EC事業者が「ソーシャルログイン」を検討するときに読むまとめ!


ECサイトの離脱率を改善するために、ソーシャルログインの導入を検討している事業者も多いのではないでしょうか?

ソーシャルログインとは、LINEやYahoo! JAPAN、Google、Facebook、Twitterなどのサービスのアカウントを使って、ECサイトやWEBサイト、アプリなどのサービスにログインすることです。

ソーシャルログインを導入することでECサイトの離脱率を改善するだけではなく、リピート率の改善にも効果が期待できます。詳細は後述しますが、特にLINEとYahoo! JAPANは利用者数が多いので、ECサイトの離脱率改善に一定の効果が見込めるはずです。

本日はインターファクトリーでマーケティングを担当している筆者が、ソーシャルログインについて、データを参照しながら詳しく解説いたします。

ECサイトの離脱理由1位は「アカウントの登録が面倒」

まずは以下のグラフをご覧ください。2017年9月の少し古いデータではありますが、初めて利用するECサイトからの離脱理由1位は「アカウントの登録が面倒だったため」という調査結果が出ております。

◆初めて利用するECサイトで、購入をあきらめた、もしくは条件は悪くなるが普段使いのサイトで購入した理由はなんですか?(複数回答)

出典:ECサイトの離脱理由は「アカウント情報の入力が面倒」「普段使うポイントを貯めたい」ネットショップ担当者フォーラム

ECサイトを初めて訪れたユーザーが、気に入った商品を見つけることができたとしても、個人情報の入力が面倒になり離脱するケースが非常に多いことが分かります。つまり、ECサイトに訪れる新規ユーザーの離脱率を改善するためには、この調査結果を念頭に置いて対策する必要があります。

ECサイトにソーシャルログインを導入することで、アカウント登録が不要になるので、離脱理由1位への対策につながります。具体的にソーシャルログインに対応している主なサービスは、以下の通りです。

◆ソーシャルログインに対応している主なサービス

・LINE
・Yahoo! JAPAN
・Google
・Facebook
・Twitter

どれも有名なサービスですが、ECサイト事業者はどれを導入すれば良いのでしょうか。それを検討するために、ソーシャルログインの利用率のデータを見てみましょう。

ソーシャルログインの利用率1位は「LINE」

下記は、株式会社フィードフォースが2019年2月~2020年1月の期間で実施した調査内容です(とても参考になる調査内容ですので、そちらも是非一読してください)。

◆ソーシャルログインのアカウント別利用割合

1位:LINE 64.5%
2位:Yahoo! JAPAN 17.6%
3位:Facebook 6.5%
4位:Google 6.3%
5位:Twitter 5.1%

出典:「ソーシャルログイン利用状況調査2020」(株式会社フィードフォース

このデータを見ると、ソーシャルログインにおいてはLINEが64.5%と最も利用されていることが分かります。その背景は、ソーシャルログインを利用するデバイスにあります。

ソーシャルログインを利用するデバイスは「スマートフォン」

引き続き株式会社フィードフォースのデータを見ていきましょう。ソーシャルログインで利用するデバイスは、スマートフォンが圧倒的に多いことが分かります。

◆ソーシャルログインのデバイス別利用割合

1位:スマートフォン 91.5%
2位:PC 6.9%
3位:タブレット 1.6%

ソーシャルログインは9割以上がスマートフォンからの利用であるため、スマートフォンのアプリとして幅広い層のユーザーに使われているLINEは相性が良いと言えます。

ちなみに下記記事によるとLINEの月間アクティブユーザー数は国内で8,400万人以上いるとされており、日本国内では圧倒的なユーザー数です。

参考記事:「LINEの利用者・普及率は? 他SNSユーザー数や人口と比べた」(Web担当者Forum

ソーシャルログインを導入して、

✓新規会員登録を促す
✓離脱率を下げる

といったことを、ECサイトで実現したいと考えたとき、LINEログインの導入は欠かせないと言えるでしょう。そして、利用割合が2番目に多い、Yahoo! JAPAN(17.6%)も無視はできません。

PCでは、Yahoo! JAPANからのログインが44%(2019年)と最も多いのです。

◆PCからのアカウント別利用割合(2018年~2019年)

ここまでの結果を踏まえると、ソーシャルログインを導入する場合は、まずLINEとYahoo! JAPANの導入を検討するのが良いでしょう。

ECサイトにソーシャルログインを導入する最大のメリットは「初回購入の成功率」を高められること

ECサイトで成果を上げるために、最も大切なことは何でしょうか?筆者は「初回購入を成功させる」ことだと思います。ソーシャルログインを使うことで会員登録の手間が減るため、初回購入の成功率が高くなると考えられます。

初回購入の成功率の重要性を具体例を交えて解説します。以下の初回購入に失敗したユーザーの例をご覧ください。

◆初回購入に失敗したユーザーの例

ECサイトで商品を購入しようとしたところ、会員登録が必要だった。しかしパスワードの設定に複雑なルールがあったため、登録がうまくできなかった。
そのECサイトからは離脱して、他のECサイトで買い物をした。それ以来このECサイトには訪れていない。

この例を見て「たまたまユーザーのリテラシーが低かっただけ」という感想で終わってしまっては、EC担当者としての意識が足りないと言わざるを得ません。なぜなら、もしこのユーザーが初回購入だけではなく、その後リピーターになっていた場合、多くの販売機会を失っていた可能性もあるからです。

そして、同じようなユーザーを毎月少しずつでも減らすことができれば、年間の売上に変化が出るとは考えられないでしょうか?つまり、初回購入の成功率を高めることは、ECサイトの年間の売上にとても大きなインパクトを与える可能性があるのです。

初回購入の成功率が売上に関係している、というデータがあるわけではありませんが、EC担当者であれば初回購入の重要性を意識してほしいと筆者は思います。

ECサイトの売上において、最も重要なのは「リピート率だ」という考え方もありますが、リピート率とは2回目以降の買い物を指すので、まずはその前提である初回購入の成功は非常に大切なのです。

ECサイトのリピート率を高める!

ECサイトの売上を安定させるには、リピート率に注目します。

日本国内のECサイトにおけるリピート率の平均データは公表されていませんが、以下のネットショップ担当者フォーラムの記事によると、北米500社のリピート率の平均は37%(1位はAmazonの88%)となっています。

参考記事:「リピート客約9割のアマゾンに勝つロイヤリティ施策には何が必要? 米国ECの今に学ぶ」(ネットショップ担当者フォーラム

初回購入のためには、広告予算を投じて自社のECサイトに集客し、商品を購入してもらうことになりますが、すでに会員登録している既存会員に再度商品を購入させるのは、新規会員よりも集客コストがかからないという大きなメリットがあります。

ソーシャルログインはリピート率を高める施策の一つとしても、有効なはずです。再びデータを見ながら解説します。

ソーシャルログインを使ったスマホからの平均ログイン回数は「LINEログインで2か月間に4回」

以下の株式会社フィードフォースによる調査結果をご覧ください。

◆一人当たりの平均ログイン回数

ECサイトにおいてソーシャルログインがどれくらい使われたのかを示すデータですが、スマートフォンの場合、LINEでは2か月間に4回ログインされており、リピート率を高めるために、LINEログインの導入は有効である可能性が高いことがわかります。

また、LINEほどではないですが、Yahoo! JAPAN、Google、Facebook、Twitterも平均ログイン回数が1.5回を超えており、LINEとともに設置すればリピート率の改善が期待できます。

ソーシャルログインで取得できる会員情報は、それぞれ異なる

ソーシャルログインで、ECサイト運営に必要な全ての会員情報が取得できるわけではありません。各サービス(LINE、Yahoo! JAPAN等)ごとに提供している情報が異なります。また、取得する情報によっては、個別に審査が必要になる場合もあります。

ソーシャルログインを導入する際は、事前に取得できる会員情報を確認し、足りない情報をどのようにユーザーに入力してもらうのか、検討する必要があります。取得できる会員情報に関しては、下記の記事によくまとめられているので、あわせてご覧ください。

参考記事:「ソーシャルログインとは?仕組みやメリット・デメリット、導入・実装方法から事例まで解説。」(ソーシャルPLUS

基本的に各SNSに登録している以上の会員情報は取得できませんので、その点も念頭に置いておきましょう。

ECサイトに自社開発でソーシャルログインを導入するか?ASP(ソーシャルログイン)を利用するか?

もし、自社に技術者がいれば、自社開発でソーシャルログインを導入することも可能です。なぜなら以下のLINEの例のように、サービス連携のためのAPIやマニュアルが提供されていれば自社開発でECサイトに導入することが可能だからです。

ウェブアプリにLINEログインを組み込む」(LINE Developers

ただし、仕様変更などがあると、その度に自社で対応しなければなりません。また、ソーシャルログインに不具合が出ると、ECサイトの売上にも影響があるでしょう。

ですから、ソーシャルログインを利用する場合、自社開発よりもASPサービスを利用する方が、社内の負担が少なくなります。ただし、ソーシャルログインの費用感は安くはないので、利用できる事業者は中・大規模以上のEC事業者に限られます。

ソーシャルログインのASPサービス導入費用

ソーシャルログインを自社開発する場合、月額費用などはかかりませんが、ASPサービスを利用する場合の費用感はおおむね以下の通りです。

◆ソーシャルログインの費用感

初期費用:5万円~
月額費用:数万円~

月額費用は固定の場合もあれば、基本料金にプラスして、ログインするユーザー数によって、費用がプラスされる場合もあります。

月額費用だけを見ると、そこまで高いとは感じないかもしれませんが、毎月のコストになるので、まずは数か月の間実施してみて新規会員数が増えたり、リピート率が高まるなど効果があれば、継続的な利用を検討してみるべきでしょう。

ソーシャルログインとID決済のどちらを導入すべきか?

※ID決済もソーシャルログインの一部ではありますが、当記事では、それらを明確に分けて解説します。

ソーシャルログインを検討している方であれば、おそらくAmazon Payや楽天ペイなどのID決済の導入も検討しているのではないしょうか?

◆主なID決済

Amazon Pay
楽天ペイ
PayPay
LINE Pay

ソーシャルログインとID決済の大きな違いは、ソーシャルログインは「ログイン機能」を提供しているのに対して、ID決済は「決済機能」を提供している点です。

ID決済の場合はAmazon Pay以外は会員情報が取得できないので、ID決済の方がより「新規顧客向け」という特徴があります。

例えば、自社ECサイトのターゲット属性が主婦層である場合、楽天ポイントを利用している場合が多いため、自社ECサイトを楽天ペイに対応させることで、普段利用している楽天のアカウントで決済からポイント付与までできるので、自社ECサイトで購入してもらいやすくなります。

ソーシャルログインとID決済の両方を実装しているECサイト事業者も多いのですが、多くのEC事業者では、そのどちらかの導入を検討しているケースが多いように筆者は感じます。なお、ID決済については、下記の記事にまとめてあるので、こちらの記事もあわせてご覧ください。

関連記事:2つのID決済「AmazonPay・楽天ペイ」導入前に押さえるべきポイントとは?

ソーシャルログインを導入しただけでは意味がない!CVまでの導線でソーシャルログインをアピールしよう!

ソーシャルログインを導入しただけで、急に離脱率が改善するわけではありません。もし、ソーシャルログインを導入したECサイトにユーザーが訪れても「LINE」や「Yahoo! JAPAN」のアカウントでログインできることに気が付かなければ、意味がありません。

よくある失敗例として以下のような例が考えられます。

「トップページからソーシャルログインを訴求すると、デザイン的に見栄えが良くないから、やめておこう!」

「ソーシャルログインを導入したが、できれば通常通りに会員登録してほしいから、訴求は弱めでいい!」

このような考え方では、ユーザーはソーシャルログインの存在に気が付かず、離脱率も改善しません。

中途半端な施策からは成果は生まれません。初めて導入する場合は、まず積極的にソーシャルログインを訴求することから始めて、もし弊害が出てきたら、訴求の仕方を調整していくべきでしょう。

ソーシャルログイン提供側の情報漏えい事件

ここまでの解説で、ソーシャルログインがEC事業者にとっては、離脱率を下げ、リピーター率を高めるのに非常に有効なものであることはご理解いただけたと思います。しかし、リスクも念頭に入れておかなくてはなりません。例えば、Facebookで起きた大規模情報漏えい事件です。

参考記事:「Facebookユーザー5億人以上の個人情報が流出、ポイントや対策は」(The HEADLINE

記事によると、2019年に5億3,300万人の個人情報が漏えいしたとの指摘です。現在は修正されていますが、

・電話番号
・Facebook ID
・氏名
・場所
・生年月日
・経歴
・メールアドレス

といった情報が漏えいし、日本ユーザー42万人の情報も含まれているとのことです。ソーシャルログインを提供するサービス側の問題ではあるのですが、ソーシャルログインを実装するEC事業者も、この漏えいした情報をもとに、不正ログインされる可能性を考えると無関係とは言えません。

このようなリスクは、ソーシャルログインに限らずインターネット社会では完全には防ぎようがないですが、リスクがあることを認識した上で、事前に対応を協議しておくことが、危機管理において非常に重要です。

なぜなら、例えサービス側の責任で情報漏えいがあった場合でも「それはサービス側の責任で我が社に責任は一切ありません」というような態度を取ると、世間から一斉にバッシングを受けて、会社や事業の信用を落としてしまう事態になりかねないからです。

ソーシャルログインのまとめ

ECサイト担当者であれば、離脱率の改善のためまずはソーシャルログインの導入を検討してみるべきでしょう。

その際は、競合サイトや、有名ECサイトで、すでにソーシャルログインを導入しているECサイトを探してみるのがおすすめです。自分のアカウントで実際にソーシャルログインを体験して、商品購入などをしてみてください。

実際にソーシャルログインを体験してみることで、ECサイトを訪れるユーザーの気持ちが理解できるので、利便性や、反対に不便な点が見えてくるはずです。それらを踏まえた上で、自社ECサイトへのソーシャルログイン導入を検討してみましょう。


セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。