プロが語る!ECサイトとCMSを連携するための手引き


新たにCMS(Contents Management System:コンテンツマネジメントシステム)を導入したいときに、検討あるいは利用中のECプラットフォームのCMS機能を使うべきか、それとも外部のCMS専用ツールを連携させるべきか、迷ってしまうこともあるでしょう。

CMSは、Webサイトの構築と運用・管理を行うためのシステムで、CMS機能を使うと、専門的なWebの知識がなくても、Webサイトを構築したり、Webページを作成・更新したりすることができます。

例えば、「ECサイト内に新しくブログを開設し、コンテンツマーケティングを行いたい」という場合は、「WordPress」などの外部のCMS専用ツールの利用が適しています

なぜなら、ECプラットフォームの標準機能のCMS機能は、最小限の基本機能だけの場合が多いので、オリジナルのWebページを作成したい場合やコンテンツマーケティングを行いたい場合などには、機能が足りなくなってしまうからです。

この記事では、株式会社インターファクトリーでWebマーケティングを担当している筆者が、主なCMSツールと、ECプラットフォームとCMSをどのように連携させるべきかについて、詳しく解説します。

ECプラットフォームのCMS機能と外部のCMSツールの特徴を比較

ECプラットフォームには、無料や低料金で利用できるASPから数百万円以上もするような専用パッケージなど、さまざまな製品/サービスがありますが、いずれの製品/サービスでも、CMSの基本機能が標準提供されている場合がほとんどです。

ECプラットフォームのCMS機能と外部のCMSツールとでは、どのような違いがあるのでしょうか。以下はそれぞれの特徴をまとめた表です。

◆ECプラットフォームのCMS機能と外部のCMSツールの違い

ECプラットフォームのCMS機能 外部のCMSツール
導入/運用コスト 無料
(オプション機能の場合はオプション費用が追加で発生)
月額:数千円~
(サーバが必要な場合はサーバ費用が追加で発生)
機能性 最小限の基本機能 多機能
自由度 低い 高い
拡張性 なし あり
(オプション機能やプラグインが豊富に提供されている)
セキュリティ ECプラットフォームのセキュリティレベルによる 利用する製品/サービスによって異なるが、WordPressなどの無償ツールはセキュリティリスクが高い
備考 ECサイトを主に基本機能で運用しており、今後もコンテンツマーケティングを行う予定がない場合に適している ECサイトのメディア化やオリジナルページの作成、コンテンツマーケティングなどを行いたい場合にはCMSに特化したツールが不可欠

出典:筆者が独自に作成

以下のようなケースでは、外部のCMSツールが必要になります。

◆外部のCMSツールが必要となるケース

① コンテンツマーケティングを行いたい
② LP(ランディングページ)を作成・リリースしたい
③ オリジナルページを作成・リリースしたい

もし、ECサイトでオリジナルページやコンテンツマーケティングなどを行う予定がないという場合は、ECプラットフォームで標準提供されるCMS機能だけでも、十分にコンテンツ管理をすることができます。ただし、ECプラットフォームによっては、以下の運用に対応できない(機能が提供されていない)場合もあるので、注意が必要です。

◆ECプラットフォームのCMS機能では行えない可能性がある操作(例)

・Webページの本文内に画像を挿入する
・HTML/CSSで自由に作成・編集する
・見出しなどの配置やデザインを自由に変更する
・SEO対策でメタタグを設定する
・カテゴリを自由に設定する
・任意のURLで運用する

また、ECプラットフォームのCMS機能は、サービスの機能一覧などには、「CMS」ではなく、より詳細な機能名称が掲載されている場合もあります

◆ECプラットフォームのCMS関連の機能名(例)

・フリーページ機能
・ニュース機能
・ブログ機能

Webコンテンツの作成・編集機能はCMSの基本機能ですから、検討あるいは利用中のECプラットフォームの機能一覧で、名前に「CMS」が付く機能が見つからない場合でも、上記のような機能があれば大丈夫です。ただし、機能名に関係なく、ECプラットフォームで標準提供されているCMS機能は、簡易機能であることが多いので、ECサイトを自由にカスタマイズしたいという場合には適しません

検討あるいは利用中のECプラットフォームのCMS機能で、自分がやりたいことができるのかよく分からないという場合には、サービスベンダーに問い合わせて確認するようにしましょう。

コンテンツマーケティングには「WordPress」がおすすめ

「WordPress」は、世界で最も利用されているCMSのオープンソースソフトウェア(Open Source Software:OSS)で、誰でも自由に、無料で利用できます

WordPressでは、有償/無償のプラグインがたくさん公開されており、SEO対策やコンテンツマーケティングなどの追加機能やカスタマイズも手軽に実装することができる非常に便利なツールです。

しかし、自由にカスタマイズできる半面、OSSなのでの脆弱性が高く、セキュリティリスクが大きいというデメリットもあります。以下は、WordPressの主なメリットとデメリットをまとめた表です。

◆WordPressの主なメリットとデメリット

主なメリット 主なデメリット
・世界中でプラグインが開発されている

・プラグインをダウンロードして必要な機能を実装できる

・導入コストが不要

・利用者が多い

・公開されているSEOやコンテンツマーケティングの成功事例が多い

・OSSなので、利用者自身でセキュリティ対策を実施する必要がある(サイバー攻撃の標的になりやすく、高いセキュリティが求められる金融関連のシステムではWordPressが採用されることは少ない)

・カスタマイズ部分の不具合は、利用者自身で解決する必要がある

出典:筆者が独自に作成

WordPressを利用する場合には、必ずセキュリティ対策を実施しましょう。次の5つの対策は基本的なものですが、簡単にハッキングされることを防ぐことができます。

◆WordPressのセキュリティ対策の基本

① 高セキュリティのサーバを利用する
② WordPressの本体とプラグインを常に最新バージョンで運用する
③ 信頼できるプラグインやテーマを使用する
④ プラグインやテーマをインストールしすぎない
⑤ 複雑なパスワードを設定し、二段階認証を有効にする

上記の他にも、費用はかかりますがWAF(Web Application Firewall)などのセキュリティ対策ツールを導入するなど、さまざまな対策方法が考えられますから、WordPressを導入する際は、関連するシステムやネットワークのセキュリティについてもあわせて確認・検討するとよいでしょう。

また、WordPressの導入を検討している場合には、サービスベンダーに問い合わせて、連携機能の有無や連携方法について確認するようにしましょう。

ランディングページ(LP)やスペシャルコンテンツをCMSで運用したい

自社で、キャンペーンや新製品の発売に合わせてランディングページ(LP)やスペシャルコンテンツを作成する場合は、以下を目安に外部のCMSツールの導入を検討するとよいでしょう。

外部のCMSツールが必要ない場合

ECプラットフォームのCMS機能でHTML/CSSの編集が可能で、かつ、コンテンツの作成・リリースの頻度が低い場合

◆外部のCMSツールが必要な場合

・ECプラットフォームのCMS機能でHTML/CSSの編集ができない場合
・コンテンツの作成・リリースの頻度が高い場合
・CMSを使わずにコンテンツを作成するスキルがない場合

ECプラットフォームにHTML/CSSの編集機能がある場合には、新しいWebコンテンツの作成・リリースが可能ですが、そうではない場合や、自社にHTML/CSSの知識がない場合、あるいはコンテンツの作成・リリースの頻度が高い場合には、外部のCMSツールが不可欠です。

おすすめのCMSツール 3選

現在は、さまざまなCMSツールが提供されていますが、それらの中から筆者が特におすすめするのは以下の3つのツールです。

筆者おすすめのCMSツール

① WordPress
② Movable Type
③ はてなブログMedia

②のMovable TypeはWordPressに次いで有名なCMSで、WordPressの利用を避けたいという企業の選択肢として上がることが多いツールです。

③のはてなブログMediaは被リンクを生みやすい仕組みがあり、SEOへの効果が期待できるCMSですが、月額料金が高い点がデメリットです。

SEOの効果にフォーカスするなら、ECサイトとCMSは同じドメインで運用しよう!

ECサイトと外部のCMSツールを、サブドメインや別ドメインで運用する方法もありますが、筆者は可能であれば同じドメインで運用することをおすすめします。なぜなら、別のドメインで運用すると、SEOの効果が出るのが遅くなる傾向があるからです。

SEOでは、Googleなどの検索エンジンが、WebサイトやWebページを巡回した結果、どのような評価をするかが重要になります。検索エンジンの評価を受けるためには、まずは検索エンジンのクローラーにWebサイトやWebページを認識してもらう必要があります運営歴の長いECサイトや多くのWebコンテンツを持つ大規模なECサイトなどは、検索エンジンのクローラーの巡回実績が当然多くなるため、検索エンジンの評価が上がる可能性も高くなります。そのため、複数のドメインで複数のコンテンツを運用するよりも、1つのドメインで統合運用するほうが、ドメインすなわちWebサイトの評価を高める機会が増えるため、SEOの効果につながる可能性があります

もちろん、別ドメインやサブドメインでもSEOが成功しないというわけではありません。ただ、その場合は筆者の経験上、SEOの成果が出るまで1~2年程度は待つ必要があると考えます。

筆者がコンサルティングを担当している大手企業では、オウンドメディアサイトを新しいドメインでリリースしたところ、Google検索でSEOの効果が出るまでに、約1年かかりました。

新たにWebサイトを構築する場合には、ドメイン運用についても念頭に置いておくようにしましょう。

おすすめのECプラットフォーム

外部のCMSツールを導入する場合には、カスタマイズが可能なクラウドECプラットフォームの「ebisumart(エビスマート)」がおすすめです。ebisumartでは、CMSをはじめとするさまざまな外部ツールとの連携や個別カスタマイズが可能です。

詳しくは下記の公式ホームページをご覧いただき、ぜひお気軽にお問い合わせください。

公式ホームページ:「ebisumart(エビスマート)」


セミナー情報

ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表取締役。 株式会社インターファクトリーのWEBマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作には「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」などあり、執筆活動にも力を入れている。