客が可能であり、少しずつではありますが、確実にオムニチャネルにむけて動きだしております。

オムニチャネルマーケティングの3つのポイント

オムニチャネルはデジタル化の仕組みだけではありません。全ての顧客接点で顧客エクスペリエンスを提供するオムニチャネルマーケティングを実施するには、3つのポイントに注意しなければなりません。

1.オムニチャネルマーケティングは企画ではない

顧客視点は、いまに始まったことではなく昔からのマーケティングの考え方です。どうしても、マーケティングという言葉が、流行の施策に対して使われる傾向にあるため、話題性や企画と勘違いされている感があります。話題性や企画では短期的な売上のためであり、ブランディングにもなりません。

オムニチャネルを推進するには、顧客層、経路を再定義し、最適なユーザーエクスペリエンスを提供できるようにカスタマージャーニーマップ等を使い、戦略を考えなければなりません。

2. 全ての顧客接点が、全ての役割を担っている

A店舗に来店した顧客が、X商品に興味を持ち、比較サイトでX商品について情報を得て、B店舗で購入した場合、A店舗ではX商品に興味を持っていただくことが役割となります。

B店舗では意思決定の後押しをします。A、Bともに同じ店舗でありながら、顧客の購買プロセスのフェーズによって役割が違います。もし、同じ接客をしていたら、顧客はX商品の同じ説明を2度聞かされることになるでしょう。

オムニチャネルは、全ての顧客接点を通じて、顧客エクスペリエンスを提供することで、購買プロセスのフェーズに適した接客をする必要があります。

インターネット広告でも、ECやリアル店舗に誘導することだけではなく、認知、興味を引く役割も担っているのです。リアル店舗、インターネットで、それぞれに得意分野はあるものの、役割分担ではないのです。お互いに顧客というバトンを渡していくことも期待されているのです。

3. オムニチャネルマーケティングは全社戦略

全社員が全ての顧客接点で適切な接客ができるように理解していなければなりません。しかし、殆どが個別施策の乱立となっているのが現状です。

どうしても、売上目標を達成するために、広告やキャンペーン等で、担当範囲の視点で個別対策をしているからです。でも、これではオムニチャネルではなく、シングルチャネルになってしまっています。オムニチャネルでは、目先の売上だけではなく、顧客エクスペリエンスを提供しブランド価値を高めることに意味があります。

そのためには、顧客に最適な体験を提供するために、オムニチャネルマーケティングの方向性を全社に示し、全社戦略としなければなりません。

まとめ

IOT(Internet of Things)にあるように、あらゆるものがインターネットに接続する時代へと進歩していきます。

このことは、顧客との接点は無限に広がることを意味しています。オムニチャネルマーケティングは、いままで以上に、複雑で重要な意味を持ってきます。そのための、オムニチャネル戦略、体制、仕組みつくりへの投資は必要不可欠です。

もし、いまのマーケティングがオムニチャネルになっていないと不安に感じたら、見直す良い機会かもしれません。

オムニチャネル事例紹介:オムニチャネルもebisumartで短期導入:藤巻百貨店様



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ABOUTこの記事をかいた人

井幡 貴司

forUSERS 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、マーケティング支援や多数セミナーでの講演を行う。